ワールド(3612)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、ワールドを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上は26%増、本業の利益は3.6%減」です。

有報の数字(第68期)

売上高
2,840億円
純利益
120億円
ROE
13.7%
従業員数(連結)
7,094人
従業員数(単体)
263人
平均年間給与(単体)
558万円
平均年齢
43.1歳
平均勤続年数
15.2年

出典:ワールドの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

ワールドを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ワールドに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはワールドの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、株式会社ワールド 有価証券報告書 第68期(2025年3月1日〜2026年2月28日)に基づきます。同社はIFRS(国際会計基準)を採用しています。直近の数字は2026年10月5日公表の2027年2月期中間決算(短信・説明会資料)で補っています。

ワールドは「百貨店の婦人服の会社」として知られているが、いまは服を作って売る会社から、服の会社を買って立て直す会社へと形を変えている途中だ。

知っておきたいことは3つある。

・売上の伸びは、ほぼ買収でできている。第68期の売上収益は25.9%増えたが、本業の利益は3.6%減った。
・会社は「アパレルだけに頼らない」と書いた。2027年2月期から事業を「B2C」と「B2B」の2つに組み替えた。
・課題は、自分で生んだブランドにある。会社自身が説明資料で「最後の猶予」という言葉を使った。

この記事では、買収で伸びる売上、事業の組み替え、自前ブランドの立て直しを確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。

第1章 ワールドは何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——利益を毎年8%伸ばす

ワールドは2026年4月、2027年2月期からの3年間の中期経営計画「VISION-W」を発表した。

目標は4つある。親会社の利益を年率8%伸ばす。ROE(株主のお金でどれだけ利益を出したか)12.5%以上、ROIC(事業に投じたお金全体での利益率)8.5%以上。借金の重さを測るネットD/Eレシオは0.75倍以下だ。

第68期のROEは13.7%で、収益性の目標はすでに超えている。残る宿題は、利益を伸ばし続けることと、借金を軽くすることだ。

面接での使い方

逆質問で「4つの目標のうち、いま一番遠いのはどれですか」と聞ける。

1-2. 減らす事業と増やす事業——買収を重ねる会社

減らす側は、自分で生んだアパレルブランドだ。有報は「プロパー消化率を重視する方針へ転換」と書く。値引きせず定価で売れた割合のことだ。

増やす側は買収で動く。2025年2月に三菱商事の衣料子会社(いまのエムシーファッション)、12月にジーンズ店のライトオン、2026年3月に阪急系の雑貨・コスメ事業を傘下に入れた。

持株会社になった2017年以降、沿革に載る子会社化は10件ある。会社は「ロールアップ」という言葉を使っていない。だが、同じ服の領域で買い続け、自社の仕組みに組み込み、人材とノウハウの獲得を目的に挙げている。ロールアップと読むのが自然だ。

面接での使い方

志望動機で「買った会社を立て直す仕組みに関わりたい」と言える。

1-3. 28卒は、中計の最終年度に入社する

VISION-Wの最終年度は2029年2月期で、2028年3月に始まる。28卒の入社はその1か月後だ。

会社は説明資料で、その先に「1兆円企業を射程に」と書いた。いまの売上の延長では届かず、買収を続ける前提の言葉と読める。

面接での使い方

志望動機で「計画の成果が問われる年に、買収先の立て直しを現場で担いたい」と言える。

1-4. 稼ぎ頭はどこか——売上は増えたのに、本業の利益は減った

第68期の売上収益は2,840億円で、25.9%増えた。伸びの大半は前期末に買ったエムシーファッションの分だ。

一方、コア営業利益(一時的な損益を除いた本業の利益)は164億円で、3.6%減った。足を引っ張ったのは売上の約7割を占めるブランド事業で、利益が19.9%減った。

逆に、服を作る受託を担うプラットフォーム事業は、利益が128.0%増えた。稼ぎの軸が、売る側から作る側へ動き始めている。

面接での使い方

課題指摘で「売上の伸びと利益の伸びが逆を向いている」点を論点にできる。

1-5. 働く側の事実——持株会社は263人、平均年収557万円

有報の平均年収は、持株会社単体の数字だ。単体の従業員は263人、平均年齢43.1歳、平均勤続15.2年、平均年間給与は557万7,180円(前期比7.5%増)である。

グループの従業員は7,094人で、ほかにパート社員などが4,987人いる。新卒の多くが働くのはブランドや店舗を持つ事業会社で、その年収は有報に載っていない。

面接での使い方

年収に触れるときは「持株会社263人の数字だと理解しています」と添えると、読んでいることが伝わる。

第2章 アパレル業界の収益構造

2-1. 百貨店の服とショッピングセンターの服は、別の商売だ

ワールドの国内アパレルは2つに分かれる。百貨店が中心の「ミドルアッパー」と、ショッピングセンターが中心の「ミドルロワー」だ。

第68期の売上は、ミドルアッパーが525億円で4.6%減、ミドルロワーが964億円でほぼ横ばいだった。百貨店の服は単価が高いが、売上が落ちている。ショッピングセンターの服は量と回転で稼ぐ。

面接での使い方

志望動機で、どちらの売り場で何を伸ばしたいのかを理由とセットで語れる。

2-2. 服は「定価で売れたか」で利益が決まる

アパレルは、売れる前に作る商売だ。シーズン前に量を決め、外れれば値引きで売り切るしかない。値引きが増えると、売上は立っても利益が消える。

だから天候が直撃する。2026年6月の既存店売上は前年同月の87.5%まで落ち、会社は夏物の不振を理由に挙げた。有報も気候変動を、四季が消えると服の買い方が変わるリスクとして書いている。

面接での使い方

課題指摘で「量を作る前提を変えないと、天候のたびに利益が揺れる」と語れる。

2-3. この構造で働く人の事実

ブランド事業で働く人は4,934人で、グループの約7割にあたる。プラットフォーム事業は1,553人、デジタル事業は375人だ。

会社は、B2C(ブランド)からB2B(受託や支援)への人材ローテーションとリスキリング(技能の習い直し)を進めると有報に書いた。店舗やブランドから別の事業へ移る道が、方針として用意されている。

面接での使い方

逆質問で、ブランドからB2Bに移った社員がどんな仕事をしているかを聞ける。

ワールドの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(自前ブランドの不振と「最後の猶予」/買収で膨らむ売上と薄まる利益率/MBOの遺産——のれん612億円と借入金/百貨店・天候・人手という外の壁)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

■この会社の面接で落ちる人の共通点
「服が好きで、ブランドを通じてお客様に喜びを届けたいと思い、御社を志望しました」と言ったあとに、面接官から「当社の売上は昨年26%増えましたが、ブランド事業の利益は2割減りました。なぜだと思いますか」と返されて、言葉が止まる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。

■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「上期の説明資料で、ワールド生まれのアパレルは『最後の猶予』に入ったと書かれていました。6月の既存店売上は前年の87.5%でしたが、9月は105.2%でした。改善の芽が出ているブランドに共通している取り組みは何でしょうか」
この質問を作るのに必要な数字は、6月と9月の既存店売上の2つだけだ。残り6本は、買収先の立て直し、B2Bへの人材移動、のれんと借入金、ナルミヤのIP、女性管理職比率を、それぞれ同じ型で組んである。

ここまでが無料パートです。売上収益2,840億円(+25.9%)、コア営業利益164億円(△3.6%)、ブランド事業の利益△19.9%、プラットフォーム事業の利益+128.0%、ROE 13.7%——ワールドの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 アパレル業界の構造的課題——自前ブランドの不振と「最後の猶予」/買収で膨らむ売上と薄まる利益率/MBOの遺産——のれん612億円と借入金/百貨店・天候・人手という外の壁
  • 第3.5章 面接前に押さえるワールドの最新ニュース10本——エムシーファッションの負ののれん48億円・ライトオンの完全子会社化・上期の事業利益+0.3%まで。1本ごとに「面接で使うなら」
  • 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
  • 第4章 内定者の正体——「服が好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収557万7,180円の読み方と、グループ48社でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続15.2年の読み方、女性役員比率33%と女性管理職比率38.9%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. ワールドの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第68期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は558万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. ワールドの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第68期)では、提出会社(単体)が263人、連結が7,094人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. ワールドが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。