TIS(3626)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、TISを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「経常増益でも純利益減」です。
有報の数字(第18期)
- 売上高
- 5,965億円
- 純利益
- 466億円
- ROE
- 14.0%
- 従業員数(連結)
- 21,598人
- 従業員数(単体)
- 6,066人
- 平均年間給与(単体)
- 829万円
- 平均年齢
- 40.0歳
- 平均勤続年数
- 14.0年
出典:TISの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
TISを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、TISに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはTISの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、TIS株式会社 有価証券報告書 第18期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
TISは、人の数で稼ぐ事業から抜け出すと自ら宣言し、稼いだ利益を超える額を株主に返している会社だ。TISは独立系SIer、つまり企業の情報システムを設計・開発・運用する大手である。
知っておきたいことは3つある。
直近期は売上高が5,965億円(前期比+4.3%)、経常利益が765億円(+8.5%)と伸びた。経常利益とは、本業を中心にした利益のことだ。だが、税金などを引いた最後の利益である当期純利益は466億円(−6.8%)と減った。
有報の経営課題には「労働集約型ビジネスからの脱却」と明記されている。労働集約型とは、人の数と働いた時間で売上が決まる事業のことだ。2026年度には新会社「TISI株式会社」を発足させる。
平均年齢は40歳、平均勤続は14年、平均年間給与は828万9,000円である。人が長く働く組織だ。
この記事では、会社が何に賭けているのか、なぜ最終利益だけが減ったのか、コンサルと何が違うのかを、有報の数字で確かめる。
第1章 TISは何に賭けているのか
1-1. 有報が明かす賭け——人の数で稼ぐ事業をやめる
有報の「経営課題認識」には9つの項目が並ぶ。賭けを最も端的に示すのは、8番目の一文だ。
「⑧事業モデル転換の加速:労働集約型ビジネスからの脱却、成果・サービス・プロダクト型収益の拡大」
SIerが、人月(技術者の人数×月数)で稼ぐやり方をやめると書いている。7番目には「最小の資本で最大成果」とある。少ない資本で大きな成果を出すことを、目標に据えた言葉だ。
土台は「グループビジョン2032」で、2024年4月開始の中期経営計画「Frontiers2026」はその第一段階にあたる。中期経営計画とは、会社が3年ほどの目標を示した計画のことだ。海外ではASEANで連結売上高1,000億円を目指すと書く。
志望動機で「労働集約型からの脱却に賭ける姿勢に共感した」と、有報の言葉を根拠に語れる。逆質問では、ASEAN 1,000億円の現在地を聞ける。
1-2. 賭けは実行されている——新会社TISIと、利益を超える株主還元
有報は2026年度を「新会社『TISI株式会社』の発足という構造転換を伴う重要な節目」と書く。9番目の課題「統合シナジーの実現」、つまりグループを一つの会社として一体運営することが、その目的だ。
資本の動きにも方針が出ている。純資産(会社の自己資金の総額)は、3,561億円から3,377億円へ183億円減った。当期純利益466億円を稼いだうえでの減少だ。稼いだ額を上回る規模で、配当と自己株式取得(自社株の買い戻し)により株主へ返したことになる。
自己資本比率(総資産のうち自己資金が占める割合)も、61.5%から58.9%へ下がった。財務を意図的に薄くしていると読める。「最小の資本で最大成果」という方針と、実行が一致している。
課題指摘で「方針と資本政策が一致している」と述べられる。逆質問では、TISI発足後の事業の役割分担を聞ける。
1-3. いまは中計の2年目——28卒が入るのは次の計画の中
28卒の入社は2028年4月である。Frontiers2026は2024年4月からの3年間で、当期(2025年度)はその2年目にあたる。最終年度の2026年度に新会社が発足し、その先にグループビジョン2032がある。
つまり28卒は、次期の中期経営計画が進んでいる途中で入社する。
業績の土台は安定している。売上高と経常利益は、5期連続で増えている。
志望動機で「次期中計を担う最初の世代として入りたい」と、時間軸を踏まえて語れる。逆質問では、次期中計で最も重視するテーマを聞ける。
1-4. 増収・経常増益なのに最終減益——ROEも下がった
売上高と経常利益は増えたのに、当期純利益だけが減った。経常利益は+8.5%、当期純利益は−6.8%で、差は約15ポイントある。
利益は「経常利益→税引前利益→当期純利益」の順に計算される。間に入るのは、その期限りの特別損益と、法人税等だ。本業の稼ぐ力は伸びており、減益の原因は経常利益より下の段階にある。
ROE(自己資本に対する最終利益の割合)は14.0%で、前期の15.3%から下がった。純資産を減らす資本政策はROEを押し上げる向きに働く。それでも最終利益の減少が上回った。
課題指摘で「本業は伸びており、焦点は経常利益より下の要因だ」と述べられる。逆質問では、最終利益が減った要因と今後の見通しを聞ける。
1-5. 連結21,598人——最大の部隊は地域に根ざした事業
連結従業員は21,598人で、うちTIS株式会社単体は6,066人である。
最大の部隊は広域ITソリューションの7,197人で、連結の33.3%を占める。有報は、行政・医療・金融・産業・インフラの5つの注力領域で、顧客に密着して培ったITソリューションを全国展開すると説明する。次いで大きいのはオファリングサービスの5,812人だ。
志望動機で「顧客と地域に密着するIT事業が人員の柱だ」と、事業の実像を語れる。逆質問では、配属領域がどう決まるのかを聞ける。
第2章 SIer業界の収益構造
2-1. コンサルとSIerは人の組み方が正反対
同じIT・コンサル領域のベイカレントと並べると、違いが見える。
売上規模はTISが約4倍。ただし最終的に売上に残る割合(当期純利益率)は、TISが7.8%、ベイカレントが25.5%
連結従業員は、TISが21,598人、ベイカレントが6,788人
平均年齢は、TISが40歳、ベイカレントが31.3歳
平均勤続は、TISが14年、ベイカレントが3.8年
平均年間給与は、TISが828万9,000円、ベイカレントが約1,331万円
コンサルは、少数の人材が高い単価で働く。SIerは大規模なシステムに多くの技術者が要り、完成後も長く同じシステムを保守する。担当者が頻繁に変わると知識が失われるため、定着が重要になる。勤続14年は、この事業の構造から来ている。
志望動機で「なぜコンサルではなくSIerか」に答える材料になる。逆質問では、平均40歳・勤続14年の組織でのキャリアの積み方を聞ける。
2-2. 「作って終わり」ではない事業と、利益率7.8%の理由
SIerの収益には2つの性格がある。受託開発は、システムを作って納める仕事で、プロジェクト単位で売上が立つ。運用・保守は、作ったシステムを動かし続ける仕事で、毎年安定した収入が入る。
業務プロセス管理を担うBPMなどの部隊があることは、事業の重心が単発の開発から継続サービスへ移っていることを示唆する。
利益率がコンサルより低いのは、原価の構造による。主なコストは技術者の人件費と外注費で、人数に比例して積み上がる。人数で作るか、単価で稼ぐか。この違いが利益率の差になる。
課題指摘で「人数に比例する原価構造が、事業モデル転換の課題だ」と1-1につなげられる。逆質問では、継続収益の比率に目標があるかを聞ける。
2-3. 独立系という立ち位置
TISは、特定のメーカーや金融グループに属さない独立系SIerだ。メーカー系やユーザー系は、親会社からの安定した受注がある一方、取引先の広がりに制約を受けやすい。独立系は幅広い顧客と取引できるが、営業力が問われる。
セグメントには金融ITがある。金融システムは高い信頼性を求められ、参入障壁が高い。一度受注すると長い付き合いになりやすい領域だ。
志望動機で「特定の親会社に頼らず、幅広い顧客に関われる」点を挙げられる。逆質問では、営業力を育てる仕組みを聞ける。
TISの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(売上が人月で決まるという限界/見積もりを外すと、利益が飛ぶ/顧客のIT投資は、景気で伸び縮みする/独立系であることの、両面)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。増収・経常利益8.5%増、しかし当期純利益は6.8%減。ROE14.0%はSIerとして高い水準で、連結21,598人・単体6,066人。純資産と総資産が同時に減っており、独立系という立ち位置がこの数字の並びを説明する。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 SIer業界の構造的課題——売上が人月で決まるという限界/見積もりを外すと、利益が飛ぶ/顧客のIT投資は、景気で伸び縮みする/独立系であることの、両面
- 第3.5章 面接前に押さえるTISの最新ニュース10本——経常増益・最終減益の正体、ROE14.0%、純資産減少まで
- 第4章 内定者の正体——「ITで社会を支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収829万円の読み方と、SIerで積める市場価値
- 第6章 働く環境の現実——勤続年数の読み方、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生