ディスコ(6146)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、ディスコを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益率42.3%」です。

有報の数字(第87期)

売上高
4,369億円
純利益
1,355億円
ROE
25.1%
従業員数(連結)
5,547人
従業員数(単体)
3,687人
平均年間給与(単体)
1,880万円
平均年齢
37.2歳
平均勤続年数
10.6年

出典:ディスコの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

ディスコを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ディスコに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはディスコの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

結論から言う。ディスコは「切る・削る・磨く」の装置に絞り、自前の工場と技術で高い利益を出す会社だ。

知っておきたいことは3つある。

半導体製造装置は、東京エレクトロンやASMLだけではない。ディスコは、半導体の元になる円盤(ウェハ)をチップに切り分けるダイシング装置など、「後工程」の精密加工装置で世界の過半を握る。

2026年3月期の売上高は4,368億円、営業利益は1,849億円だった。営業利益率(売上のうち本業で残った利益の割合)は42.3%で、6期連続で売上高が過去最高になった。平均年収は1,700万円超である。

目標は単年ではなく「4年累計」で置く。半導体には好不況の波(シリコンサイクル)があるためだ。この置き方に、会社の考え方が出ている。

この記事では、会社が自分で決めた目標と実績、買収に頼らない成長の作り方、業界での立ち位置を確かめ、面接で語れる論点にする。

第1章 ディスコは何に賭けているのか

1-1. 目標を「4年累計」で置く会社

有価証券報告書(上場企業が毎年出す事業の報告書。以下、有報)には、中長期の経営指標が2つだけ書かれている。どちらも4年累計で測る。

理由は、半導体業界に好不況の波「シリコンサイクル」があるからだ。有報は、単年よりも「的確に会社の成長を計ることができる」と説明する。

1つ目は、4年累計の連結経常利益率20%以上。経常利益率とは、売上のうち通常の事業活動で残った利益の割合だ。この目標は10期連続で達成している。

2つ目は、4年累計RORA(ローラ)20%以上。在庫や設備など現金にしにくい資産が、どれだけ利益を生んだかを見る指標だ。実績は51.2%で、目標の2.5倍を超えた。

単年のROE(株主のお金でどれだけ稼いだかを示す指標)は25.1%で、前期の27.6%から下がった。一方、RORAは前期より0.4ポイント上がった。単年では減速、4年では改善という見え方になる。

面接での使い方

逆質問に使える。「4年累計で目標を置くのは、シリコンサイクルへの備えと理解しています。現在の達成状況を、現場ではどう意識していますか」と聞ける。

1-2. 「Fab Important戦略」——買わずに自分で作る

ディスコの賭け先は買収ではない。有報にM&A(他社の買収)の記述は出てこない。代わりに掲げるのが「Fab Important戦略」だ。Fabは半導体業界で工場を指す。「つくる力」を競争力の本質と捉え、装置を自社の工場で作る。

事業の範囲も絞っている。ビジネステーマは「切る」「削る」「磨く」で、この3つの領域から「逸脱することなく」と書く。多くの会社が隣の領域へ広がるのとは逆の選択だ。

営業の手法も独特である。「テストカット」と呼ぶ無償の加工検証で、顧客の材料を実際に切って結果を返す。顧客から「まずディスコに相談してみよう」と思われる存在になるための、経営戦略の柱だと有報は述べる。

投資も自前志向だ。資産が増えた理由に、製造用の土地建物などへの設備投資が挙がる。社内では、仕事のやり取りに値段をつける独自の管理会計「Will会計」も使う。

面接での使い方

逆質問に使える。「テストカットで蓄積されるのは、加工のデータですか、顧客との関係ですか」と聞ける。志望動機では、買収でなく自前で伸ばす姿勢への共感を語れる。

1-3. エンジニアは「時間をかけて育成する」しかない

人材方針に、この会社の技術の性質が表れている。有報は、この技術を熟知するエンジニアは採用市場で稀なので「時間をかけて技術者を育成する必要があります」と書く。外から採れないから、中で育てる。

開発・製造・営業の「垣根を超えた連携」も強調されている。テストカットなら、営業が材料を預かり、製造が切り、開発が結果を読む。1件の依頼で3部門が動く。

会社は、2030年度末の到達点を示す「DISCO VISION 2030」を定めている。到達度は顧客・取引先・従業員の満足度調査でも確認する。28卒が入社する2028年は、その2年前にあたる。

面接での使い方

志望動機に使える。「採用市場にいない技術者を、時間をかけて育てる会社で腰を据えて学びたい」と語れる。2030年までの2年に何を担いたいかも話せる。

1-4. ROEが下がった理由と、来期の見通し

2026年3月期は、売上高が前期比11.1%増、営業利益が10.9%増だった。営業利益率は前期とほぼ同じ水準を保っている。

それでもROEは下がった。稼げなくなったからではない。自己資本比率(総資産のうち返す必要のない自己資金の割合)が78.9%と、前期末から3.8ポイント上がったためだ。実質無借金で、利益が積み上がるほどROEは下がりやすい。

会社は株主還元の基本方針を「配当による還元」に置く。配当は505円で、前期の413円から増えた。

先行きは、2027年3月期の第1四半期(期の最初の3か月)予想が示す。売上高は1,061億円(前年同期比+18.0%)、営業利益は420億円だ。通期予想は未定である。

面接での使い方

課題指摘と逆質問に使える。「ROEの低下は自己資本の厚みによる、と理解しています。積み上がった資金を今後どう使う考えですか」と聞ける。

1-5. 弱点は「景気の波」と「米中対立」

ディスコの主なリスクは2つある。1つ目はシリコンサイクルだ。周期は2〜3年とされ、設備投資の波が装置の受注に直結する。直近は生成AI向けの需要で好調だが、反転すれば受注が急に減るおそれが残る。

2つ目は地政学だ。主要顧客に、台湾のTSMC、韓国のSamsung、Micron、中国の半導体メーカーが含まれる。米国の対中輸出規制が広がれば、中国向けの売上に打撃が出る可能性がある。

加えて、レーザー加工や新材料への対応で、技術の先頭を保つ必要もある。

面接での使い方

課題指摘に使える。「受注が落ちる局面で、自分は何で貢献できるか」を、この2つのリスクに結びつけて語れる。

第2章 業界比較——半導体製造装置のなかでの「後工程の覇者」

2-1. 半導体製造装置の地図

半導体づくりは、前工程と後工程に分かれる。前工程は回路を作る工程、後工程はウェハをチップに切り分けて組み立てる工程だ。

前工程の主役は、露光のASML、成膜・エッチング・洗浄の東京エレクトロンとSCREENホールディングス、検査のレーザーテックである。後工程では、ディスコが切る・削る・磨くを担い、アドバンテストがテスタ(検査機)を担う。

ディスコはダイシング装置で世界シェア約80%を持つ。ウェハを薄く削るグラインディング装置、鏡面に磨くポリッシング装置でもトップだ。セグメントは精密加工装置事業の1つだけである。

面接での使い方

志望動機に使える。「前工程ではなく、後工程の精密加工に絞った会社だから選んだ」と、業界の地図の上で説明できる。

2-2. ディスコの独自ポジション

強みは3つある。1つ目は、ニッチ分野での事実上の独占だ。新規参入の壁が高い。

2つ目は消耗品である。ダイシング用のブレード(刃)やグラインディング用のホイールが継続的に売れ、装置販売の波を補う。

3つ目は、HBM(生成AI向けに使われる高速なメモリ)への接続だ。HBMや先端ロジックの積み重ね構造には、精密加工の技術が欠かせない。人事面では、社内通貨の考え方で自分の付加価値を見える化する「Will」制度が独自である。

面接での使い方

志望動機と逆質問に使える。「HBMの加工で、いま最も難しい点は何ですか」と聞ける。

2-3. 「なぜディスコなのか」を語る軸

「東京エレクトロンでも、SCREENでも、レーザーテックでもなく、なぜディスコか」と聞かれたときの軸は2つ考えられる。1つ目は、規模の競争でなく専門を深める会社だという点だ。2つ目は、営業利益率42.3%という高い収益力と、Will制度に表れる独自の文化である。

ディスコは、前工程と後工程の境目にあたる「切る」「削る」工程で、圧倒的なシェアを握る。この立ち位置が、他社との違いを語る土台になる。

住み分けも押さえたい。前工程の主役を担いたいなら東京エレクトロン、洗浄装置中心ならSCREEN、EUVマスク検査の世界独占ならレーザーテック、という整理になる。

面接での使い方

志望動機に使える。他社との違いを自分の言葉で比べたうえで、ディスコを選ぶ理由を語る。

ディスコの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(生成AI・HBM需要の継続/先端パッケージ技術(3D実装・チップレット)の拡大/米中半導体覇権争いと地政学リスク/シリコンサイクルと中長期トレンド)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上4,369億円に対し営業利益1,849億円、営業利益率42.3%。自己資本比率78.9%で実質無借金、6期連続最高益、配当は413円→505円日本の上場製造業で片手に数えるほどしか出せない収益性です。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。

  • 第3章 業界の構造的課題と追い風——生成AI・HBM需要の継続/先端パッケージ技術(3D実装・チップレット)の拡大/米中半導体覇権争いと地政学リスク/シリコンサイクルと中長期トレンド
  • 第3.5章 面接前に押さえるディスコ最新ニュース10本——投資CF△1,358億円へ倍増・HBM向けTSV/薄ウェハ加工・Will制度とKIRI(社内通貨)・富士の研修施設DISCO Hi-Tecまで、全10本に面接活用ポイント付き
  • 第4章 内定者の正体——年間100〜150名規模の採用区分と、前工程・後工程の区別がつかず落ちる理由、技術系総合職のES回答テンプレと逆質問レベル1〜3
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収約1,700万円の中身(新卒1年目500〜600万円→30歳前後900〜1,200万円→部長級2,500万円〜)と、業績連動賞与で年収が動く構造、セカンドキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——連結約7,000人・平均年齢約40歳の組織像、Will制度の仕組みと「合う人/合わない人」、業績連動賞与と離職率の関係
  • 第7章 面接攻略——営業利益率42.3%と消耗品リカーリングを組み込んだ志望動機、シリコンサイクル・地政学・技術代替を挙げる課題回答、逆質問5本
  • 第8章 やましゃんの総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. ディスコの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第87期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,880万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. ディスコの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第87期)では、提出会社(単体)が3,687人、連結が5,547人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. ディスコが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。