相模ゴム工業(5194)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、相模ゴム工業を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「本業1億8,000万円より為替4億8,800万円が大きい。ROE 2.5%を12.5%にする計画の算数」です。

有報の数字(第93期)

売上高
59億円
純利益
3億円
ROE
2.5%
従業員数(連結)
737人
従業員数(単体)
173人
平均年間給与(単体)
469万円
平均年齢
41.2歳
平均勤続年数
16.0年

出典:相模ゴム工業の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

相模ゴム工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、相模ゴム工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは相模ゴム工業の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、相模ゴム工業株式会社 有価証券報告書 第93期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

結論から言う。相模ゴム工業は、本業の利益が小さいまま、為替差益に支えられて黒字を保ち、利益率の大幅な改善に賭けている会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・本業より為替の利益が大きい。 2026年3月期の営業利益(本業で稼いだ利益)は1億8,000万円だった。経常利益(営業利益に為替などの損益を足した利益)には、為替差益(外貨を円に換算し直して出る利益)4億8,800万円が含まれる。
・会社は2030年3月期に売上80億円を目指している。 赤字の事業をやめ、利益率の高い商品に絞る計画だ。
・販売先がピップ1社に偏っている。 売上の44.7%がこの1社経由である。従業員737人の会社にとって、依存は大きい。

この記事では、会社が何に賭け、どこに弱みがあるのかを、有価証券報告書(有報)の数字で確かめる。

第1章 相模ゴム工業は何に賭けているのか

1-1. 中期経営計画が示す賭け——期限は2030年3月期

会社は2025年6月20日に、中期経営計画(2025〜2029年)を公表した。期限は2030年3月期である。

目標は、売上高80億円、営業利益10億円だ。

もう一つの目標が、ROE(株主から預かったお金で、どれだけ利益を出したかを示す割合)である。現在は2.5%で、目標は12.5%だ。

中計は賭けを4つに整理している。ウレタンコンドーム市場への集中投資、不採算事業の見直しと撤退、東南アジアと欧州での海外展開、ブランド価値を高める体制づくりだ。

中心は、ウレタンコンドームへの集中投資である。会社は「小さくても光る会社」を掲げ、規模の拡大は追わないと明言している。

面接での使い方

志望動機では、売上より利益率を上げる計画に関わりたいと語れる。逆質問では、ROEの目標に最も効く施策を聞ける。

1-2. 賭けは「やめる」ことで実行されている

この会社は、事業を足すのではなく、やめることで計画を進めている。

・介護サービス事業:2025年9月末に事業譲渡・閉鎖した。
・udon udon TOKYO:関連会社を解散・清算した。
・プラスチック製品事業:不採算品目を整理し、営業損失は8,400万円から3,500万円に縮んだ。

介護事業を含む「その他」の区分も、売上が大きく縮み、赤字幅は小さくなった。

中計は、課題に「組織の高齢化」「意思決定の遅さ」も挙げている。自社の弱みを公開資料に書く会社は、そう多くない。

ただし、やめられる事業には限りがある。整理の後に、売上をどう伸ばすのか。ここが最大の論点だ。

面接での使い方

課題指摘では、引き算の次の成長策が焦点だと言える。逆質問では、整理の後に成長を担う事業を聞ける。

1-3. 本業の利益は小さく、為替差益が大きい

為替差益は、本業の営業利益の2.7倍ある。マレーシアに製造拠点があり、外貨建ての資産・負債を持つためだ。円安なら差益が出て、円高なら差損になる。本業の実力で稼いだ利益ではない。

会社自身も、これを織り込んでいる。2027年3月期の計画は、営業利益3億8,000万円に対し、経常利益2億5,000万円だ。為替差益が出ない前提で、最終利益は大きく減る計画になっている。本業が伸びても、最終利益は減るということだ。

ROEが前期より下がった原因も、事業ではなく税金だ。税引前利益に対する法人税等の負担率は、56.9%に上がった。有報は、この負担率が上がった理由までは説明していない。

面接での使い方

経常利益の増加だけを褒めない学生は、差がつく。逆質問では、税負担率が上がった理由を聞ける。

1-4. ヘルスケア事業だけが黒字で、28卒は中計の終盤に入る

従業員737人のうち、ヘルスケア事業が645人、プラスチック製品事業が58人、全社が34人である。黒字なのはヘルスケア事業だけで、営業利益は7億6,200万円だ。

連結では、赤字部門と全社費用が引かれ、利益は小さくなる。中計が不採算事業の整理を掲げる理由が、ここにある。

ヘルスケア事業では、ラテックス製が価格改定後の需要減退から回復し、ポリウレタン製が越境ECで増収だった。一方、エネルギー価格の高止まりと円安で、マレーシア拠点の製造原価は上がっている。同じ円安が、為替差益では利益を押し上げ、製造原価では押し下げている。

28卒が入社する2028年4月は、中計の最終2年間にあたる。入社時点で目標が見えているかは、毎年の決算を追えば手前で分かる。創業100周年の2034年は、入社6年目だ。

面接での使い方

志望動機では、中計の最終2年を担う世代として入ると、時間軸で語れる。課題指摘では、赤字部門の整理に貢献したいと述べられる。

1-5. 売上の約半分が、ピップ1社に集中している

ピップ株式会社向けの販売は、総販売実績の44.7%を占める。前期は48.3%で、1年で下がった。

中計はECと現地パートナーシップを掲げ、越境ECで実際に増収になっている。依存を減らす方向と一致する。

有報のリスク項目に「販売先集中」という独立した見出しはないが、この数字は開示されている。だが、水準はまだ高い。この1社との関係が変われば、売上の4割強が動く。

面接での使い方

逆質問では、販売先の集中を今後どう解いていくのかを聞ける。課題指摘にも使える。

第2章 コンドーム・ヘルスケア用品業界の収益構造

2-1. ウレタンへのシフトが粗利率を押し上げる

主力は、ラテックス製(天然ゴム)とポリウレタン製(合成素材)の2つだ。会社が集中投資するのは、ポリウレタン製である。

売上総利益率(売上から原価を引いた利益の割合)は、高利益率のポリウレタン製へのシフトで26.5%に上がった。売上総利益の額も前期より増えている。素材の切り替えが、利益に効き始めている。

この業界では、うすさが技術であり、参入障壁になる。うすさだけで勝負するのではなく、何を足すかが問われている。中計は、うすさに「安心感」「楽しさ」「信頼感」を足すと掲げる。

面接での使い方

志望動機では、高付加価値商品で利益率を上げる戦略に共感したと語れる。逆質問では、ウレタン比率の目標を聞ける。

2-2. 販路と海外比率が収益構造を決める

製品は代理店などを通して売り、大部分は売れる量を見込んで先に作る。ECは、代理店を通さず消費者に直接届ける道だ。中計はEC売上比率を重要な指標に置く。

見込生産では在庫リスクをメーカーが負う。ECは粗利率の改善、価格決定権、顧客データの取得につながる。代理店任せの販売から、自社で顧客に触れる販売へ近づく動きだ。中計が課題に挙げる「情報発信・顧客接点の弱さ」への、直接の回答でもある。

海外売上比率の目標は40%である。現在の水準は、有報に書かれていない。

2027年3月期第1四半期は、輸出が伸びたが、国内の落ち込みがそれを上回った。40%は、海外を伸ばすだけでなく、国内が縮んでも近づく数字だ。

面接での使い方

海外を伸ばして40%にするのか、国内縮小を含めて40%になるのか、前提を決めて語れる。逆質問では、現在の海外比率を聞ける。

相模ゴム工業の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(国内市場の構造的縮小/為替と原材料——同じ円安が、逆向きに働く/ブランド価値の希薄化/組織の高齢化、意思決定の遅さ、そして販売先の集中)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高59億1,100万円に対し営業利益は1億8,000万円で、経常利益5億8,700万円の大半(4億8,800万円)が為替差益であること、ROEが3.8%から2.5%へ下がった原因は事業ではなく法人税等の負担率56.9%であること、中期経営計画2025〜2029は2030年3月期に売上80億円・営業利益10億円・営業利益率12.5%・海外売上比率40%・ROE 12.5%を掲げていること、その実行は買収ではなく介護事業の閉鎖・udon udon TOKYOの清算・不採算品目の整理という引き算で進んでいること、減価償却費7億2,100万円が営業利益の4.0倍で売上増が利益に増幅して効く装置産業であること、ピップ株式会社1社で売上の44.7%を占めること、そして2027年3月期は営業利益+112.8%を見込みながら最終利益は△78.7%という「本業が伸びても最終利益は減る計画」であること——相模ゴム工業の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 この業界の構造的課題——国内市場の構造的縮小/為替と原材料——同じ円安が、逆向きに働く/ブランド価値の希薄化/組織の高齢化、意思決定の遅さ、そして販売先の集中
  • 第3.5章 面接前に押さえる相模ゴム工業の最新ニュース10本——為替差益1億872万円・営業利益+112.8%計画・プラスチックの黒字転換まで
  • 第4章 内定者の正体——「サガミオリジナルが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収469万3,427円の読み方と、737人・2事業でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続16.0年の読み方、女性役員比率13.0%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 相模ゴム工業の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第93期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は469万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 相模ゴム工業の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第93期)では、提出会社(単体)が173人、連結が737人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 相模ゴム工業が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。