クラレ(3405)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、クラレを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「税負担率74.5%」です。
有報の数字(第145期)
- 売上高
- 8,084億円
- 純利益
- 75億円
- ROE
- 1.0%
- 従業員数(連結)
- 12,117人
- 従業員数(単体)
- 4,715人
- 平均年間給与(単体)
- 809万円
- 平均年齢
- 42.2歳
- 平均勤続年数
- 17.8年
出典:クラレの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
クラレを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、クラレに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはクラレの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社クラレ 有価証券報告書 第145期(2025年1月1日〜2025年12月31日)に基づきます。
クラレは、ポバール樹脂で世界首位の化学メーカーだが、2025年12月期は事業整理の損失で最終利益が大きく減った。
知っておきたいことは3つある。
本業の儲けを示す営業利益は589億円で、前期より30.8%減った。最終利益は75億円で、76.5%減った。
差を生んだのは減損損失296億円だ。事業の価値が下がったとして、帳簿上で損にした金額である。その86.5%がイソプレン事業で出た。
事業別の利益の合計のうち、79.2%をビニルアセテート事業が稼ぐ。
この記事では、クラレが何に賭け、どこに課題があるかを、面接で語れる形で確かめる。
第1章 クラレは何に賭けているのか
1-1. 「スペシャリティ化学企業」と、育てる事業・整える事業
有価証券報告書(会社が毎年提出する公式の報告書。以下、有報)には、会社の時間軸が書いてある。長期ビジョンは「Kuraray Vision 2026」で、目標の年は創立100周年の2026年度だ。
目指す姿は「スペシャリティ化学企業」である。汎用品ではなく、特殊な製品で稼ぐ会社になるという意味だ。
中期経営計画「PASSION2026」は、2022年度から5か年で動いている。最終年度の方針は、事業を2つに分けて書かれている。
・成長・拡大事業:エバール、ジェネスタ、活性炭、歯科材料
・最適化・体質改善事業:収益改善を進める事業
育てる事業は製品名で挙げ、整える側は区分名だけで示している。
志望動機で「どの事業を育てる計画か」を自分の言葉で言える。逆質問では、2026年度の次の計画の方向を聞ける。
1-2. 買う判断と、やめる判断を、同じ年に下した
有報には、設備投資や買収の判断と、事業譲渡・縮小・撤退の判断が、同じ段落に書かれている。やめる判断の代償は、決算にそのまま出た。
営業利益は3割減だが、最終利益は約8割減だ。この差が、減損損失296億円である。
減損損失の内訳は偏っている。イソプレン事業だけで256億円、全体の86.5%を占める。同事業は営業損益でも2期連続の赤字で、当期は49億円の赤字だった。
課題指摘に使える。「本業は3割減、最終利益は約8割減。差はイソプレンの減損」と説明し、その立て直しにどう関わりたいかへつなげる。
1-3. 投資は「稼ぐ事業」に寄せている
当期の設備投資は、事業ごとの差がはっきりしている。ビニルアセテート事業に627億円を投じた。全体の58.7%にあたる。
一方、減損を出したイソプレン事業への投資は、前期とほぼ横ばいだった。額は43億円にとどまる。
稼ぐ事業に集中し、赤字の事業は追加投資を絞る。投資の配分から、会社の優先順位が読める。
志望動機で「会社が賭けている場所に、自分も賭けたい」と言える。逆質問では、イソプレンへの今後の投資方針を聞ける。
1-4. 28卒が入る頃は、計画が終わった後
28卒の入社は2028年4月である。PASSION2026は2026年度で終わり、創立100周年も過ぎている。入るのは、次の計画の中だ。
当期は、その最終年度の1年前にあたる。ここで大きな減損を出した。ROE(自己資本に対する最終利益の割合)は1.0%で、前期の4.3%から落ちている。
減損を出し切ったあとの事業構成で、利益がどこまで戻るか。それが、入社時点の最大の論点になる。
逆質問に使える。「次の中期経営計画で、減損後の利益水準をどう置いていますか」と聞ける。
1-5. 働く側の事実——長く働く人が多く、赤字事業にも人がいる
連結の従業員は12,117人である。平均年齢は42.2歳、平均勤続は17.8年で、長く働く人が多い組織だ。平均年間給与は約809万円である。
イソプレン事業の従業員は、連結で1,183人。そのうち802人が国内にいる。赤字事業の約3分の2が、国内の人員ということになる。
課題指摘に使える。「国内で多くの人が働く事業を、どう立て直すのか」と問える。長く働く前提の会社だと、志望動機にも書ける。
第2章 化学業の収益構造
2-1. ポバールという「世界首位」
クラレの利益を支えるのは、ビニルアセテート事業だ。利益率は約15%と高い。主な製品は、ポバール樹脂、PVB樹脂、EVOH樹脂「エバール」である。
ポバールは、水に溶けてフィルムになる樹脂だ。液晶ディスプレイの偏光板や、洗剤の個包装フィルムに使われる。クラレはこの分野で世界首位にいる。
エバールは、酸素を通さない樹脂で、食品包装などに使われる。どちらも原料から加工まで一貫した技術と、大きな設備投資が要る。参入する会社が少ないことが、高い利益率を支えている。
志望動機で「世界首位の製品を持つ強み」を理由にできる。
2-2. 利益の8割が1事業という形
事業別の利益の合計のうち、ビニルアセテート事業が79.2%を占める。前期は87.2%だった。
比率が下がったのは、ほかの事業が伸びたからではない。この事業自身の利益が28.6%減ったためである。
この事業の減益が、そのまま全社の減益になった。ほかの事業は利益率が一桁台で、イソプレンは赤字だ。第2の柱が育っていないことが、構造的な課題である。
課題指摘に使える。「第2の柱をどの事業で育てるか」を自分の仮説で語り、逆質問にもできる。
2-3. 基礎研究費は、全社で持つ
事業ごとに配分していない全社費用は、主に提出会社の基礎研究費である。前期から19.7%増えた。営業利益が3割減った期に、研究費は増やしている。
ビニロン、ポバール、エバールといった製品は、長い研究の積み重ねから生まれた。基礎研究を全社で持つ判断は、次の柱を作る意思の表れとも読める。
志望動機に使える。研究職なら「減益でも研究費を増やす会社だから選んだ」と言える。逆質問では、研究の成果がいつ事業になるのかを聞ける。
クラレの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(イソプレン事業——2期連続赤字に、減損256億円/税負担率74.5%という異常値/フリーキャッシュフローが4億円まで縮んだ/ROEは5期連続で低下している)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上8,084億円(△2.2%)に対し営業利益は588億円(△30.8%)・純利益は74億円(△76.5%)でROEは1.0%まで低下、要因は減損損失296億円(うち86.5%がイソプレン事業)と税負担率74.5%、ビニルアセテート1事業でセグメント利益の79.2%(625億円)を稼ぐ一方でイソプレンは2期連続の営業損失、基礎研究費221億円は全社費用として配分されず、営業CFの99.5%を投資に使いフリーキャッシュフローは4億円、その投資はビニルアセテートへ626億円(+39.3%)と集中——クラレの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 化学業の構造的課題——イソプレン事業——2期連続赤字に、減損256億円/税負担率74.5%という異常値/フリーキャッシュフローが4億円まで縮んだ/ROEは5期連続で低下している
- 第3.5章 面接前に押さえるクラレの最新ニュース10本——減損86.5%・税負担率74.5%・2026年の回復まで
- 第4章 内定者の正体——「素材で社会を支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収809万円の読み方と、6セグメントのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続17.8年、基礎研究398人の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生