カゴメ(2811)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、カゴメを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「最高益からの反落」です。
有報の数字(第82期)
- 売上高
- 2,943億円
- 純利益
- 148億円
- ROE
- 7.9%
- 従業員数(連結)
- 3,253人
- 従業員数(単体)
- 1,737人
- 平均年間給与(単体)
- 904万円
- 平均年齢
- 42.4歳
- 平均勤続年数
- 18.0年
出典:カゴメの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
カゴメは、トマトの原料を自社側に取り込む買収に賭けた結果、最高益の翌年に営業利益が37.5%落ちた会社であり、この構造を語れれば面接で差がつく。
知っておきたいことは3つある。
2024年12月期の営業利益は362億円で、過去最高だった。翌2025年12月期は226億円に下がった。
最高益を押し上げたのは、2024年に買収した米国のトマト加工会社Ingomar社だ。翌年は同じ事業で製品の価格が下がり、反動が出た。
会社は次の手を打っている。2026年から新しい中期経営計画(数年先までの目標を示す計画)が始まり、社長も6年ぶりに代わった。
この記事では、決算短信と有価証券報告書(会社が公式に出す決算と事業の報告書)から、カゴメが何に賭け、どこで業績が揺れ、何を目標にしているかを確かめる。
第1章 カゴメは何に賭けているのか
1-1. 賭けているのは「種子から食卓まで」と500億円のM&A
有価証券報告書には、買収の計画が金額で書かれている。「2028年までに500億円程度のM&Aを含む戦略的な投資を計画しています」という一文だ。M&Aとは、他の会社の買収のことである。
会社が作ろうとしているのは「農から価値を形成するグローバル・バリューチェーン」だ。畑から始まる価値のつながりを、世界に広げるという意味である。
その具体像は「種子から食卓まで」と書かれている。トマトの品種開発から関わり、契約農家に育ててもらい、加工して売る。この一貫した構造が、カゴメの競争力の源泉である。
一貫しているぶん、社内に求められる力の幅は広い。農業に近い側は、天候と作柄で原価が決まる。売る側は、マーケティングの世界だ。
成長は、自力で伸ばす道と、買収で伸ばす道の両方で目指すとされる。直近期は、買収の側が大きく動いた。
28卒が入社する2028年は、この計画の期限の年にあたる。買収の成果が見えるころに入社することになる。
志望動機では、「種子から食卓まで」のどの工程に関わりたいかを自分の言葉で語れる。逆質問では、500億円をどの領域に使う想定かを聞ける。
1-2. 米国のトマト加工会社Ingomarを買った
カゴメの直近期を読む鍵は、2024年1月の買収だ。米国のトマト加工大手Ingomar社を、米国の子会社を通じて連結子会社にした。連結子会社とは、グループの一員として決算に含める会社のことだ。
なぜ買ったのか。トマト加工品の原料は、世界でカリフォルニアが最大の産地である。そこで加工する会社を持てば、原料の調達を自社の中に取り込める。
これは、同業を買い集める動きとは違う。「種子から食卓まで」のうち、原料に近い側を自分の側へ引き寄せる垂直統合の強化だ。
数字への効き方も大きい。この買収が2024年12月期の売上収益(売上高にあたるもの)を押し上げた額は、577億円にのぼった。
海外では、フードサービス市場にも長期の視点で成長投資を進めている。フードサービス市場とは、レストランや給食などの業務用の市場のことだ。家庭用のケチャップやジュースとは、売り方も利益率も違う。
逆質問で「Ingomarの買収は、原料調達を自社に取り込む動きだと理解しています。今後のM&Aも同じ方向ですか」と聞ける。志望動機では、この川上への動きに共感した理由を語れる。
1-3. 最高益から一転、営業利益が37.5%減った
2025年12月期の売上収益は2,943億円で、前の期より少し減った。決算短信の発表日は2026年2月2日だ。
一方、営業利益は226億円で、前期比▲37.5%だった。売上の減り方より、利益の減り方がはるかに大きい。
前年の2024年12月期は、営業利益が362億円で過去最高だった。牽引したのは、Ingomar社の業績の上乗せである。
2025年に入り、主力のトマトペーストの国際相場が下降に転じた。カゴメは、トマト加工品を扱う一次加工・二次加工事業の販売価格を下げざるを得なかった。製造工程の不具合による一時的な損失も重なった。
海外M&Aで最高益を作った翌年に、同じ事業の価格下落で反動減益になった。これが2025年の構造である。ニュースの見出しだけでは、ここまで読み取れない。
課題指摘では、「業績が悪化した会社」で済ませず、買収の反動と相場の下落という原因まで説明できる。逆質問では、相場に左右されにくい収益の柱をどう育てるかを聞ける。
1-4. 国内は値上げで踏ん張り、海外は相場に揺れた
事業別に見ると、2025年は明暗が分かれた。
国内加工食品事業は、2025年2月に実施した家庭用・業務用飲料の価格改定が効いた。増収増益を確保している。
国際事業の売上は1,298億円で、前期比▲13.0%だった。トマトの一次加工・二次加工は、販売数量こそ増えた。だが価格が下がって利益率が悪化し、減益となった。
国内は値上げで踏ん張り、海外はコモディティの値動きに振り回された。コモディティとは、相場で価格が決まる商品のことだ。
課題指摘では、国際事業が価格の下落に弱い点を、自分の言葉で指摘できる。逆質問では、国内の価格改定の効果と、海外の価格下落をどう補うかを聞ける。
1-5. 新中計「Kagome Group PLAN 2028」と新社長
2025年12月期決算と同時に、2026〜2028年の中期経営計画「Kagome Group PLAN 2028」が発表された。基本戦略は「収益獲得力の向上と、成長・新規価値領域への資源投下による競争力強化」だ。
数字の目標は、2028年12月期に売上収益3,250億円、事業利益270億円である。事業利益とは、一時的な損益を除いた、本業の稼ぐ力を示す指標だ。
ROEは9%以上を掲げる。ROEとは、株主から預かったお金で、どれだけ利益を出せたかの割合である。直近は7.9%で、会社自身が決めた目標との差がある。
投資では、約500億円規模の予算枠を確保し、M&Aを含む成長の機会を探る。株主には、減配しない累進配当を導入する方針だ。
体制も変わった。2026年1月1日付で、国際畑を歩んできた奥谷晴信氏が社長に就いた。6年間社長を務めた山口聡氏は、会長になった。
奥谷氏は、Ingomar社の買収を主導した人物だ。「海外成長が使命」と自ら語っている。
2026年12月期の会社予想では、売上収益と営業利益はともに増える見込みだ。一方、最終的な利益は134億円で、前期比▲9.5%の減益予想となっている。
志望動機では、2028年の目標のどこに自分が貢献したいかを語れる。逆質問では、ROE9%以上と現状の差をどう埋めるか、最終利益が減益予想になる理由を聞ける。
第2章 業界比較——食品・飲料大手3社との違い
2-1. 規模は中堅、営業利益率は同業の中で健闘
比較の相手は、キユーピー、伊藤園、味の素だ。決算期は会社ごとに異なるため、数字は直近の通期を並べたものである。
売上で見ると、カゴメは2,943億円だ。味の素やキユーピーの数分の一にとどまる中堅である。
営業利益率とは、売上のうち本業の利益が占める割合だ。カゴメの7.7%は、キユーピーの6.7%を上回る。伊藤園も上回っている。
ただし、素材などのBtoB(企業向け)の高付加価値領域まで持つ味の素には及ばない。規模は小さくても、収益性では同業の中で健闘している。
志望動機では、規模ではなく収益性で見たカゴメの強みを語れる。逆質問では、味の素との差がどこから生まれると考えているかを聞ける。
2-2. 専業特化と総合展開——強みの裏返しにあるリスク
キユーピーは、調味料からサラダ、介護食まで守備範囲を広げている。味の素は、うま味調味料からヘルスケア、電子材料まで大きく多角化している。
これに対し、カゴメは一貫して「トマト・野菜」という軸を崩していない。国内では家庭用・業務用の飲料と食品のブランドで、高いシェアを持つ。
海外では、Ingomar社の連結子会社化に象徴されるように、業務用トマト加工という川上の領域にも踏み込んでいる。
川下のブランド力と、川上の加工能力を同時に持つ会社、それがカゴメの一貫した戦略だ。その裏返しとして、トマトという単一原料の国際相場の影響を強く受けやすい。
課題指摘では、専業の強みと、相場に揺れるリスクを一組で説明できる。逆質問では、他社のような多角化を考えるのか、軸を保つのかを聞ける。
2-3. 働く側の数字——平均年収
カゴメの平均年収は904万円だ。
キユーピーの688万円より高く、味の素の1,037万円より低い。規模と収益性のバランスが取れた位置にいる会社と言える。
志望動機では、同業の中での位置を数字で説明できる。逆質問では、その水準を支える稼ぐ力を、相場の波があるなかでどう保つかを聞ける。
カゴメの構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(### 原材料・トマト市況という構造リスク/### 国内人口減少と値上げの限界/### 海外M&Aの巧拙が問われる時代)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。2025年12月期は最高益の反動で営業利益が前期比▲37.5%の226億円、しかし2026年からは新体制・新中計「Kagome Group PLAN 2028」がスタートした。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 食品業界の構造的課題——### 原材料・トマト市況という構造リスク/### 国内人口減少と値上げの限界/### 海外M&Aの巧拙が問われる時代
- 第3.5章 面接前に押さえるカゴメ最新ニュース10本——決算・社長交代・値上げ・増配・M&Aまで
- 第4章 内定者の正体——採用区分と就職難易度、ES「なぜカゴメか」の組み立て、逆質問のレベル別、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収と平均像、市場価値とセカンドキャリア
- 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、退職理由の構造、福利厚生
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答テンプレートと逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——投資視点×就活視点