東レ(3402)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、東レを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「炭素繊維より繊維が稼ぐ」です。

有報の数字(第145期)

売上高
2兆5,851億円
純利益
795億円
ROE
4.5%
従業員数(連結)
46,294人
従業員数(単体)
7,027人
平均年間給与(単体)
838万円
平均年齢
40.8歳
平均勤続年数
17.4年

出典:東レの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

東レを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、東レに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは東レの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、東レ株式会社 有価証券報告書 第145期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。2027年3月期の見通しは2026年5月13日公表の会社計画です。

結論:東レは「炭素繊維の会社」ではなく、繊維と機能化成品で稼ぎ、利益率を上げる計画に賭ける会社だ。

知っておきたいことは3つある。

会社は2028年度までに、ROEを4.5%から約8%へ上げる目標を掲げている。ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出せたかの割合だ。

本業の稼ぎ(事業利益)は、繊維が680億円、炭素繊維複合材料が176億円である。炭素繊維は繊維の約4分の1にとどまる。

従業員は連結46,294人。繊維が19,781人で、炭素繊維複合材料の6,231人の3倍以上いる。

この記事では、東レが何に賭け、どの事業が稼いでいるのかを、面接で自分の言葉で話せる形にする。

第1章 東レは何に賭けているのか

1-1. 会社が掲げた目標——2028年度にROE約8%、いまは4.5%

2026年度から2028年度の中期経営課題は「IGNITION2028」だ。中期経営課題とは、会社が3年間の目標を示した計画のことをいう。

目標は本業の稼ぎに表れる。事業利益を1,419億円から2,300億円へ引き上げる。事業利益率(売上のうち本業の稼ぎが占める割合)は5.5%から8%にする。

利益の伸びに比べ、売上の伸びは小さい。狙いは規模ではなく利益率だ。有報には「低収益事業の構造改革の確度を高め」とある。採算の悪い事業を立て直すか、やめるという宣言だ。

面接での使い方

志望動機で「利益率を上げる計画に関わりたい」と語る根拠になる。逆質問では「事業利益率8%に向けて、いま最も動いている施策は何か」と聞ける。

1-2. 賭けの中身——成長させる事業と、立て直す事業を名指しで分けている

有報は繊維事業を、競争力に応じて3つに分けている。「成長拡大」「成長回帰」「事業構造改革」である。

成長の担い手は、衣料用一貫型事業とエアバッグ事業だ。「資本配分を傾斜し」と書いてあり、お金の流れを変える意思が読める。人工皮革事業は、これまでの投資の効果発現と新用途の開拓で収益改善を進める。

成長領域の記述も具体的だ。樹脂は電気自動車(xEV)向けの先行開発を挙げる。フィルムは車載用の需要拡大に加え、AI需要による電子部品の高機能化と電力需要の拡大を見込む。

面接での使い方

志望動機で「どの事業にお金が集まるか」を理解していると示せる。逆質問では、人工皮革の投資回収の進み具合を聞ける。

1-3. 28卒が入るのは2028年4月——計画の最終年度に当たる

計画の到達点は2028年度である。28卒の入社は2028年4月で、3年計画の答えが出る年に重なる。

足元は足踏みが続く。5期のROEの最高は6.4%で、目標の約8%には一度も届いていない。

当期利益も、5年前の842億円から795億円へ減った。成長が止まっているのが現状だ。

面接での使い方

課題指摘で「5期とも目標水準に届いていない」と事実で言える。逆質問では「計画の最終年度に、若手は何を担うのか」と聞ける。

1-4. 直近の決算——売上は増えたが、本業の稼ぎは増えていない

第145期(2026年3月期)は、売上収益が前期比0.9%増えた。一方、事業利益は0.6%減り、ほぼ横ばいだった。

税引前利益(金融損益や一時的な損益を含む利益)は5.9%減った。本業の下の段階でも、利益が削られている。

当期利益は前期より増えたが、税負担の軽さが効いた結果だ。本業が好調だったとは言えない。

面接での使い方

課題指摘で「売上が増えても本業の利益が伸びていない」と指摘できる。逆質問では、事業利益を押し上げる施策の優先順位を聞ける。

第2章 素材メーカーの収益構造

2-1. 稼ぎ頭は繊維——「古い事業」が最大の柱である

繊維の事業利益は680億円だ。全社の事業利益が減る中で、繊維だけが増益だった。2027年3月期の計画は750億円で、衣料向けと中国市場の好調を見込む。

「繊維は成熟事業で伸びない」という見方は、数字と合わない。

機能化成品(樹脂・フィルム・化学品)の事業利益は563億円。原料価格と市況に左右される事業だ。同じ市況の三菱ケミカルグループは、石油化学事業の分社化検討に至った。

面接での使い方

志望動機で「繊維が最大の柱と知った上で志望している」と語れる。「炭素繊維の会社」という思い込みとの差を示せる。

2-2. 炭素繊維——利益は顧客の生産計画に左右される

炭素繊維は軽くて強い素材で、航空機、自動車、風力発電の羽根に使われる。需要は特定の産業に集中し、とくに航空機向けの比重が大きい。

第145期の事業利益は、前期から49億円減った。全セグメントで最大の減益幅だ。

2027年3月期は240億円を計画する。米ボーイングを主要顧客とする航空機向けの需要回復が前提である。業績は顧客の生産計画で決まり、自社の努力だけでは動かせない部分が大きい。

面接での使い方

課題指摘で「航空機への依存による変動をどう抑えるか」を論点にできる。逆質問では、航空機以外の用途の開拓状況を聞ける。

2-3. 働く側の事実——本体7,027人の内訳と待遇

連結46,294人のうち、東レ株式会社(本体)は7,027人だ。残りは国内外のグループ会社に属する。

本体の内訳では、機能化成品が2,531人で最大になる。繊維は1,572人にとどまる。繊維の人員の多くは、グループ会社の生産拠点にいるためだ。

炭素繊維複合材料は本体で1,198人、17.0%を占め、連結より比重が上がる。平均年収は838万4,000円、平均年齢は40.8歳、平均勤続は17.4年。いずれも本体7,027人の数字だ。

面接での使い方

志望動機で「本体とグループ会社のどちらで働きたいか」を分けて語れる。逆質問では、本体と生産拠点の人事交流を聞ける。

東レの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(売上が5年で1.16倍——成長をどこから取るか/原料価格という、制御できない変数/顧客集中というリスク/脱炭素と、素材産業の宿題)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上収益2兆5,851億円は前期比0.9%増にとどまり、5年で1.16倍と成長は鈍い。当期利益795億円は5年前の842億円を下回り、ROEは4.5%で2期連続横ばい。そしてセグメント別事業利益は繊維680億円・機能化成品563億円に対し、炭素繊維複合材料は176億円で前期比49億円の減益だった。従業員も繊維が19,781人(42.7%)で最大である。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 素材業界の構造的課題——売上が5年で1.16倍——成長をどこから取るか/原料価格という、制御できない変数/顧客集中というリスク/脱炭素と、素材産業の宿題
  • 第3.5章 面接前に押さえる東レの最新ニュース10本——炭素繊維176億円、繊維680億円、ROE4.5%、来期の原料高130億円まで
  • 第4章 内定者の正体——「炭素繊維に惹かれて」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収838万4,000円の読み方と、単体7,027人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続17.4年の読み方、女性役員比率20.0%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 東レの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第145期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は838万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 東レの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第145期)では、提出会社(単体)が7,027人、連結が46,294人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 東レが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。