鹿島建設(1812)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、鹿島建設を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「土木の利益率を2倍に」です。
有報の数字(第129期)
- 売上高
- 3兆673億円
- 純利益
- 1,773億円
- ROE
- 13.3%
- 従業員数(連結)
- 21,170人
- 従業員数(単体)
- 8,959人
- 平均年間給与(単体)
- 1,245万円
- 平均年齢
- 41.2歳
- 平均勤続年数
- 15.7年
出典:鹿島建設の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
鹿島建設を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、鹿島建設に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは鹿島建設の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、鹿島建設株式会社 有価証券報告書 第129期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
鹿島建設は、受注を増やしながら利益率も上げ、中期計画の目標を上回る見通しを自ら開示している会社だ。
知っておきたいことは3つある。
・受注と利益が同時に伸びた。第129期(2026年3月期)は単体の受注が2割以上増え、営業利益は約6割増えた。
・土木事業の利益率が、1年でほぼ2倍になった。一方、海外は人員の割に利益が小さい。
・会社は翌期を減収減益と予想しながら、中期計画の目標は上回ると書いている。この点が面接で聞ける論点になる。
この記事では、鹿島が何に賭け、どこで稼ぎ、利益の質はどうかを、面接で語れる形で確かめる。
第1章 鹿島建設は何に賭けているのか
1-1. 3つの賭けと、自ら開示した計画の上振れ
土台は「鹿島グループ中期経営計画(2024〜2026)」である。中期経営計画とは、会社が3年間の目標を示した計画だ。最終年度は2027年3月期になる。
賭けは3つに整理できる。国内建設の強化、不動産開発と海外の強化、技術による新しい価値づくりだ。
特徴は、計画の上振れを会社自身が書いている点だ。3年累計の純利益は、策定時の3,500億円程度から4,700億円以上になる見通しという。
超えた分は、株主還元と協力会社への支払い早期化に回すとある。担い手不足が課題の建設業では、これも投資と読める。
志望動機で「計画を超えた利益の使い道まで開示している点に惹かれた」と根拠にできる。
1-2. 投資枠を項目ごとに動かしている
中計の投資枠は、策定時から見直されている。デジタルと業務用不動産への設備投資は枠を増やし、国内開発事業は400億円減らした。計画を機械的に守っているわけではない。
一方、M&Aや新規事業に充てる戦略的投資枠は、まだ使い切っていない。2年間の実績が少なく、残りは約690億円ある。
逆質問で「残る約690億円は、どの領域に向かう想定か」と聞ける。
1-3. 中計の時間軸と、ROEの読み方
28卒の入社は2028年4月だ。中計の最終年度は2027年3月期で、純利益1,300億円以上が目標になる。その先の2031年3月期には、1,500億円以上という長期目標がある。
会社は2027年3月期を減収減益と見込む。それでも純利益は1,700億円を予想する。当期の利益が計画をはるかに超えていたためだ。
ROE(自己資本利益率)は、株主のお金でどれだけ稼いだかを示す。第129期は13.3%だった。会社が認識する株主資本コスト(株主が求める最低限の利回り)は8%程度で、これを上回った。
「減収減益でも目標を上回る構造」を自分の言葉で説明でき、逆質問の起点になる。
1-4. 土木が稼ぎ、海外は人員の割に利益が小さい
土木事業の営業利益率は、約8.8%から17.8%へほぼ2倍になった。有報は、売上総利益率の大幅な向上を主因に挙げている。
従業員の数と利益を並べると、差がはっきりする。土木は従業員の約12%で、報告セグメント利益の約32%を稼ぐ。
一方、海外関係会社は従業員の約31%を抱える。それでも利益は約11%にとどまる。人員と利益が釣り合っていない。
有報は、海外の減収理由を米国での開発物件の売却減と説明している。
課題指摘として「海外の収益性を上げる側で貢献したい」と語れる。
1-5. 働く側の事実
連結従業員は21,170人。単体の平均年齢は41.2歳、平均勤続は15.7年である。平均年間給与は1,245万円で、スーパーゼネコン3社で最も高い。
ただし伸び率は、大林組・大成建設のほうが鹿島より上だった。平均年齢は3社で最も若い。
連結のうち単体は4割ほどで、国内外の関係会社が過半を占める。
志望動機で「関係会社を含む幅広い現場」を語り、関係会社での働き方を逆質問できる。
第2章 総合建設業の収益構造
2-1. 量を取った鹿島、量を絞った大林組
同じ期に、大林組は受注を20.6%減らし、採算の合わない仕事を断った。鹿島は逆に、単体の受注を24.3%増やした。
繰越高(受注済みで未完成の工事の残り)は、売上の約1.8年分ある。
それでも鹿島は利益を伸ばした。土木は受注が約4割増えたのに、利益率が上がった。建築の利益率も上がっている。
どちらが正しいという話ではない。ただ、同じ業界で正反対の戦略が並んだ期だった。
「量と質を両立できた理由」を論点にして、課題指摘や逆質問ができる。
2-2. 開発事業等は小さく高収益、ただし振れる
開発事業等は、不動産開発と設計などを担う。従業員は291人と少ないが、営業利益率は18.26%で全セグメントで最も高い。
ただ第129期は減益だった。前期に大型物件の引渡しがあった反動である。不動産の利益は、売却の時期で振れる。
国内・海外の関係会社の損益にも、同じ売却の影響が出ている。
「不動産売却による利益の振れをどう見ているか」を逆質問にできる。
2-3. 利益の質は、株式売却益に頼らない点にある
税金を引く前の最終的な利益のうち、保有株式の売却益が占める割合を見る。鹿島は6.0%だ。大成建設と大林組は2割前後である。
株は売れば利益が出るが、売れる量には限りがある。鹿島の増益は、ほぼ本業から来ている。
志望動機で「本業で稼ぐ力の強さ」を根拠にできる。
鹿島建設の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(海外関係会社6,599人で利益率2.44%/受注を増やし続けられるか/不動産売却の振れ/2027年3月期は経常利益△14.3%の計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上3兆672億円(+5.3%)はスーパーゼネコンで唯一の3兆円超、営業利益2,407億円(+58.5%)・純利益1,773億円(+40.9%)・ROE 13.3%で5期連続の増収増益、単体受注高は+24.3%・繰越高は+22.2%(大林組は受注△20.6%)、土木事業の利益率は8.83%から17.82%へ2倍・営業利益+114.9%、土木2,582人(12.2%)が利益の32.0%を稼ぎ海外関係会社6,599人(31.2%)は11.1%、投資有価証券売却益が税前利益に占める割合は6.0%(大成22.2%・大林19.6%)、平均年収1,245万4,406円は3社で最高、そして2027年3月期は経常利益△14.3%の計画——鹿島建設の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 総合建設業の構造的課題——海外関係会社6,599人で利益率2.44%/受注を増やし続けられるか/不動産売却の振れ/2027年3月期は経常利益△14.3%の計画
- 第3.5章 面接前に押さえる鹿島建設の最新ニュース10本——受注+24.3%・土木利益率2倍・第1四半期まで
- 第4章 内定者の正体——「ものづくりが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,245万円の読み方と、土木・建築・開発・海外のキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続15.7年、組合員8,030人、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生