ツルハHD(3391)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ツルハHDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「1年で店舗が2.14倍」です。
有報の数字(第64期)
- 売上高
- 1兆4,506億円
- 純利益
- 427億円
- ROE
- 7.4%
- 従業員数(連結)
- 27,681人
- 従業員数(単体)
- 245人
- 平均年間給与(単体)
- 744万円
- 平均年齢
- 44.0歳
- 平均勤続年数
- 18.0年
出典:ツルハHDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ツルハホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ツルハホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはツルハホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社ツルハホールディングス 有価証券報告書 第64期(2025年3月1日〜2026年2月28日)に基づきます。
ツルハHDは2025年12月に日本最大のドラッグストアグループを作ったが、その代償を20年かけて払う会社でもある。
知っておきたいことは3つある。
・規模が1年で2倍以上になった。売上高は1兆4,505億円、従業員は27,681人で前期の2.45倍だ。
・増えた店の約96%は、買収によるものだ。新規出店は117店、子会社化等は2,991店である。
・買収の代償が、のれん4,430億円だ。のれんとは、買った会社に純資産以上に払った差額をいう。20年で均等に費用にするため、毎年約221億円が利益から引かれる。
この記事では、ツルハHDが何に賭け、その代償をどう払い、どう稼ぐ構造なのかを確かめる。
第1章 ツルハHDは何に賭けているのか
1-1. 賭けの中身——日本最大の連合体と、2029年2月期の目標
有報は、2025年12月1日のウエルシアHDとの経営統合を当期最大の出来事として記す。業界1位と2位が1つになった。狙いは「日本最大のドラッグストア連合体」を作り、アジアNo.1を目指すことだ。
新しい中期経営計画(2027年2月期〜2029年2月期)は、売上高2兆7,000億円、営業利益1,350億円を掲げる。営業利益率の目標は5.0%で、当期は4.3%だ。
有報は、この3年を「価値創造基盤の構築フェーズ」と位置づける。利益を伸ばす本番は、2030年2月期からとしている。
志望動機で「日本最大の連合体に賭ける会社だから」と語れる。逆質問では「営業利益率4.3%から5.0%へ、最初に動かす施策は何か」と聞ける。
1-2. 増えた店の96%は買ったもの——空白だった関東と近畿が埋まった
期首2,658店は、期末に5,676店になった。純増のうち、自力の新規出店は117店にすぎない。子会社化等で入った店が2,991店ある。
地域別では、関東が447店から1,826店に増えた。近畿は76店から611店だ。北海道発祥のツルハが手薄だった地域を、統合で一気に埋めた形になる。
課題指摘として「買って増えた店の整理と統合が、次の仕事だ」と語れる。逆質問では、関東・近畿での店舗の重なりをどう扱うかを聞ける。
1-3. のれん4,430億円——毎年221億円が利益から引かれる
のれんは20年の均等償却だ。4,430億円を20年で割ると、年221億円になる。第64期の営業利益630億円の35%にあたる。
当期に費用になったのは、統合後の3か月分だけだ。第65期から、通年で乗る。
会社の試算では、ウエルシアを期首から連結していた場合、売上高は1兆103億円増える。一方、経常利益(通常の事業活動で稼ぐ利益)は147億円しか増えない。のれん償却が、買った会社の利益を大きく削る。
なお、第64期は前期と比べられない。決算期の変更で前期が9.5か月決算だったうえ、ウエルシアは最後の3か月しか入っていない。
課題指摘として「統合の利益は、のれん償却を引いて見る必要がある」と語れる。前期比で語らない点も、決算を読んでいる証拠になる。
1-4. 28卒が入るのは「基盤づくり」の終盤
2027年2月期の会社予想は、売上高2兆5,550億円、営業利益994億円だ。28卒の入社は2028年4月で、2029年2月期まで続く基盤づくりの終盤にあたる。
出店方針も変わった。新規出店中心から、改装とスクラップ&ビルド(閉店と建て替え)へ移る。店の「数」から「質」への転換だ。
プライベートブランド(PB、自社ブランド商品)の統合・再編にも着手した。当期の決算には、店舗閉鎖の費用が先に計上されている。
志望動機で「統合の成果が問われる時期に入社したい」と語れる。逆質問では、PB統合がどこまで進んでいるかを聞ける。
1-5. 働く側の事実——従業員は2.45倍、63%がパート
連結従業員は27,681人で、前期の11,298人から2.45倍になった。正社員とパートの合計は約7.6万人で、そのうち63.4%がパートタイマーだ。
単体の従業員は245人で、平均年齢は44歳3か月、平均年間給与は744万円である。単体は純粋持株会社で、実際の事業は各事業会社が担う。
人的資本の指標では、管理職に占める女性比率が16.7%だ。
「人員が2.45倍になる中で、自分はどの現場に貢献するか」を語れる。逆質問では、管理職の女性比率16.7%をどう改善するかを聞ける。
第2章 ドラッグストア業の収益構造
2-1. 「薬」と「食品」の二層構造
ドラッグストアは、利益率の高い商品と低い商品を意図的に混ぜて売る。医薬品や化粧品は利益率が高い。食品や飲料は低く、場合によっては赤字覚悟の価格で売る。
安い食品で客を毎日呼び、ついでに医薬品や化粧品を買ってもらう設計だ。有報も、調剤分野の需要の取り込みと食品の取り扱い拡大を、提供領域が広がる理由に挙げる。
志望動機で「食品で客を呼び、薬で稼ぐ構造に関わりたい」と語れる。課題指摘では、利益率の低い商品の稼ぎ方を軸にできる。
2-2. 調剤という「もう1つの事業」
調剤薬局は、処方箋に基づいて薬を出す仕事だ。薬剤師という国家資格者が要るため、簡単には増やせない。高齢化が進む限り、需要は安定する。薬価は国が決めるので、価格競争も起きにくい。
国内5,676店のうち3,319店(58.5%)が調剤薬局だ。関東・中部・近畿は7割を超え、北海道は33.6%にとどまる。統合が、調剤の比率を押し上げた。
「調剤併設の強化は会社の重点施策だから」と志望動機に使える。逆質問では、調剤を増やすための薬剤師確保をどう進めるかを聞ける。
2-3. PBとまとめ仕入れ——規模をコストに変える
PBは、自社ブランドとして作らせて売る商品だ。中間マージンが減るぶん、利益率が上がる。有報は、商品政策の統一やデータ活用の基盤整備を通じて、シナジー(統合の相乗効果)を出すと記す。
5,676店の仕入をまとめれば、メーカーへの交渉力は上がる。ただし、商品政策の統一、システム統合、物流の再編は、1〜2年では終わらない。
「規模をコストに変える仕事に関わりたい」と志望動機で語れる。逆質問では、シナジーが数字に出る時期の見通しを聞ける。
ツルハHDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(のれん221億円が、20年間毎年乗る/増えた店の96.2%は買ってきた店/競争の質が変わっている/前期比のない決算という不透明さ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上1兆4,506億円・営業利益630億円・純利益427億円、総資産は2.82倍・従業員は2.45倍・店舗は2.14倍、増えた店の96.2%は買収でありのれんは4,430億円・20年で年221億円の償却、期首から統合していれば売上2兆4,610億円・経常利益778億円で追加分の利益率は1.5%、国内5,676店のうち調剤薬局3,319店(58.5%)、減損損失107億円、自己資本比率53.1%——ツルハHDの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ドラッグストア業の構造的課題——のれん221億円が、20年間毎年乗る/増えた店の96.2%は買ってきた店/競争の質が変わっている/前期比のない決算という不透明さ
- 第3.5章 面接前に押さえるツルハHDの最新ニュース10本——のれん4,430億円・2027年2月期予想・第1四半期実績まで
- 第4章 内定者の正体——「薬剤師として働きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収744万円の読み方と、7.6万人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——パート47,917人の意味、女性管理職16.7%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生