オービック(4684)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、オービックを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益率65.7%」です。
有報の数字(第59期)
- 売上高
- 1,352億円
- 純利益
- 752億円
- ROE
- 15.8%
- 従業員数(連結)
- 2,256人
- 従業員数(単体)
- 2,030人
- 平均年間給与(単体)
- 1,129万円
- 平均年齢
- 35.8歳
- 平均勤続年数
- 12.9年
出典:オービックの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
オービックを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、オービックに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはオービックの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社オービック 有価証券報告書 第59期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
結論から言う。オービックは、自社で作った業務ソフトを自社で売り、営業利益率65.7%を保つ会社だ。
この記事は、会社が国に提出する公式の年次報告書「有価証券報告書(有報)」を読み解いて書いている。先に知っておきたいことは3つある。
・この会社が掲げる目標は、ROEという1つの指標だけだ。ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ稼いだかを示す割合である。
・売上1,352億円に対し、本業の利益は888億円残る。売上の3分の2が利益になる計算だ。
・平均勤続年数は12.9年。新卒で入り、長く働く社員が多い組織だ。
この記事では、「高い利益率」と「辞めない組織」がどうつながるかを、有報の数字で確かめる。
第1章 オービックは何に賭けているのか
1-1. 賭けているのは「自社開発・直接販売」と、ROEという1つの目標
有報の「目標とする経営指標」に挙がるのは、ROEだけだ。売上や利益額の目標は書かれていない。年限を切った中期経営計画もない。
優先課題は3つに絞られている。製販サービス一体体制、自社開発ソフト「OBIC7シリーズ」による生産性の向上、人材の育成と活性化だ。
賭けの中身は、事業モデルの1文に出ている。自社で開発し、自社の営業が直接売り、自社運営のクラウドセンターで提供する。クラウドセンターとは、ネット経由でソフトを使わせるための自社の設備だ。
多くのシステム会社は、顧客ごとに受託開発する。オービックは自社製品を持つ点が違う。
志望動機では、「入口から出口まで自社で担う点に惹かれた」と言える。逆質問では、「中期計画を置かない中で、ROEをどう見ていますか」と聞ける。
1-2. 営業利益率65.7%は、全部を自社でやる結果だ
第59期は、売上1,352億円に対して営業利益が888億円だった。営業利益とは、本業で稼いだ利益のことだ。
営業利益率は65.7%になる。日本の上場企業の平均は5〜7%程度だ。
売上総利益率(原価を引いたあとに残る割合)は78.1%。自社開発なので仕入原価がなく、直接販売なので代理店への手数料も出ない。販売費及び一般管理費は、売上の12.5%に収まる。
志望動機では、「高い利益率は自社開発・直接販売の結果だ」と語れる。逆質問では、「この利益率を保つために、変えないと決めていることは何ですか」と聞ける。
1-3. 最も稼ぐのは、売った後の保守・運用だ
事業は3つある。最大はシステムサポート事業で、運用支援や保守を担う。売上構成の52.9%を占める。
利益率は、システムサポート事業が74.0%だ。システムを作って納めるシステムインテグレーション事業は59.7%である。
作って納める仕事より、納めたあとの保守・運用のほうが儲かる。導入する企業が増えるほど、この収入が積み上がる。
志望動機では、「導入後も続く顧客との関係が収益の中心だと理解した」と言える。自分の貢献を語るときは、顧客と長く関わる運用側の仕事を軸にできる。
1-4. 増収増益は続くが、現金と投資が積み上がっている
売上高は5期で+51.1%伸び、減収の期は1つもない。総資産は5期で+91.0%増え、売上の伸びを上回った。稼いだ現金がたまり続けているということだ。
ROEは5期とも15.5〜16.1%に収まり、第59期は15.8%だった。利益率の改善が、資産の膨らみを打ち消している。ただ、有報の数字からは、資産が膨らみ続ければROEは下がりうると読める。
営業外収益(本業以外の収入)は175億円。経常利益(本業以外も含めた利益)の16.7%にあたる。配当や株式の売却益などが含まれる。
稼いだ現金は、自社株の取得と配当で644億円を株主に返している。
課題指摘では、「現金がたまる中で、資金をどう使うかが論点だ」と言える。逆質問では、「ROEを保つために、還元と投資をどう配分しますか」と聞ける。
1-5. 働く側の事実——新卒で入り、長く働く組織だ
連結従業員は2,256人で、グループ会社は4社しかない。平均年齢は35.8歳、平均勤続年数は12.9年だ。新卒で入り、長く働く社員が多いと読める。
平均年間給与は1,129万円である。女性役員比率は9.1%だ。
有報は、この業界では人のモチベーションが業績に直結すると書く。だから優先課題の3つ目が人材の育成なのだ。
志望動機では、「長く働ける環境」を根拠にできる。逆質問では、「人材育成の具体策」や「女性役員比率の今後の方針」を聞ける。
第2章 ソフトウェア業の収益構造
2-1. ERPが「乗り換えられない」商品である理由
ERPとは、会計・人事給与・販売・生産など、会社の土台の業務を1つにまとめるソフトだ。OBIC7シリーズはその一つである。
一度入れると、乗り換えには全業務の作り直しと全社員の再教育が要る。費用も時間も大きい。だから顧客が離れにくく、保守・運用の収入が続く。1-3で見た高い利益率の理由は、ここにある。
有報によれば、当期は大手・中堅企業の新規顧客が増え、システム構築の売上が堅調だった。新規顧客が増えるほど、翌年以降の保守収入も積み上がる。
志望動機では、「一度入ると離れられない商品を扱う強さ」を語れる。課題指摘では、「1つの製品シリーズへの依存」を論点にできる。
2-2. 買わずに作って、直接売る——クラウドも自社運営
他社製品を仕入れて売れば、仕入原価がかかる。顧客ごとに受託開発すれば、大量の人手が要る。どちらも利益率は上がりにくい。
オービックは、自社でパッケージ(完成品のソフト)を作り、自社の営業が売る。顧客の声が開発に直接届き、導入から保守まで一貫して担える。
クラウドも、外部の基盤を借りず自社のセンターで提供する。外部への支払いが出ないため、利益率を保ちやすい。設備増強への先行投資は続けている。一方、買収はほとんどしていない。
志望動機では、「買収に頼らず、自社で作る一貫性に魅力を感じた」と言える。逆質問では、「クラウド設備への先行投資の考え方」を聞ける。
オービックの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(国内市場だけで成長を続けられるか/生成AIがERPを変える可能性/女性役員比率9.1%という数字/利益の16.7%が営業外という構造)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上高1,352億円(+11.5%)、営業利益率65.7%・粗利率78.1%・純利益率55.6%、システムサポート事業の利益率74.0%、平均年齢35.8歳で勤続12.9年、自己資本比率83.4%、営業CFの87.3%を株主還元に充当——オービックの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ソフトウェア業の構造的課題——国内市場だけで成長を続けられるか/生成AIがERPを変える可能性/女性役員比率9.1%という数字/利益の16.7%が営業外という構造
- 第3.5章 面接前に押さえるオービックの最新ニュース10本——自社開発直販・株主還元644億円・第1四半期決算まで
- 第4章 内定者の正体——「ITで社会を変えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,129万円(35.8歳)の読み方と、2,256人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率9.1%の他社比較、勤続12.9年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生