ミルボン(4919)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ミルボンを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「平均年収758万円、営業は9か月の研修から」です。
有報の数字(第66期)
- 売上高
- 529億円
- 純利益
- 34億円
- ROE
- 7.0%
- 従業員数(連結)
- 1,237人
- 従業員数(単体)
- 941人
- 平均年間給与(単体)
- 758万円
- 平均年齢
- 36.0歳
- 平均勤続年数
- 11.2年
出典:ミルボンの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ミルボンを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ミルボンのグループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはミルボンの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
「髪の悩みを解決する商品を、お客さまに届けたい」。そう志望動機を話すと、面接官は「うちのお客さまは美容師さんだよ。うちの営業は何を売っていると思う?」と返してくる。
知っておきたいことは3つある。
・2025年12月期の売上は528億円で3.0%増えたが、本業のもうけは17.4%減って56億円になった。
・増えた売上15億円のうち66%は、売上の4分の1にすぎない海外が生んだ。
・新卒の総合職は全員が営業に配属され、その前に9か月の研修を受ける。
※本記事の数値は、株式会社ミルボン 有価証券報告書 第66期(2025年12月期・2026年3月27日提出)と、半期報告書 第67期(2026年8月10日提出)・2026年12月期第2四半期決算短信(2026年8月10日公表)に基づきます。
第1章 ミルボンは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——最終年度の数字を、自分で下げた
ミルボンは2022年、5年間の計画「中期事業構想(2022-2026)」を公表した(会社が数年先の目標を宣言した計画。以下、中計)。掲げた目標は、有報の言葉でこうだ。「グローバルメーカーとしての企業体を創造し、アジアNo.1、世界ベスト5をめざす」。
ところが最終年度の2026年の数字は、会社が2026年2月に自分で引き下げた。
・売上:580億円 → 548億円
・本業のもうけ(営業利益):84億円 → 63億円
理由は、コストの大きな変化と「国内売上高の大幅な予想下振れ」だと有報は書く。2026年8月には上期の好調で売上556億円、本業のもうけ65億5,000万円まで予想を戻した。それでも、最初に掲げた84億円には届かない。
次の計画(2027-2031)は、2027年2月に公表する予定だ。
面接での使い方:「中期事業構想の最終年度に、本業のもうけの目標を84億円から63億円へ下げたと知りました。2027年からの次の計画では、国内の染毛剤の立て直しと海外の伸びの、どちらを先に置く考えですか」
1-2. 減らす事業と増やす事業——人と海外にお金を使う
増やす側の証拠は2つある。
1つ目は海外だ。中計では世界を7つの地域に分けたが、投資の順番を見直し、米国・EU(欧州連合)・韓国を重点に絞った。2026年上期の海外の売上は24.7%増え、売上の29.3%まで来た。
2つ目は人だ。2025年10月、神奈川県小田原市に新しい研修の拠点「人材開発センター」の研修棟が完成した。建物や土地などの帳簿の価値は39億円ある。
縮んでいるのは、肌につける化粧品だ。売上は23.5%減って6億円になった。
コーセーとの合弁会社(2017年設立)はあるが、同じ領域の会社を次々に買って束ねる「ロールアップ」とは読めない。自前の営業と研究で伸びてきた会社だ。
1-3. 28卒は、次の計画の2年目に入社する
28卒が入る2028年4月は、2027年から始まる次の中計の2年目にあたる。新しい目標を最初から現場で追う世代になる。
1-4. 稼ぎ頭はどこか——売上の4分の1の海外が、伸びの3分の2を生む
ミルボンの売上は、ほぼ全部が美容室で使う髪の商品だ。最大はシャンプーやトリートメントの「ヘアケア用剤」で334億円、売上の63.3%を占め、6.8%伸びた。2番目のヘアカラー(染毛剤)は168億円で、1.8%減った。
伸びの出どころは、国内ではない。国内の売上は392億円で1.3%増にとどまった。海外は136億円で8.1%増。増えた売上15億円のうち10億円、66%を海外が生んだ。
韓国だけで55億円、売上の10.4%ある。
面接での使い方:「売上の4分の1の海外が、増えた売上の3分の2を生んでいると知りました。韓国で売上の1割を稼ぐやり方を、米国やEUにどう移すのかに関心があります」
1-5. 働く側の事実——941人、平均年齢36.0歳、平均年収758万円
新卒が入るのは、有報を出しているミルボンそのものだ。有報の年収は、新卒が入る会社の数字になる。
単体(ミルボン1社だけ)の従業員は941人。平均年齢36.0歳、平均勤続11.2年、平均年間給与は758万3,000円。連結(海外の子会社を含むグループ全体)では1,237人で、この10年で約1.8倍に増えた。
28卒の総合職は、全員がフィールドパーソン職(営業)に配属される(採用サイトの募集要項)。その前に、9か月の新入社員研修がある。髪を染める・パーマをかけるといった美容の技術から、美容室の経営分析までを学ぶ。
研修を終えて配属されると、販売代理店の担当者と一緒に美容室を回る。スタッフ向けの講習を開き、店の会議に入り、販促の計画づくりを手伝う。商品の説明より先に、美容室の課題を聞く仕事だ。
第2章 美容室向けヘア化粧品の稼ぎ方
2-1. 川上と川下——メーカーと美容室の間に、代理店がいる
ミルボンは、美容室で使い、美容室で売る商品を作るメーカーだ。
商品の流れは、ミルボンから販売代理店へ、代理店から美容室へ、美容室からお客さまへ、の順になる。有報によると、売上の14.4%がトピー商事、10.0%がガモウ、7.9%がMASS-HDで、上位3社の代理店だけで売上の32.3%になる。
美容室での売り方は2つある。カラー剤のように美容師が施術に使う商品と、シャンプーのようにお客さまが店で買って家で使う商品(店販品)だ。2025年12月期は店販品が好調で、施術に使うカラー剤は安い銘柄への切り替えに押された。
2-2. 売り方——商品より先に「教育」を売る
営業の仕組みを、会社は「フィールドパーソンシステム」と呼ぶ。採用サイトのスローガンは「モノを売るな、コンセプトを売れ」だ。
営業の役割は2つに分かれる。
・フィールドマーケティングセールス:代理店と美容室を回り、課題を見つける
・フィールドビューティエデュケーター:美容の技術や人材育成で、その課題を解く
商品づくりも美容室から始まる。カラーやケアで飛び抜けて客を集める美容師の技術を研究員が解き明かし、どの店でも使える形にして商品を作る。会社はこれを「TAC製品開発システム」(TACは顧客代表制の略)と呼ぶ。
面接での使い方:「御社の営業が商品ではなく、美容室の繁盛のための教育を売っている点に惹かれました。フィールドビューティエデュケーターとして、カラーの技術講習から美容室の売上を上げたいです」
2-3. この構造で働く人
国内の営業(フィールドパーソン)は、2025年の期中平均で364.8人。1人あたり年1億700万円を売る計算になる(決算説明資料)。
工場は三重県伊賀市のゆめが丘工場(171人)で、研究は大阪市都島区の中央研究所(160人)が担う。28卒の総合職の勤務地は「全国各事業所・海外」だ(募集要項)。
ミルボンの構造的課題は、4つに分けて第3章で扱う(安くなるヘアカラー/伸びない国内と代理店/売上より速く増える費用/海外の稼ぐ力と統治)。
■同じ業界の会社も読んでおく(併願先と比べると、志望理由が具体的になる)
▶︎ コーセーの企業解剖
https://note.com/irshukatsu/n/nf3b381159a40
▶︎ 高砂香料工業の企業解剖
https://note.com/irshukatsu/n/n3058659b81bd
▶︎ ライオンの企業解剖
https://note.com/irshukatsu/n/nc83e65829f5a
■この会社の面接で落ちる場面
冒頭の「髪の悩みを解決する商品を、お客さまに届けたい」のあと、面接官が「うちのお客さまは美容師さんだよ」と返す。そこで言葉が止まる人が多い。止まり方は3つあり、第4章で1つずつ分けた。
■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「売上の4分の1の海外が、増えた売上の66%を生んだと知りました。国内でヘアカラーが1.8%減る中で、営業の1人あたり1億700万円の売上を、どう伸ばしていく考えですか」
必要なのは、増えた売上の66%と、営業1人あたりの1億700万円の2つだけだ。残り6本も、記事の中で説明した数字だけで組んである。
■有料パートで手に入るもの
・面接前日の1枚まとめ(覚える数字3つ・逆質問3選・言ってはいけない一言2つ)
・頻出6問の回答例と、面接官の深掘り問答6組(第7章)
・志望動機:ES用400字2本・面接用1分2本
・「当社の課題は?」への答え2パターン
・逆質問7本(1本ずつ狙いつき)
・面接前に読むニュース10本(1本ずつ「面接で使うなら」)
・採用の事実5項目と同業比較表1枚(第4章)
■使う場面
ESを書く日に第7章の400字を、面接の前日に1枚まとめを開く。ミルボンの面接1社分で1,480円、買い切りで、購入後はいつでも読み返せる。
■章ごとの中身
・第3章 美容室向けヘア化粧品業界の構造的課題——安くなるヘアカラー/伸びない国内と代理店/売上より速く増える費用/海外の稼ぐ力と統治
・第3.5章 面接前に押さえるミルボンの最新ニュース10本——上期の本業のもうけ72.7%増・新カラー「プレトワ」の発売延期・18億円の自社株買い
・第3.6章 数字で補足——ROEの分解・5期の推移・品目と地域・財務・株主還元・リスク
・第4章 内定者の正体——「髪の悩みを解決する商品を届けたい」で落ちる理由、3つの視点、不合格パターン、採用の事実と同業比較
・第5章 職種別キャリア分析——平均年収758万3,000円の読み方と、営業・研究・生産のキャリア
・第6章 働く環境の現実——勤続11.2年の読み方、女性役員比率21.4%の他社比較
・第7章 面接攻略——頻出6問と深掘り、ES用400字と面接用1分、逆質問7本
・第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生
ここまでが無料パートです。売上は3.0%増えたが本業のもうけは17.4%減り、増えた売上の66%は海外が生んだ。