大塚HD(4578)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、大塚HDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「研究開発費3,528億円」です。
有報の数字(第18期)
- 売上高
- 2兆4,689億円
- 純利益
- 3,632億円
- ROE
- 12.6%
- 従業員数(連結)
- 37,758人
- 従業員数(単体)
- 224人
- 平均年間給与(単体)
- 1,000万円
- 平均年齢
- 46.9歳
- 平均勤続年数
- 3.3年
出典:大塚HDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
大塚ホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、大塚グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは大塚HDの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、大塚ホールディングス株式会社 有価証券報告書 第18期(2025年1月1日〜2025年12月31日、IFRS)に基づきます。2026年7月31日発表の2026年12月期 第2四半期(中間期)決算も反映しています。
結論から言う。大塚HDは、飲料などで安定して稼ぎ、その力で新薬開発に賭けている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
売上は2兆4,689億円。うち医薬品を含む医療関連事業が70.6%、ポカリスエットなどのニュートラシューティカルズ関連事業が23.4%を占める。
研究開発費は3,528億円。売上の14.3%を新薬開発に投じている。
第4次中期経営計画は2024年度から2028年度。28卒の入社は、その最終年度にあたる。
この記事では、会社が何に賭け、どこまで進み、どこに課題があるかを確かめる。
第1章 大塚HDは何に賭けているのか
1-1. 会社が掲げた「3つの課題」と中期計画
有価証券報告書(会社が投資家向けに出す報告書。以下、有報)の「第4次中期経営計画」に、この会社の賭けが書いてある。期間は2024年度から2028年度の5年間で、副題は「創造と成長の5年間」だ。
その先の2035年に目指す姿として、重点課題が3つ挙がる。地球環境、女性の健康、少子高齢社会である。
長期ビジョンは「Better healthからBeyond health、そしてWell-beingへ」。治療と予防のどちらにも収まらない健康価値を作る、という宣言だ。
業績目標は「LOEによる調整局面を短期にとどめ、再び事業利益成長率2桁以上の成長ステージへ」。LOEとは、特許が切れて独占販売できなくなることだ。事業戦略では「3,000億円規模の研究開発投資を継続」と書く。
志望動機で、女性の健康まで重点課題に置く姿勢を根拠にできる。逆質問では、事業利益の2桁成長に戻る時期の見立てを聞ける。
1-2. 賭けの証拠は研究開発費3,528億円
賭けの証拠は、研究開発費の金額にある。第18期は3,528億円で、前期比+12.3%だった。
売上から原価と販管費を引いた利益が7,990億円。ここから研究開発費を引いた本業の利益(事業利益)が4,461億円になる。7,990億円の44.2%を、研究開発に回している計算だ。
事業利益の伸びは+3.6%にとどまる。研究開発費の伸びのほうが大きい。
投資先は製品名で示されている。いま稼ぐ「コア2」がレキサルティとロンサーフ。育てる「ネクスト8」が、新規抗精神病薬ウロタロントなどの8製品だ。前期にはジュナナ社を買収し、開発品を外からも取り込んだ。
土台は財務にある。自己資本比率(総資産のうち返済不要の資金の割合)は72.3%と高い。
志望動機で「現在と将来を分けて投資している点」を語れる。逆質問では、ネクスト8のうち次の柱になる製品の時期を聞ける。
1-3. 28卒が入るのは中計の最終年度
当期の2025年度は、中期経営計画の2年目だ。28卒の入社は2028年4月で、最終年度の2028年度の中にあたる。5年計画の答えが出る年に入社することになる。
足元の売上収益は2兆4,689億円(前期比+6.0%)。5期前から数えて+64.8%伸びている。成長の勢いは確かだ。
志望動機で、計画の結果が出る時期に働く意味を語れる。逆質問では、2028年度の目標に対する現在地を聞ける。
1-4. 営業利益+48.2%は実力か
第18期の営業利益は4,794億円で、+48.2%と大きく伸びた。ただし、これは事業の実力だけではない。
前期に1,260億円あった減損損失(資産の価値を下げて損として計上すること)が、当期は264億円に縮んだ。マイクロポート社の株式売却益も加わった。
実力に近い事業利益は+3.6%。当期利益は3,632億円(+5.8%)だ。どの利益で語るかで印象が変わる。
課題指摘では「事業利益ベースの伸びは+3.6%」と実力値で語る。営業利益の伸びだけを褒めると、浅い理解と見られかねない。
1-5. 働く側の事実——従業員3万7,758人
連結の従業員は3万7,758人。医療関連事業が2万2,897人(60.6%)、ニュートラシューティカルズ関連事業が9,625人(25.5%)だ。
大塚ホールディングス単体の従業員は224人で、連結の0.6%にすぎない。純粋持株会社であり、事業の現場は子会社にある。製薬会社でありながら、従業員の4分の1が飲料・食品の領域にいる。
志望動機で、どの事業会社で働きたいかを具体的に語る材料になる。逆質問では、持株会社と事業会社の役割分担を聞ける。
第2章 医薬・ヘルスケア業界の収益構造
2-1. 二刀流の収益構造——飲料が新薬開発を支える
医療関連事業は売上1兆7,442億円(+7.1%)、事業利益4,020億円で、利益率は23.0%。大塚HDの主力である。
もう一つの柱がニュートラシューティカルズ関連事業だ。栄養(Nutrition)と医薬品(Pharmaceuticals)を合わせた造語で、ポカリスエットやカロリーメイトがここに入る。売上は5,777億円、事業利益は689億円(+7.4%)で、利益率は11.9%。医薬品より低いが、特許切れも臨床試験の失敗もない安定収益だ。
ベトナムのポカリ新工場も稼働した。新薬開発費を出し続けられる体力は、この二刀流から生まれる。
志望動機で「飲料が新薬の挑戦を支える構造に魅力を感じた」と語れる。他の製薬会社との違いを示す、最大の論点になる。
2-2. 新薬の賭けとパテントクリフ
新薬開発は10年以上、数百億円をかけ、成功確率は数万分の1と言われる。当たれば大きい。主力のレキサルティは、売上3,313億円(+23.9%)まで育った。
最大のリスクは特許切れで、後発医薬品の参入で売上が急減する現象をパテントクリフという。大塚HDも、主力だったエビリファイの特許切れで業績が揺れた。
だから次の柱を切らさないことが生命線になる。IgA腎症治療の抗APRIL抗体「VOYXACT」は、迅速承認を取得した。
課題指摘で「今の稼ぎ頭と次の候補を対で語る」ことができる。逆質問では、特許切れへの備えを聞ける。
2-3. 他社との座標
武田薬品は売上4.5兆円のグローバル企業だ。第一三共は抗体薬物複合体「エンハーツ」で伸びている。
大塚HDの売上は2.47兆円。うち約3割は医薬品以外で、純粋な製薬の規模では武田や第一三共に譲る。一方で、他社が撤退しがちな精神・神経の領域で世界的な地位を築いた。整理すると「規模の武田、技術の第一三共、二刀流の大塚」になる。
志望動機で、他社ではなく大塚を選ぶ理由として使える。「二刀流だから」と一言で終えず、1-2と2-1の数字を添えて語る。
大塚HDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(研究開発費+12.3%の重さ——利益成長を食う投資/精神・神経領域の難しさ——効くかどうかが見えにくい/薬価と医療費——制度が売上を決める産業/減損とM&A——買収の成否が損益に表れる)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上2兆4,689億円(5期で+64.8%)、研究開発費3,528億円(稼ぎの44.2%)、医療関連70.6%とニュートラ23.4%の二刀流、レキサルティ+23.9%、営業利益+48.2%のからくり——大塚HDの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 医薬・ヘルスケア業界の構造的課題——研究開発費+12.3%の重さ——利益成長を食う投資/精神・神経領域の難しさ——効くかどうかが見えにくい/薬価と医療費——制度が売上を決める産業/減損とM&A——買収の成否が損益に表れる
- 第3.5章 面接前に押さえる大塚HDの最新ニュース10本——中間期+12.8%・ネクスト8・ポカリの新市場まで
- 第4章 内定者の正体——「ポカリが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,000万円の読み方と、連結3.8万人・持株会社224人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率29.4%の他社比較、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生