三ツ星ベルト(5192)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、三ツ星ベルトを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「電動化が追い風になるベルトメーカー。国内の利益率は、海外の3倍ある」です。
有報の数字(第111期)
- 売上高
- 923億円
- 純利益
- 74億円
- ROE
- 7.5%
- 従業員数(連結)
- 4,568人
- 従業員数(単体)
- 780人
- 平均年間給与(単体)
- 726万円
- 平均年齢
- 41.0歳
- 平均勤続年数
- 17.1年
出典:三ツ星ベルトの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
三ツ星ベルトを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、三ツ星ベルトに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは三ツ星ベルトの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、三ツ星ベルト株式会社 有価証券報告書 第111期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日公表)に基づきます。
三ツ星ベルトは、EV化が追い風になるベルトメーカーであり、論点は「国内で稼ぎ、海外で伸ばす構造」と「中期経営計画の最終年度」にある。
知っておきたいことは3つある。
電動化が追い風になる。電動パワーステアリング用のベルトなど、電動化対応製品の販売が堅調だ。
利益は日本で出ている。国内ベルトの利益率は、海外ベルトの約3倍ある。
建設資材が苦しく、中期経営計画は2026年度が最終年度になる。28卒が入るのは、その次の計画の途中だ。
この記事では、会社が何に賭け、それが数字にどう出ているかを確かめる。
第1章 三ツ星ベルトは何に賭けているのか
1-1. 会社が賭けている3つのこと
三ツ星ベルトは、動力を伝えるベルトを作る会社だ。ベルト事業が売上の86.4%を占め、そのうち海外が6割を占める。
1つ目の賭けは中期経営計画である。会社が数年先までの目標を公表したものだ。「'24中期経営計画」は、2024〜2026年度を「成長加速期間」とした。
この計画は、収益性、資本効率性、設備投資額、株主還元、ESGの5分野にKPIを置いている。KPIとは、目標の達成度を測る物差しのことだ。
2つ目は電動化対応製品、3つ目は産業機械分野である。農業機械やロボット向けの伝動ベルト、物流向けの樹脂コンベヤベルトが伸びている。用途が自動車だけに偏っていない。
志望動機に使える。「5分野に目標を置き、電動化と産業機械に賭けている点に惹かれた」と言える。
1-2. 電動化は標語ではなく、数字に出ている
電動パワーステアリング(EPS)は、モーターの力をベルトでハンドル軸に伝える。電動二輪車には、チェーンの代わりにベルトで後輪を駆動する方式がある。
決算短信は、2026年3月期と2027年3月期第1四半期の両方で、こうした電動化対応製品の販売が「堅調」だと書く。エンジンがなくなっても、動力を伝える仕事はなくならない。
結果として、2027年3月期第1四半期の海外ベルトは、セグメント利益が前年同期比で+141.6%になった。セグメント利益とは、事業ごとの利益のことだ。ただし決算短信は、円安の影響もあると明記している。
志望動機に使える。「EV化が脅威にならず、需要になる会社だ」と言える。逆質問では、円安の影響を除いた実力を聞ける。
1-3. 利益は国内で出て、海外が伸び、建設資材が苦しい
国内ベルトのセグメント利益は73億円で、利益率は25.3%だ。海外ベルトの利益率は8.8%にとどまる。国内の利益率は、海外の約3倍ある。
ただし海外ベルトは、2026年3月期にセグメント利益が+36.2%と伸びた。利益の水準は国内が高く、伸び率は海外が高い。
建設資材は売上の7.3%にあたる事業だ。2026年3月期のセグメント利益は前期比△87.4%と落ち込んだ。2027年3月期第1四半期には損失に転じた。
理由として、決算短信は施工現場の人手不足と、中東情勢による資材不足による工事遅延を挙げている。
課題指摘と逆質問に使える。「建設資材の立て直し」と「海外の利益率を国内に近づける道筋」は、自分の貢献を語る入口になる。
1-4. 中計の最終年度と、上方修正された通期予想
2026年度(2027年3月期)は、中期経営計画の最終年度にあたる。28卒が入社する2028年4月は、次の計画が動いている時期だ。2030年度の「ありたい姿」まで、あと2年という位置になる。
2026年8月7日、会社は通期予想を上方修正した。売上高は970億円、営業利益は99億円とした。営業利益は5月時点で88億円だった。
2026年3月期の売上は922億円(+2.0%)で、営業利益は86億円(△2.8%)だった。
株主還元もKPIに入っている。純利益が減った期にも、年間配当を191円に増やした。配当性向、つまり利益のうち配当に回した割合は72.5%である。
逆質問に使える。「最終年度の達成見込みと、次の計画で重視する指標は何か」と聞ける。
1-5. 働く側の事実——人は海外に多く、利益は日本の本体が稼ぐ
連結従業員は4,568人で、うち海外ベルトが2,732人を占める。提出会社(単体)は780人しかいない。
その単体の平均年齢は41.0歳、平均勤続年数は17.1年だ。平均年間給与は約726万円で、前年度より1.4%増えている。
国内ベルトの利益は全社の大半を占める。少人数の日本本体が、その利益を支えている構図だ。
課題指摘と逆質問に使える。「日本本体が少人数で利益を支えているなら、若手に任される範囲はどこまでか」と聞ける。
第2章 ベルトメーカーの収益構造
2-1. 「動力を伝える」という、なくならない仕事
ベルトは、動力を伝える部品である。エンジンでもモーターでも、回転を別の場所に伝える必要がある。その方法は、ギア、チェーン、ベルトの3つだ。
ベルトの利点は、静かで、軽く、潤滑油が要らないことだ。だからEPSのように、静かさが求められる場所に使われる。
ここが日本特殊陶業との違いを生む。同社の主力のスパークプラグはエンジン専用で、EV化は需要減になる。三ツ星ベルトの伝動ベルトは、エンジンでもモーターでも使う。
同じ自動車部品でも、EV化の意味は正反対になる。
志望動機に使える。「自動車部品と一括りにせず、EV化の意味で会社を見分けた」と語れる。
2-2. 補修向けという、もう一つの需要
ベルトはゴム製の消耗品だ。使えば伸び、劣化すれば交換される。決算短信も、新車向けと並べて「補修向け」の販売を繰り返し書いている。
補修向けは、走っている車やバイクの台数に連動する。新車の生産が落ちても、すぐには減らない。
2026年3月期は、国内ベルトで補修向け純正品が減り、海外ベルトでは二輪車用変速ベルトを中心に補修向けが増えた。東南アジアやインドの二輪車市場は、日本より圧倒的に大きい。
逆質問に使える。「補修向けの比率はどの程度か。国内で減った要因は何か」と聞ける。
2-3. 国内と海外で利益率が違う理由は、まだ分からない
1-3で見たとおり、国内と海外の利益率には約3倍の差がある。決算短信は、その理由を直接書いていない。
書かれているのは製品の違いだ。国内は農業機械、ロボット、樹脂コンベヤベルトなど、産業機械向けの需要が伸びている。海外は二輪車用変速ベルトが中心だ。
この差が利益率の違いにどこまで効いているかは、資料だけでは断定できない。断定せず、会社に聞くべき論点として持っておく。
逆質問に使える。「国内と海外の利益率の差は、製品構成と市場のどちらが大きいか。海外の利益率を上げる施策は何か」と聞ける。
三ツ星ベルトの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(海外の利益率が上がらない/建設資材が赤字に転落した/配当性向72.5%という水準/資本が厚く、ROEが上がらない)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。電動化対応製品(EPS駆動用ベルト、電動二輪車向け後輪駆動用ベルト)が伸びており、EV化がこの会社にとって追い風になること。国内ベルトの利益率25.3%が海外ベルト8.8%の約3倍であること。ROEが9.3%から7.5%へ下がった理由が、前期の投資有価証券売却益の反動という一過性であること。そして配当性向72.5%という、本記事で扱った17社で最も高い株主還元。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ベルト業界の構造的課題——海外の利益率が上がらない/建設資材が赤字に転落した/配当性向72.5%という水準/資本が厚く、ROEが上がらない
- 第3.5章 面接前に押さえる三ツ星ベルトの最新ニュース10本——通期予想の上方修正、海外ベルトの利益+141.6%、建設資材の赤字転落まで
- 第4章 内定者の正体——「ものづくりを支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収7,256,000円の読み方と、連結4,568人・単体780人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続17.1年の読み方、女性役員比率18.2%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生