フジミ(5384)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、フジミを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「半導体研磨材で世界8割」です。
有報の数字(第74期)
- 売上高
- 694億円
- 純利益
- 91億円
- ROE
- 11.3%
- 従業員数(連結)
- 1,305人
- 従業員数(単体)
- 911人
- 平均年間給与(単体)
- 892万円
- 平均年齢
- 41.9歳
- 平均勤続年数
- 12.7年
出典:フジミの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
フジミインコーポレーテッドは、半導体の土台になる研磨材で世界シェア8割超とされる会社だ。いまは長く続けた無借金経営をやめ、大きな投資に踏み出している。
知っておきたいことは3つある。
1. 決算は過去最高だった。 2026年3月期の売上高は694億円、営業利益は138億円で、どちらも過去最高である。働く側の数字では、平均年間給与が892万円、平均年齢が41.9歳、連結従業員数が1,305名だ。
2. 初めて本格的に借入を始めた。 工場や研究所を建てるため、設備投資に222億円を使った。会社の資産のうち自己資本が占める割合(自己資本比率)は、83.7%から69.1%に下がった。
3. 中期計画の目標には届いていない。 売上高の目標770億円に対し、実績は694億円だった。会社自身が「未達」と書いている。
この記事では、これらの数字から「この会社は何に賭けていて、何が課題か」を確かめる。
第1章 フジミインコーポレーテッドは何に賭けているのか
1-1. 中期計画の目標を、会社は未達と認めている
フジミは2024年3月期から2029年3月期までの6年間の中期経営計画を持つ。有価証券報告書には、その目標と実績が並べて載っている。
重要指標は4つあり、すべて目標に届かなかった。売上高は目標770億円に対して694億円だった。
半導体以外の売上が全体に占める割合(非半導体売上構成比)は、目標20.0%に対して16.6%だった。ROE(株主のお金でどれだけ利益を出したかを示す指標)は、目標15.0%に対して11.3%だった。
未達の理由として、会社は「開発品の採用に時間を要した」と書いている。新製品を作っても、顧客が採用を決めるまでに時間がかかるということだ。
非半導体の比率を目標に置くのは、半導体市場の好不況の波を別の事業で埋めたいからだ。目指す姿は「研磨材メーカーからパウダー&サーフェスカンパニーへの進化」と書かれている。28卒が入社する2028年は、この計画の最終盤にあたる。
志望動機では「半導体以外へ広げる挑戦に関わりたい」と語れる。逆質問では「非半導体の採用に時間がかかった理由と、いまの打ち手」を聞ける。
1-2. 無借金をやめて、新工場と新研究所に賭けた
賭けの大きさは、貸借対照表に出ている。長期借入金は前期のゼロから大きく増え、自己資本比率は83.7%から69.1%に下がった。
使い道は、日本・米国・台湾での生産能力の増強である。2026年2月に竣工した各務山新工場(岐阜県各務原市)が中心だ。
投資は一度で終わらない。翌期の設備投資計画は162億円で、新研究所の建設費用も含まれる。売上694億円の会社としては重い数字だ。
理由は、顧客が先に動いているからだ。シリコンウェハーメーカーや半導体メーカーが増産投資を進めており、供給体制が遅れれば採用を逃す。
ただし、自己資本比率は69.1%で、会社は「高い健全性を確保している」と書く。借りすぎではなく、守りから攻めへ舵を切った段階と読める。
志望動機では「顧客の増産に先回りして投資する姿勢に惹かれた」と言える。逆質問では「新工場の稼働後、いつ頃から利益に表れる見通しか」を聞ける。
1-3. 過去最高なのに、純利益だけが減った
2026年3月期は売上と営業利益が過去最高だった。一方、純利益は90億円で前期比3.9%の減益だった。
理由は一時的な費用だ。税務調査の指摘にもとづき、過年度分の法人税等12億円を期末に計上した。これを除けば、実力ベースでは増益と読める。
見出しの「過去最高」だけで判断せず、減益の中身を確かめる。この読み方が、課題を指摘するときの土台になる。
課題指摘では「減益は一時的な税負担によるもので、本業は伸びている」と切り分けて話せる。決算短信の本文まで読んだ証拠にもなる。
1-4. 稼ぎの柱は、先端半導体向けのCMP製品
事業の中身を見ると、売上の柱は2つある。1つ目はCMP製品で、売上は361億円(前期比+17.9%)、構成比は52%だ。
CMPとは、チップの配線の層を1層ずつ削って平らにする工程だ。回路が多層になるほど、この工程の回数は増える。
2つ目はシリコンウェハー向けで、売上は210億円(同+3.1%)、構成比は30%だ。冒頭の「世界シェア8割超」は、この仕上げ磨きの領域の話である。
成長を引っ張ったのはCMPだった。一方、ハードディスク基板向けは前期比で12.1%減っており、縮む事業も抱えている。
志望動機では「先端半導体の増産とともに伸びる事業に関わりたい」と語れる。逆質問では「CMPの次の柱をどう育てるか」を聞ける。
1-5. 配当は減らさないと約束した
巨額の投資をしながら、会社は株主への配当を減らさない姿勢を示している。中期計画の期間中は、配当を維持するか増やす「累進配当」を方針に加えた。
あわせて、利益のうち配当に回す割合(配当性向)を55%以上とする目標も掲げる。投資と還元を両立させるという会社自身の宣言だ。
逆質問で「設備投資を重視する時期に、累進配当を約束した考え方」を聞ける。数字を読んだうえでの質問だと伝わる。
第2章 業界比較——信越化学・扶桑化学と並べて見える立ち位置
2-1. 規模は小さいが、成長と収益で見劣りしない
比較相手は2社だ。信越化学工業は、シリコンウェハー世界首位でフジミの重要顧客でもある。扶桑化学工業は、CMPスラリーの原料で強い同じ半導体材料のニッチトップだ。
売上高は信越化学が2兆5,739億円、扶桑化学が769億円、フジミが694億円である。信越化学とは規模に37倍の差がある。
それでも、本業の儲けを示す営業利益率はフジミが19.9%で、信越化学の24.7%、扶桑化学の24.5%に近い水準だ。フジミ自身も中期計画でEBITDAマージン(減価償却前の利益率)26%を目標にしており、伸びしろは残っている。
志望動機では「規模が小さい分、一人の仕事が会社の成長に直結する」と語れる。逆質問では「利益率で先行する2社との差をどう縮めるか」を聞ける。
2-2. 半導体材料に絞った会社は、需要の波に乗りやすい
同じ年、信越化学は塩ビ市況の悪化で営業減益だった。フジミと扶桑化学は売上が1割以上伸び、利益も増えた。
総合化学は市況に左右されるが、半導体材料に絞ったニッチトップは先端需要の波に乗りやすい。裏を返せば、半導体の好不況の影響も大きく受ける。
だからこそ、自己資本比率が高いことが不況期の備えになる。フジミの69.1%は前期より下がったが、新しい建物と設備を持つための意図的な投資の結果だ。
「競合と比べてどう見るか」と聞かれたら、この比較で答えられる。課題指摘では「半導体の波への強さと弱さの両方」を語れる。
フジミの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 追い風——AIが磨く回数を増やす/### 課題1——シリコンウェハーの「二極化」/### 課題2——シリコンサイクルという宿命/### 課題3——巨額投資の回収という宿題/### 課題4——地政学と生産体制)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
売上・営業利益・経常利益がそろって過去最高、それでも最終減益。自己資本比率を83.7%から69.1%へ沈めてまで打った過去最高の設備投資222億円と、それでも導入した累進配当。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
——ここまでが無料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 半導体材料業界の構造的課題と追い風——### 追い風——AIが磨く回数を増やす/### 課題1——シリコンウェハーの「二極化」/### 課題2——シリコンサイクルという宿命/### 課題3——巨額投資の回収という宿題/### 課題4——地政学と生産体制
- ◆ 第3.5章 押さえておくべきフジミ最新ニュース10本(面接直前の総点検用) ◆ 第4章 内定者の正体——選考プロセスとES・面接攻略 ◆ 第5章 職種別キャリア分析——年収カーブと市場価値 ◆ 第6章 働く環境の現実——有報の定量データで見る ◆ 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例と逆質問 ◆ 第8章 やましゃんの総合評価