日立建機(6305)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、日立建機を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「日立が株主でなくなった」です。

有報の数字(第62期)

売上高
1兆4,055億円
純利益
732億円
ROE
8.6%
従業員数(連結)
25,304人
従業員数(単体)
5,926人
平均年間給与(単体)
774万円
平均年齢
41.1歳
平均勤続年数
15.2年

出典:日立建機の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

日立建機を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、日立建機に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは日立建機の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、日立建機株式会社 有価証券報告書 第62期(2025年4月1日-2026年3月31日、IFRS)、主要株主の異動の予定に関するお知らせおよび自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(いずれも2026年8月19日公表)に基づきます。

日立建機は、日立の資本と名前を手放し、「ランドクロス」として自立する道に踏み出している。

知っておきたいことは3つある。

2026年8月19日、日立製作所が保有株をすべて売却した。議決権比率は10.1%あったが、資本の関係は終わった。

同じ日、日立建機は上限340億円の自己株式取得を決めた。会社が自社の株を市場で買い戻すことだ。

2027年4月に社名が変わる予定だ。28卒が入社する2028年4月に、「日立建機」という社名の会社はない。

この記事では、この「自立への賭け」が数字にどう出ているかと、事業の構造を確かめる。

第1章 日立建機は何に賭けているのか

1-1. 賭けの名前は「LANDCROS」

日立建機は、建設機械とマイニング(鉱山)機械のメーカーだ。新しいコーポレートブランドは「LANDCROS(ランドクロス)」である。

有報によると、2027年4月にランドクロス株式会社へ社名を変える予定だ。2026年度に始まる新中期経営計画「LANDCROS 2028」は、「新たな船出を成功させる3年間」と位置づけられている。「日立」の2文字が、会社の名前から消える。

面接での使い方

志望動機では「社名まで変える3年間に、入社して関わりたい」と言える。逆質問では「LANDCROS 2028の3年間で、最初に変わることは何か」と聞ける。

1-2. 日立が株主でなくなった

2026年8月19日、日立製作所が日立建機株の全数を売却した。売却前の議決権比率は10.1%だった。

会社は、背景を「自主自立経営のさらなる推進」と、個人を含む株主の裾野の拡大だと説明している。ただし関係が切れるわけではない。日立は「事業上の重要なパートナー」であり、デジタル技術、自律運転技術、電動化、部品供給の協力は続く。

資本の関係は終わり、事業の関係は続く。社名変更は、その約8か月後だ。

面接での使い方

志望動機では「自立経営に踏み出す局面で働きたい」と語れる。逆質問では「資本が切れた後、日立との協力はどう変わるか」と聞ける。

1-3. 同じ日に決めた340億円の自己株式取得

日立の売却と同じ2026年8月19日、取締役会は自己株式取得を決議した。上限は340億円で、期間は2026年11月30日までだ。市場での買付で行う。

目的は3つ書かれている。売却による株の需給への短期的な影響を和らげること、株主還元の強化、そしてROE及び資本効率の改善だ。ROEとは、株主から預かった資金でどれだけ利益を出したかを示す比率である。

第62期のROEは8.6%で、前期の10.4%から下がった。借入を返して自己資本が厚くなり、財務は健全になった。その分、資金の使い方の効率が課題になっている。

面接での使い方

課題指摘では「財務は健全になったが、ROEは下がった」と整理できる。逆質問では「ROEは何%を目指しているか」と聞ける。

1-4. 増収なのに営業利益が減った

第62期の売上収益は1兆4,054億円で、前期比2.5%増だった。しかし営業利益(本業のもうけ)は1,301億円で、15.9%減った。

理由は原価にある。売上原価が売上より速く増え、売上に対する原価の比率は68.7%から70.3%へ上がった。販売費及び一般管理費は小幅な増加にとどまっている。

一方で、税引前の利益の減少幅は営業利益より小さかった。借入を返して支払利息が減り、為替差損益も改善したためだ。

面接での使い方

課題指摘では「増収でも原価の上昇で利益が減った。原価を抑える仕事で貢献したい」と言える。逆質問では「原価率の上昇の主因は何か」と聞ける。

1-5. 縮む市場で売上を伸ばした

有報は、前中期経営計画の3年間(2023〜2025年度)を「厳しい市場環境」と書く。油圧ショベルの世界需要が、25万台から23万4千台へ6%減ったためだ。

その中で会社は、米州の独自展開を中心に売上を伸ばした。部品・サービス事業でも成果を積み、インドには開発・設計センターを設立した。市場が縮んでも、伸ばす場所を持っている会社だ。

面接での使い方

志望動機では「縮む市場でも売上を伸ばした点に魅力を感じた」と語れる。逆質問では「米州の次に伸ばす地域はどこか」と聞ける。

第2章 建設機械という事業の構造

2-1. 売った後に稼ぐバリューチェーン

建設機械は、売って終わりではない。現場で長く動き、部品がすり減り、整備が要る。会社は、この「売った後」まで含めた事業を「バリューチェーン」と呼ぶ。

象徴が「ConSite」だ。機械の稼働状況を遠隔で見守るサービスで、稼働データの解析にも広がっている。

売上は2つの事業に分かれる。建設機械ビジネスは1兆2,685億円で、売上の90.3%を占める。伸びは2%だった。

スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスは、マイニング機械の部品とサービスの事業だ。規模は1,369億円と小さいが、8%伸びた。売った後の事業が速く伸びていると読める。

面接での使い方

志望動機では「売った後の事業が伸びている点に惹かれた」と言える。逆質問では「稼働データを、次にどんな収益に変えるか」と聞ける。

2-2. 電動化と日立との協力

前中計の成果として、有報はフル電動ダンプトラックの実証試験の成功を挙げている。商用化は2027年度の予定だ。マイニングで使うダンプトラックは巨大で、燃料の消費も大きい。

日立とは、デジタル技術、自律運転技術、電動化、部品供給で協力が続く。28卒が入社する2028年度は、商用化の翌年にあたる。

面接での使い方

志望動機では「電動化が立ち上がる時期に入社したい」と語れる。逆質問では「商用化後の課題は何か」と聞ける。

2-3. 働く人の数と処遇

連結の従業員は25,304人。単体の5,926人は、全員が建設機械ビジネスに属する。スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスの3,597人は、すべて子会社にいる。マイニング機械の売った後を担うため、鉱山のある地域に人がいることになる。

単体の平均年間給与は774万円で、前年度とほぼ横ばいだ。平均年齢は41.1歳、平均勤続年数は15.2年である。営業利益が減った年のため、処遇に反映されていないと読める。女性役員比率は7.4%だ。

面接での使い方

逆質問では「海外子会社を含め、人材をどう育てるか」「女性役員比率をどう高めるか」と聞ける。

日立建機の構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(原価率が1.6ポイント上がった/ROEの分母が厚くなり続けている/社名変更という不確実性/市場が縮むなかでの成長/平均年収774万円と、伸び率ほぼゼロ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。2026年8月19日に日立製作所が保有株21,462,310株(議決権比率10.1%)の全数を売却し、株主でなくなったこと。同じ日に、その売却数の約3割にあたる340億円の自己株式取得を決議し、理由に「ROE及び資本効率の改善」が挙げられていること。2027年4月に「ランドクロス株式会社」へ社名変更が予定され、新中計が「LANDCROS 2028」であること。油圧ショベルの世界需要が3年で6%縮むなかで、売上は2.5%増えたが原価率が1.6ポイント上がり営業利益は15.9%減ったこと。そしてROEが5期で13.5%から8.6%へ下がった要因が、利益率の低下と財務レバレッジの低下にあること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 日立建機が抱える構造的課題——原価率が1.6ポイント上がった/ROEの分母が厚くなり続けている/社名変更という不確実性/市場が縮むなかでの成長/平均年収774万円と、伸び率ほぼゼロ
  • 第3.5章 面接前に押さえる日立建機の最新ニュース10本——日立の全株売却、340億円の自己株式取得、社名変更、フル電動ダンプまで
  • 第4章 内定者の正体——「日立グループの技術力に惹かれました」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収774万円の読み方と、連結25,304人・単体5,926人という組織
  • 第6章 働く環境の現実——平均年齢41.1歳・勤続15.2年の読み方、女性役員比率7.4%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型、課題回答2パターン、逆質問7本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 日立建機の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第62期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は774万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 日立建機の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第62期)では、提出会社(単体)が5,926人、連結が25,304人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 日立建機が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。