コマツ(6301)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、コマツを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「1.5兆円の債権を249人で」です。
有報の数字(第157期)
- 売上高
- 4兆1,328億円
- 純利益
- 3,764億円
- ROE
- 11.3%
- 従業員数(連結)
- 67,279人
- 従業員数(単体)
- 12,435人
- 平均年間給与(単体)
- 902万円
- 平均年齢
- 41.7歳
- 平均勤続年数
- 17.1年
出典:コマツの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
コマツを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、コマツに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはコマツの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社小松製作所 有価証券報告書 第157期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月29日公表)に基づきます。
コマツは建設機械の会社であると同時に、約1.5兆円の債権を持つ金融会社でもある。この二面性を語れるかどうかが、面接の分かれ目になる。
知っておきたいことは3つある。
会社は「3年で稼ぐ現金」と「ROE」の目標を自分で掲げ、現場の自動化、売った後の事業、金融に賭けている。
直近の決算は、売上がほぼ横ばいで営業利益が13.7%減った。理由は米国の関税とコスト増だ。
建設機械の利益は、新車だけでなく、売った後の部品・修理・金融からも生まれる。
この記事では、会社の賭け、減益の理由、利益の出どころの3点を確かめる。
第1章 コマツは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——3年で稼ぐ現金1兆円
コマツは2025年4月から、2028年3月期までの中期経営計画(会社が3年先までの目標を決めた計画)を進めている。ありたい姿は「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」だ。機械メーカーが自分を「パートナー」と呼んでいる。
目標は2つある。1つ目は、フリーキャッシュフロー(稼いだ現金から投資を引いた、自由に使える現金)を3年累計で1兆円にすること。初年度の実績は2,632億円だった。2つ目は、ROE(株主のお金でどれだけ利益を出したかを示す率)を10%以上にすることだ。
賭けの先は3つある。1つ目は現場の自動化で、鉱山向け無人ダンプトラックの運行システムは累計1,016台が導入された。2つ目は売った後で稼ぐ領域で、使い終わった部品の再生などを指す。3つ目は金融で、機械を買う顧客の分割払いやリースを担う。
志望動機で「機械の性能ではなく現場全体の効率で勝負する点に共感した」と語れる。逆質問では「3年1兆円の達成見通し」を聞ける。
1-2. 賭けの実行証拠——買収2件と研究開発費1,212億円
言葉だけでなく、実行も確認できる。2026年2月に米国の部品再生事業を買収し、2026年4月にはスウェーデンの林業機械メーカーの買収を完了した。どちらも、すでに持つ領域を一段広げる買収だ。
研究開発費は約1,212億円で、前期比9.7%増えた。営業利益が減った年でも増やしている。自動運転ではティアフォー社と組み、2027年度までの実用化を目指す。会社は資金方針に「将来のM&Aへの備え」と明記しており、買収は続く可能性がある。
志望動機で「減益の年も研究開発を増やす姿勢」を根拠にできる。逆質問では「次に広げたい領域はどこか」を聞ける。
1-3. 減益の年——目標との差と、答え合わせの時期
直近の第157期(2026年3月期)は、売上が前期とほぼ同じだった。営業利益は5,673億円で、13.7%減った。会社は理由に、米国関税の影響などによるコスト増を挙げる。値上げはしたが、コスト増と販売量の減少に追いつかなかった。
ROEは14.2%から11.3%に下がった。目標の10%以上は上回るが、差は小さくなっている。
中期経営計画は2028年3月までだ。28卒が入社する2028年4月は、3年間の答え合わせが終わり、次の計画が始まる月にあたる。1兆円の目標には、残り2年で約7,400億円が要る。
課題指摘で「関税に左右される利益をどう安定させるか」を論点にできる。逆質問では「残り2年で目標に届く見通し」を聞ける。
1-4. 利益はどこに頼っているか——建機、米州、そして249人の金融
セグメント(事業の区分)別の利益で見ると、建設機械・車両が約87%を占める。ただし建機の利益が減った年に、金融と産業機械は2桁の増益だった。主力と逆方向に動く事業が2つある。
地域では、米州(北米と中南米)が建機売上の48%を占める。だから米国の関税が損益に直結する。一方、アジア(日本・中国を除く)は32.9%減った。インドネシアで石炭価格が低調だったため、鉱山機械の需要が落ちた。
金融事業は、顧客への分割払いなどの債権を約1.5兆円持つ。総資産の約23%にあたる。それを担う連結従業員は249人だ。
課題指摘で「米州と関税への依存」を挙げられる。逆質問では「金融事業のリスク管理と人員体制」を聞ける。
1-5. 働く側の事実——従業員は5期連続で増えた
従業員は連結で6万7,279人で、前期より582人増えた。5期連続の増加で、減益の年も採用を止めていない。
提出会社(単体)の平均年齢は41.7歳、平均勤続年数は17.1年。平均年間給与は902万円で、前期比5.0%増えた。利益が減った年に、給与は上がっている。
志望動機で「減益でも人と給与に投資する会社」と根拠を示せる。逆質問では「採用が増える中で、若手に期待する役割」を聞ける。
第2章 建設機械という産業の収益構造
2-1. 新車は入口、利益は機械の一生から取る
建設機械は、売って終わりの商品ではない。1台は10年以上動き、その間に部品交換や修理が何度も発生する。メーカーの利益は、この「機械の一生」でどれだけ自社の部品とサービスを使ってもらえるかで決まる。
コマツは、機械の稼働を遠隔で把握するシステム(KOMTRAX)で、世界の82万7,286台を見ている。部品の交換時期を先回りできる。第1章の部品再生事業の買収も、この延長線にある。
志望動機で「新車以外で稼ぐ仕組みに魅力を感じた」と語れる。逆質問では「売った後の事業をどう伸ばすか」を聞ける。
2-2. 金融を内蔵する製造業——債権が増えると資産も増える
建機は1台数千万円から数億円する。買う側は、一括で払えるとは限らない。メーカーが分割払いやリースを用意すれば、顧客は買いやすくなり、メーカーは金利収入も得る。
ただし副作用もある。機械が売れるほど債権が増え、資産が膨らむ。当期は金融事業の資産が2,383億円増えた。売上が伸びずに資産だけ増えると、ROEを押し下げる一因になる。
課題指摘で「金融の資産が増える中での利益率」を論点にできる。逆質問では「債権を増やしすぎないための歯止め」を聞ける。
2-3. 鉱山と建設は波が違い、関税が損益を動かす
需要は2種類ある。一般の建設機械は住宅やインフラ投資で動き、先進国では景気の波そのものだ。鉱山機械は資源価格で動く。銅が高ければチリの鉱山が買い、石炭が安ければインドネシアは買い控える。
実際に、2026年4〜6月は地域ごとに差が出た。北米は29.5%増、アジアは29.6%減だった。同じ3カ月で、伸びる地域と落ちる地域が入り混じる。
関税も損益を動かす。2027年3月期の営業利益予想は、一部の関税率の変更を受けて、5,080億円から5,550億円に上方修正された。
課題指摘で「資源価格と関税に左右される収益」を挙げられる。逆質問では「地域分散で振れをどう抑えるか」を聞ける。
コマツの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(原価率69.5%——値上げしても追いつかなかった/日本市場の縮小——国内売上△2.8%、第1四半期は△12.0%/資源価格という外部要因——アジア△32.9%、中近東△54.6%/投資の重さ——研究開発1,212億円、設備投資1,830億円、そして人)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上4兆1,328億円で営業利益は△13.7%、ROE14.2%→11.3%で動いたのは純利益率と回転率、FCF3年1兆円の初年度は2,632億円、1.5兆円の債権を249人で扱い、米州で建機売上の48%。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 コマツが抱える構造的課題——原価率69.5%——値上げしても追いつかなかった/日本市場の縮小——国内売上△2.8%、第1四半期は△12.0%/資源価格という外部要因——アジア△32.9%、中近東△54.6%/投資の重さ——研究開発1,212億円、設備投資1,830億円、そして人
- 第3.5章 面接前に押さえるコマツの最新ニュース10本——第1四半期の営業利益+8.0%、通期予想5,550億円への上方修正、無人ダンプ1,060台まで
- 第4章 内定者の正体——「ものづくりで世界を支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収902万4,576円の読み方と、連結67,279人・単体12,435人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続17.1年の読み方、女性役員比率28.6%と女性管理職9.2%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生