ZOZO(3092)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ZOZOを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「ROE46.6%の裏側」です。
有報の数字(第28期)
- 売上高
- 2,284億円
- 純利益
- 479億円
- ROE
- 46.6%
- 従業員数(連結)
- 1,894人
- 従業員数(単体)
- 1,662人
- 平均年間給与(単体)
- 856万円
- 平均年齢
- 34.7歳
- 平均勤続年数
- 7.5年
出典:ZOZOの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ZOZOを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ZOZOに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはZOZOの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社ZOZO 有価証券報告書 第28期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
ZOZOは、買収によって売上の伸びが取扱高に追いつかなくなったが、利益は伸ばしている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
会社が見ている数字は、売上高ではなく「商品取扱高」だ。ZOZOTOWNなどで売れた商品の総額で、売上高の約3倍ある。
従業員1,894人で、最終的な利益479億円を稼ぐ。少人数で大きな利益を出す会社だ。
2025年4月に子会社化した英国のLYSTの影響で、取扱高ほど売上が伸びなかった。それでも利益は計画を上回った。
この記事では、ZOZOが何に賭け、どう儲けているのかを確かめる。
第1章 ZOZOは何に賭けているのか
1-1. 見ている数字は売上高ではなく商品取扱高
有価証券報告書(以下、有報)は、会社が法律に基づいて出す報告書だ。ここに、会社が重視する指標が書かれている。それは売上高ではなく「商品取扱高」である。
ZOZOの主力は「受託販売」だ。ブランドの商品を預かり、売れたら手数料を受け取る。会計上の売上高には、この手数料だけが入る。
当期の商品取扱高は6,660億円、会計上の売上高は2,283億円だ。
その差は2.9倍ある。売上高だけを見ると、事業の規模を小さく見誤る。
経営戦略は「MORE FASHION」×「FASHION TECH」と、「ワクワクできる『似合う』を届ける」の言葉で表されている。
志望動機で、売上ではなく取扱高を見る会社だと踏まえたうえで、売る場の規模に賭けている点に触れられる。戦略の言葉は、自分の経験と結びつけて引用するとよい。
1-2. ROE30%の目標と、総還元性向80%超
ROEとは、株主が出したお金に対して、1年でどれだけ利益が出たかを示す率だ。会社は自分で決めた目標として、ROE30%を目安に置いている。比べる相手は「世界的にみた場合に当社と類似する企業」だ。
当期の実績は46.6%で、目標を上回っている。前期より下がったが、利益の伸びより自己資本の積み上がりが速かったためだ。
次に株主への還元を見る。総還元性向とは、利益のうち配当と自社株買いで株主に返す割合だ。会社は「2024年3月期以降の概ね5年平均」で、これを80%超にすると掲げている。
年限を切った中期経営計画はなく、この目標だけが期間つきで置かれている。
逆質問で「5年平均の80%超という期間のあと、還元とROEの目標はどう考えていますか」と聞ける。会社が自分で掲げた指標なので、質問の根拠が明確になる。
1-3. 働く側の事実——少人数で稼ぎ、年収は1年で大きく上がった
グループ全体の従業員は1,894人だ。うち1,662人が、株式会社ZOZO本体にいる。
本体の平均年間給与は856万円で、前年から18.6%上がった。平均年齢は34.7歳、平均勤続は7.5年だ。
1年で18.6%の賃上げは大きい。人材の確保に力を入れていることが、数字に表れている。
働く側の事実として、少人数の組織で給与が上がっている点を志望動機に結べる。逆質問では、年収が上がった背景と今後の方針を聞ける。
1-4. LYST買収で、取扱高と売上の伸びにズレが出た
2025年4月、ZOZOは英国のファッションサイト「Lyst」を運営するLYST LTDを完全子会社にした。連結の対象になったのは、2025年5月からだ。
当期の取扱高(その他を除く)は12.4%伸びた。一方、売上高の伸びは7.2%にとどまった。
理由はLYSTの稼ぎ方にある。掲載する提携先から、成果に応じた手数料を受け取る仕組みだ。手数料率(取扱高に対する売上の割合)は、LYSTが13.7%である。受託販売の27.3%の、約半分にすぎない。
それでも営業利益は前期を上回った。配送委託先との条件が2025年10月から改善し、物流拠点の作業効率も上がったためだ。
課題指摘として、買収で手数料率の低い事業が加わった点を挙げられる。逆質問では、LYSTの手数料率を今後どう高めるかを聞ける。
1-5. 計画との差——取扱高は未達、利益は達成
会社は、期初の計画と実績を並べて開示している。
取扱高は、計画の6,739億円に対して実績は6,660億円で、届かなかった。売上高も計画には届いていない。
一方、営業利益と最終利益は、どちらも計画を上回った。規模では未達でも、採算では上回った期である。
逆質問で「取扱高が計画に届かなかった要因は何で、今期はどう見ていますか」と聞ける。課題指摘にも使える。
第2章 ファッションEC業の収益構造
2-1. 在庫を持たない「受託販売」が利益を生む
ECとは、ネット通販のことだ。通常の小売業は、商品を仕入れて在庫を抱える。売れ残れば値引きして処分するため、損失が出る。ファッションは季節性が強く、このリスクが大きい。
受託販売では、在庫はブランドのものだ。ZOZOは商品を預かってサイトに載せ、売れたら手数料を受け取る。売れ残りの損失を負わず、必要な運転資金も小さい。だから、少ない自己資本でも事業が回る。
代わりにZOZOが担うのは、集客・サイト運営・物流・決済だ。在庫を自社で持つ「買取・製造販売」は、取扱高のわずか0.4%である。
志望動機で、ブランドが商品を作り、ZOZOが売る場と物流を担う分業に賭けていると語れる。課題指摘では、ブランドに選ばれ続けることが前提になる点を挙げられる。
2-2. 集客はセールイベントで動く
この期間にTVCMとWEB広告を集中して流す。訪問者数と購買率(訪問者のうち買う人の割合)を押し上げるためだ。
第4四半期は、集客が好調で、セール在庫も潤沢だった。そのため冬の本セールが伸び、第3四半期までの不足分を補ったと、有報にある。EC企業の業績は、セールの設計で四半期ごとに動く。
マーケティングや商品企画の志望動機で、セールの設計が業績を左右する点を根拠にできる。逆質問では、セール在庫の確保と集客をどう連動させているかを聞ける。
2-3. 自社モールの外へ広げる——広がる先と縮む先
一方、縮んだ事業もある。企業向けのBtoB事業は、取扱高が36.1%減った。
楽天やアマゾンなどの総合ECと比べると、ZOZOはファッションに特化している。有報には、蓄積したファッションのデータを使った、独自のAIエージェントの開発も記されている。
志望動機で、ファッション特化とデータの蓄積を強みとして挙げられる。逆質問では、縮んだBtoB事業の今後の位置づけや、AIエージェントの活用方針を聞ける。
ZOZOの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(LYSTが計画未達——海外展開の難しさ/気候変動が売上を直撃する/事業の撤退——Made by ZOZOの終了/ROEの低下と、成長の次の一手)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。商品取扱高6,660億円に対し売上高は2,284億円(取扱高の34.3%)、取扱高+12.4%に対し売上+7.2%というズレ、LYSTの手数料率13.7%は受託販売27.3%の半分、それでも販管費率が1.0ポイント下がりEBITDAは+10.2%、ROE 46.6%、従業員1,894人で純利益479億円——ZOZOの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ファッションEC業の構造的課題——LYSTが計画未達——海外展開の難しさ/気候変動が売上を直撃する/事業の撤退——Made by ZOZOの終了/ROEの低下と、成長の次の一手
- 第3.5章 面接前に押さえるZOZOの最新ニュース10本——LYST買収・Made by ZOZO撤退・第1四半期決算まで
- 第4章 内定者の正体——「ZOZOTOWNが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収856万円(+18.6%)の読み方と、1,894人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率45.5%の他社比較、勤続7.5年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生