電通グループ(4324)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、電通グループを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「赤字3,276億円の正体」です。

有報の数字(第177期)

売上高
1兆4,352億円
純利益
-3,276億円
従業員数(連結)
67,454人
従業員数(単体)
135人
平均年間給与(単体)
1,596万円
平均年齢
45.0歳
平均勤続年数
14.3年

出典:電通グループの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

電通グループを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、電通グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは電通グループの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、株式会社電通グループ 有価証券報告書 第177期(2025年1月1日〜2025年12月31日)に基づきます。同社はIFRS(国際会計基準)を採用し、「2025年度」と呼ぶ期間は第177期と同じです。直近の数字は、2026年8月14日公表の2026年度第2四半期決算説明資料によります。

電通グループは、日本で稼ぎ、海外で大きな減損を出し、立て直しの途中にある広告会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・最終赤字は3,276億円だが、本業は黒字だ。海外ののれんの減損が3,961億円あり、減損などを除いた調整後営業利益は1,725億円の黒字である。
・稼ぎ頭は日本だ。従業員の35.4%で、調整後営業利益の70.2%を稼ぐ。
・会社は目標を引き直した。2026年8月に中期経営計画を1年延ばした。28卒の入社は2028年4月で、新しい計画の最終年度の途中にあたる。

この記事では、会社が何に賭け、何を縮め、誰が稼いでいるのかを確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。

第1章 電通グループは何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——2028年度の利益率と、引っ込めた目標

会社は2025年2月に、2025〜2027年度の中期経営計画を発表した。ところが2026年2月に、主要な財務目標の一部を取り下げた。有報は「見直しのため取り下げ、改めて設定いたします」と書く。どの目標を取り下げたのかは、有報からは特定できない。目標を立てた会社が、1年足らずで一部を引っ込めたことになる。

2026年8月14日、計画は2026〜2028年度として組み直された。2028年度の目標は、オペレーティング・マージン16%とオーガニック成長率2〜3%だ。オペレーティング・マージンは、調整後営業利益(一時的な損益を除いた本業の利益)を売上総利益で割った率で、当期は14.4%だった。オーガニック成長率は、為替や買収・売却の影響を除いた成長率のことである。

28卒の入社は2028年4月だ。計画の最終年度の途中に入り、達成できたかどうかが問われる時期に働き始める。計画を立てた側ではなく、数字を作る側として入ることになる。

面接での使い方

志望動機では、新しい目標に向けた立て直しの当事者になりたい、と語れる。逆質問では、当期の水準から目標への道筋で最も効く施策を聞ける。

1-2. 減らす事業と増やす事業——人と法人を絞り、AIに寄せる

減らす側は具体的だ。2027年までに約3,400人を減らす計画のうち、88%にあたる約3,000人を2026年上期までに実行した。海外の法人は、2021年1月に1,000以上あったものが、2026年1月に半分になった。2026年度は、さらに70〜80社を減らす見込みだ。東京とロンドンに分散・重複していた本部機能も見直している。

事業の売却も続く。直近の説明資料では、スイスの供給網追跡事業を手がけるDentsu Tracking社を売却したと示している。

増やす側は、AIとデータ分野への内部投資だ。2026年度は、2025年度より多い額を充てる計画になっている。一方で、M&A(企業の買収・統合)は当面抑える。構造改革の一環として、不動産の整理も進めている。

のれん(買収で払った額のうち、純資産を超えた部分)は、連結で6,971億円から3,201億円に減った。買い集めて広げた時期から、絞って磨く時期への転換だと読める。

面接での使い方

課題指摘として、絞った後の成長をどこで作るかを論点にできる。逆質問では、AI投資の対象を聞ける。

1-3. 稼ぎ頭は日本——人は3分の1で、利益は7割

日本は、売上総利益でグループの41.4%を占める。調整後営業利益は、本社費用を引いたグループ全体の70.2%にあたる。従業員は連結の3分の1ほどで、中核にいるのは㈱電通をはじめとする国内の事業会社だ。有報は、日本が売上総利益で5年連続、調整後営業利益で2年連続の過去最高だったと書く。インターネット広告やDX(デジタル技術による業務の変革)が伸びた。

一方、海外3地域の調整後営業利益を全部足しても、当期に出した減損3,961億円の3分の1に満たない。利益の柱は日本にある。海外の看板を背負う会社だが、稼ぎの重心は国内に残っている。

面接での使い方

志望動機では、日本の稼ぐ力をさらに広げる側に立つ、と語れる。課題指摘では、利益の大半を日本に頼る偏りを論点にできる。

1-4. 働く側の事実——連結67,454人、持株会社は135人

連結従業員は67,454人で、5期で最多だった第175期の71,127人から3,673人減った。海外3地域は38,203人で、日本の23,874人より多い。連結には、本社機能にあたる5,377人も含まれる。

提出会社(持株会社の電通グループ本体)は135人だ。平均年齢45.0歳、平均勤続年数14.3年、平均年間給与は1,595万9,402円である。ただし135人は本社機能の人たちで、広告の現場で働く事業会社の社員の給与は、有報からはわからない。数字を引くときは、どの会社の数字かを必ず添える。

面接での使い方

志望動機では、事業会社の現場で働く自分を具体的に描ける。逆質問では、海外拠点との人の行き来を聞ける。

第2章 広告業の収益構造

2-1. 売上ではなく「売上総利益」で見る

有報は、広告業の収益は主として代理人としての性格が強いため、受け取った対価から関連する原価を引いた純額で計上する、と書く。代理人とは、広告枠の持ち主と広告主の間に立つ立場のことだ。当期の収益は1兆4,352億円、売上総利益は1兆1,975億円だった。

会社は、この売上総利益のオーガニック成長率を成長の指標にしている。会社の資料には取引総額に近い「売上高」も載るが、実力は売上総利益に出る。

面接での使い方

志望動機で売上総利益を軸に語れると、数字を読む癖が伝わる。逆質問では、売上総利益の伸びの内訳を聞ける。

2-2. 費用の大半は人件費

広告会社の商品は人だ。従業員給付費用の総額は、売上総利益の68.7%に相当する。売上総利益からこうした費用を引き、買収関連の償却や一時的な費用を調整すると、調整後営業利益は売上総利益の14.4%にとどまる。

人を減らせば利益率は上がるが、提案力も落ちる。AIで1人あたりの仕事量を増やせるかが、利益率の鍵になる。

面接での使い方

課題指摘として、人件費の重さとAI活用の両立を論点にできる。逆質問では、AIで空いた時間を何に回すのかを聞ける。

2-3. 同じ会社でも、地域で利益率が10倍近く違う

地域別のオペレーティング・マージンは、日本が24.4%、アジア太平洋(APAC)が2.5%だ。米州(Americas)は日本に近い高さで、欧州・中東・アフリカ(EMEA)はその中間にある。APACは売上総利益が減る中、販管費の抑制で利益を確保した。

会社は2026年8月の資料で、日本を「グループの中核」、米州を「成長の原動力」、EMEAを「収益力の回復」、APACを「次の成長基盤」と位置づけた。どの地域を選ぶかで、働く環境は大きく変わる。

面接での使い方

志望動機では、どの地域のどの役割に関わりたいかを具体的にできる。課題指摘では、APACの低い利益率を論点にできる。

電通グループの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(海外のれん/日本一本足の利益/人件費とAIの綱引き/無配・債務超過と信頼の回復)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

■この会社の面接で落ちる人の共通点
「日本一の広告会社で働きたい」と言ったあとに、面接官から「直近の最終赤字3,276億円は、どこで生まれたと見ていますか」と返されて、言葉が止まる。調整後営業利益1,725億円の黒字を挙げても、のれんの減損3,961億円に触れなければ片面の答えになる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。

■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「当期は営業損失が2,892億円でしたが、調整後営業利益は1,725億円の黒字でした。2028年度のオペレーティング・マージン16%に向けて、いちばん効いてくる施策はどれでしょうか。」
この質問に必要な数字は、営業損失2,892億円と調整後営業利益1,725億円の2つだ。残り6本は、日本の利益構造、のれんの回収可能価額、3,400人削減後の若手の仕事、AI変革支援、電通総研の合弁化、日本人財の育成プログラムを、それぞれ同じ型で組んである。

ここまでが無料パートです。最終赤字は3,276億円で、海外ののれんの減損が3,961億円、調整後営業利益は1,725億円、日本は調整後営業利益の70.2%を従業員の35.4%で稼ぎ、2028年度の目標はオペレーティング・マージン16%(当期14.4%)——電通グループの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 広告業の構造的課題——海外のれん/日本一本足の利益/人件費とAIの綱引き/無配・債務超過と信頼の回復
  • 第3.5章 面接前に押さえる電通グループの最新ニュース10本——上期の調整後営業利益720億円・電通総研の合弁化・中計の組み直しまで。1本ごとに「面接で使うなら」
  • 第3.6章 数字で補足——5期の推移・地域別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
  • 第4章 内定者の正体——「日本一の広告会社で働きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,595万9,402円の読み方と、67,454人のグループでのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続14.3年の読み方、女性役員比率、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 電通グループの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第177期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,596万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 電通グループの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第177期)では、提出会社(単体)が135人、連結が67,454人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 電通グループが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。