フジHD(4676)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、フジHDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「赤字のテレビと黒字の不動産」です。
有報の数字(第85期)
- 売上高
- 5,519億円
- 純利益
- 65億円
- ROE
- 1.0%
- 従業員数(連結)
- 7,373人
- 従業員数(単体)
- 122人
- 平均年間給与(単体)
- 1,577万円
- 平均年齢
- 50.5歳
- 平均勤続年数
- 23.3年
出典:フジHDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
フジHDを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、フジHDに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはフジHDの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)有価証券報告書 第85期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。直近四半期は、2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月4日)と会社IR資料で確認しました。
フジHDは、黒字の不動産を外に出す検討をしながら、当期は赤字だったテレビ局を、作品の権利(IP)で稼ぐ会社に作り替えようとしている。
知っておきたいことは3つある。
・営業赤字の中身は「放送が赤字、不動産が黒字」だ。当期の連結営業損益は△88億円。メディア・コンテンツ事業の赤字を、都市開発・観光事業の黒字が支えた。
・純利益65億円は、本業の黒字ではない。特別利益に、投資有価証券(保有株)の売却益500億円が入っている。
・直近の四半期は営業利益160億円で、回復が数字に出た。2026年4〜6月の営業利益を、会社は持株会社制導入後の過去最高と説明している。
この記事では、会社の賭け、利益の出どころ、働く側の事実を確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。
第1章 フジHDは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——2030年度ROE 6%、成長投資1,500億円
会社は2026年5月、成長計画「Group Vision 2026-2030 Ver.1.0」を公表した。目標は、2030年度にROE 6%、2033年度に8%である。ROEは、株主のお金でどれだけ稼いだかを示す割合で、当期は1.0%だった。
もう一つの柱が、2030年度までの成長投資1,500億円だ。IPを「作る・獲得する」川上、「制作・配給する」川中、「グッズやライブなどに広げる」川下の3領域に分ける。最も大きい配分は川下の800億円である。IPとは、ドラマやアニメなど、権利を持って多方面に展開できる作品のことだ。
28卒の入社は2028年4月だ。目標の2030年度まで、2年を残して入社する。ただし、数値目標は都市開発・観光事業への外部資本導入が決まった後に、「Ver.2.0」で更新される予定だ。目標そのものが変わりうる。
志望動機では、川下に最大の配分を置く理由を、自分の言葉で語れる。逆質問では、Ver.2.0で目標がどう更新されるかを聞ける。
1-2. 稼ぎ頭を外に出す検討——実行済みなのは自社株買い
会社は2026年2月、サンケイビルを中核とする都市開発・観光事業に、外部資本を入れる検討を始めると決めた。オフバランス(連結の決算書から切り離すこと)で資本効率を上げる狙いだ。有報は、この事業は資産が大きく、連結の自己資本を押し上げていると説明する。
ただし、検討は決定ではない。有報も、実施時期は未定と書く。
すでに実行したものは、自己株式の取得(自社株の買い戻し)だ。同じ2026年2月に総額2,350億円を買い、純資産は前期末から32.4%減った。自己資本を縮めてROEを上げる、という方針を、先に数字で実行した形だ。
課題指摘では、利益の出どころを外に出した後の成長の筋道を論点にできる。逆質問では、外部資本導入後の資金の使い道の優先順位を聞ける。
1-3. 利益の出どころ——放送の赤字を、不動産の黒字が支える
当期のセグメント(事業区分)別の営業損益は、メディア・コンテンツ事業が△308億円、都市開発・観光事業が+252億円だった。後者が前者を支えても、連結ではなお営業損失が残った。
有報は、前期にフジテレビで起きた人権・コンプライアンスに関する事案(以下、事案)で、広告主の出稿が止まり、広告収入が大きく減ったと書く。フジテレビの放送収入は841億円で、前期から大きく減った。下期は出稿の再開が続き、営業利益は計上している。
純利益が黒字なのは、特別利益に入った投資有価証券の売却益が、営業損失を大きく上回ったからだ。本業が黒字化したわけではない。この差が、この会社の利益の読みどころになる。
従業員の数で見ると、都市開発・観光事業は連結の3分の1強を占める。人の数に比べて、利益への貢献が大きい事業だと言える。
課題指摘では、本業の赤字を売却益が埋めた構造を指摘できる。志望動機では、赤字の事業を立て直す側に立ちたい、と語れる。
1-4. 働く側の事実——持株会社は122人、フジテレビは1,140人
連結の従業員は7,373人で、5期前の6,492人から881人増えた。
持株会社のフジHD(提出会社)は122人で、平均年齢50.5歳、平均勤続年数23.3年。関係会社からの出向者を含む人数で、新卒の採用窓口というより、グループを束ねる本社機能だと読める。
新卒採用を行うフジテレビは1,140人で、平均年齢42.9歳、平均勤続年数18.7年、平均年間給与は1,369万8,000円。前期比は△12.0%で、事案があった前期の翌期に、給与が大きく下がった形だ。
志望動機では、立て直しの局面で働く意味を語れる。逆質問では、給与の減少を会社がどう受け止めているかを聞ける。
第2章 テレビ局グループの収益構造
2-1. 収入の柱はCM枠。放送収入は3つに分かれる
放送事業の売上の多くは、CM枠の販売による広告収入だ。有報も、景気や視聴率が下がると、CM枠の価格に響くと書く。
フジテレビの放送収入は、枠の種類で3つに分かれる。ネットタイム(全国放送の番組に付くCM枠)、ローカルタイム(関東地区向けの番組枠)、スポット(番組の合間に流すCM枠)だ。
広告会社への依存もある。電通向けの売上だけで連結売上の8.2%を占め、博報堂向けと合わせて2社が大口の取引先だ。
志望動機では、CM枠の営業が会社の収入の入口であることを踏まえて語れる。逆質問では、広告会社への依存をどう見ているかを聞ける。
2-2. 放送の外に収入をどう作るか——IPの川上・川中・川下
会社は、放送中心のモデルから、IPを起点にしたモデルへの転換を掲げる。創出、育成、多角展開、収益化までを、グループ内で完結させる構想だ。経営ビジョンは「好きでつながる明日をともに」である。
強みと位置づけるのは川中、つまり制作と配給だ。ドラマから映画やイベントへ広げる力と、地上波で育てる力を挙げる。当期、フジテレビのコンテンツ・ビジネス収入は566億円に増えた。配信サービスFODの課金収入や、映画「爆弾」のヒットが寄与した。
志望動機では、川上・川中・川下のどこで働きたいかを具体的にできる。課題指摘では、川下の機能不足を論点にできる。
2-3. この構造で働くとは、どういうことか
2025年7月、フジテレビは大規模な組織改編を行った。コンテンツ戦略本部を新設し、企画、投資、マーケティング、販売を一体で管理する。制作は、ジャンル別の組織から、ジャンルをまたぐスタジオ本部制に変えた。
作る人と数字を見る人が近くなった組織だ。制作志望でも、投資の目線を問われる場面が出てくる。会社はキャリア採用も強化している。有報によると、2026年度はキャリア採用が新卒採用とほぼ同数、あるいはそれ以上になる見込みだ。
志望動機では、制作と投資判断が近い組織で働きたい理由を語れる。逆質問では、新卒に期待する役割をキャリア採用者との違いで聞ける。
フジHDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(広告収入の戻り方/稼ぐ場所と投資する場所のずれ/自己資本を縮めた後の資本効率/制作現場と人材)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
■この会社の面接で落ちる人の共通点
「テレビが好きです」と言ったあとに、面接官から「当期の営業損益は△88億円ですが、どの事業が赤字で、どの事業が支えたと見ていますか」と返されて、言葉が止まる。好きという気持ちだけでは、赤字と黒字の内訳に触れられない。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。
■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「メディア・コンテンツ事業は△308億円、都市開発・観光事業は+252億円でした。都市開発・観光に外部資本を入れた後、放送とコンテンツの利益で、成長投資1,500億円と配当を支える道筋を、どう描いていますか。」
この質問に必要な数字は、2つの事業の営業損益だ。残り6本は、広告市況の見方、放送事業の粗利率、川下で迎えたい会社、アニメの評価損、キャリア採用と新卒の役割、ROE 6%の置き方を、同じ型で組んである。
ここまでが無料パートです。連結営業損益は△88億円で、メディア・コンテンツ事業が△308億円、都市開発・観光事業が+252億円、純利益65億円には売却益500億円が入り、2026年4〜6月の営業利益は160億円——フジHDの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 テレビ局グループの構造的課題——広告収入の戻り方/稼ぐ場所と投資する場所のずれ/自己資本を縮めた後の資本効率/制作現場と人材
- 第3.5章 面接前に押さえるフジHDの最新ニュース10本——自社株買い2,350億円・第1四半期の営業利益160億円まで。1本ごとに「面接で使うなら」
- 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
- 第4章 内定者の正体——「テレビが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——フジテレビの平均年収1,369万8,000円の読み方と、連結7,373人のグループでのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続18.7年の読み方、女性役員比率40%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生