栗田工業(6370)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、栗田工業を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「平均年収1,001万円」です。
有報の数字(第90期)
- 売上高
- 4,029億円
- 純利益
- 160億円
- ROE
- 4.7%
- 従業員数(連結)
- 8,268人
- 従業員数(単体)
- 1,677人
- 平均年間給与(単体)
- 1,002万円
- 平均年齢
- 43.3歳
- 平均勤続年数
- 16.0年
出典:栗田工業の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
栗田工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、栗田工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは栗田工業の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、栗田工業株式会社 有価証券報告書 第90期(2025年4月1日-2026年3月31日、IFRS)、および2027年3月期第1四半期決算補足資料(2026年8月6日公表)に基づきます。
結論から言う。栗田工業は半導体向けの水処理に賭けている。ただし直近の利益は、米国子会社の損失で大きく押し下げられた。
知っておきたいことは3つある。
給与水準。提出会社の平均年間給与は約1,002万円で、前年比+7.5%だ。平均年齢は43.3歳、平均勤続年数は16.0年である。
利益のねじれ。税引前利益は過去最高なのに、当期利益は21.4%減った。原因は、売却が決まった米国子会社の損失である。
目標との距離。中期経営計画の目標はROE12%以上で、実績は4.7%だ。ROEとは、株主の資金でどれだけ利益を出したかを示す割合である。
この記事では、会社が何に賭けているか(第1章)と、水処理がどんな事業でできているか(第2章)を確かめる。
第1章 栗田工業は何に賭けているのか
1-1. 会社が掲げる賭け——「水の新たな価値」の開拓者
2023年度に、企業ビジョンが「持続可能な社会の実現に貢献する『水の新たな価値』の開拓者」に改められた。有報は、経営の中心にある考え方を「CSR」から「サステナビリティ」に広げたと書いている。社会貢献の枠から、事業そのものの枠に広げたということである。
価値創造は「現場→知→予測→価値→収益→さらなる現場」という循環で語られる。会社はこれをCSV(顧客と社会の共通価値の創造)と呼ぶ。水処理は現場ごとに条件が違うため、現場で得た知を次の提案に使う仕組みが強みの土台になる。
志望動機に使える。「現場の知を積み上げて価値を予測する」という会社の型に、自分の経験をどう重ねるかを語れる。
1-2. 中期経営計画PSV-27——目標と現在地
2023年4月から、5カ年の中期経営計画PSV-27が動いている。2027年度の目標は、売上4,700億円、売上高事業利益率16%、ROE12%以上の3つだ。事業利益とは、売上から原価と販管費を引いた本業の利益で、会社が独自に作った指標である。
第90期の現在地は、売上収益が4,028億円、事業利益率が14.2%だ。どちらも目標に届いていない。
差が最も大きいのはROEである。実績4.7%に対し、目標は12%以上だ。
逆質問に使える。「ROEの目標との差を、2027年度までにどの事業で埋める計画か」と、会社自身が決めた目標を軸に聞ける。
1-3. 当期利益が21.4%減った理由——米国子会社の売却
税引前利益は増え、当期利益だけが減った。差を生んだのは、米国子会社のペンタゴン・テクノロジーズ・グループである。有報はこの事業を「非継続事業」に分類した。非継続事業とは、売却や廃止が決まった事業で、本業の損益から切り離して表示される。
売却に向けた公正価値の測定で、約199億円の損失が出た。非継続事業そのものの税引前損失も、約218億円ある。この二つが、当期利益を押し下げた。
前期6.1%だったROEが4.7%に下がったのも、同じ損失が主因と読める。
課題指摘に使える。「減益」で止めず、一過性の損失と、増益が続く本業を分けて話せば、数字を読める学生として扱われる。
1-4. 半導体向けの受注が積み上がっている
受注残高とは、注文を受けたがまだ売上になっていない分だ。栗田工業の受注残高は前期比+28.1%と増えている。電子市場では+41.6%で、背景は半導体工場の増強投資による複数の大型案件である。半導体工場は、不純物を極限まで取り除いた「超純水」を大量に使う。
2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)は、さらに伸びた。受注高は1,657億円で、前年同期から77.2%増えている。
通期の当期利益予想は507億円で、前期の約3倍にあたる。
志望動機で「半導体向けの受注増に会社が賭けている」と言える。逆質問では、積み上がった受注を売上と利益にどう変えていくかを聞ける。
1-5. 次の柱を探す新規事業
中期経営計画の先を見据えた新規事業が、有報に具体名で書かれている。一つ目はPFASの除去・処理である。PFASは分解されにくい有機フッ素化合物で、各国で規制が強まっている。二つ目はリチウム資源の回収、三つ目は月面の水資源の確保だ。月面の水は、株式会社ispaceへの出資と提携で進める。
研究開発スタッフは、グループ全体で約224名いる。
志望動機で、関心のある新規事業を一つ挙げて語れる。逆質問では「三つのうち、収益化が最も近いのはどれか」と聞ける。
第2章 水処理という事業の構造
2-1. 電子市場と一般水処理市場——稼ぎ方が違う
電子市場は、半導体や液晶の工場に水処理設備を納め、運転と保守も請け負う。装置が主体で、大型案件になりやすい。受注から売上になるまで時間がかかるため、受注残高が積み上がる。事業利益率は16.1%である。
一般水処理市場は、薬品とメンテナンスが主体だ。顧客の工場に薬品を届け、設備を点検し、水質を管理する継続的な取引である。事業利益率は12.9%で、電子市場より低い。
有報は、この市場の収益性改善をCSVビジネスの拡大に帰している。CSVビジネスとは、顧客の水使用量やCO2排出量を減らすことで対価を得るモデルだ。
課題指摘に使える。一般水処理市場の利益率をCSVビジネスでどう高めるか、自分の考えとして述べられる。
2-2. 働く側の事実——連結8,268人、提出会社1,677人
連結従業員は8,268人で、提出会社(単体)は1,677人。単体の比率は20.3%で、残りの約8割は子会社と海外にいる。連結ベースの市場別では、一般水処理市場が5,326人、電子市場が1,782人だ。
冒頭の平均年間給与は、この1,677人の数字である。
働き方を聞く逆質問に使える。「入社後は本体と子会社・海外のどちらでキャリアが始まる人が多いか」と聞ける。
栗田工業の構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(ROE目標12%に対して実績4.7%/電子市場の受注は、半導体の設備投資に連動する/非継続事業の整理が終わっていない/単体比率20.3%と、1,677人という規模/平均年収1,001万円をどう読むか)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。平均年間給与10,017,000円(+7.5%)という水準。税引前利益581億円が5期で最高になりながら、当期利益が159億円と21.4%減った理由が、米国子会社ペンタゴン・テクノロジーズ・グループの非継続事業化(売却損199億円、非継続事業の税引前損失218億円)にあること。受注残高が28.1%増え、電子市場だけで41.6%増えたこと。第1四半期の受注高が77.2%増、電子の水処理装置受注は前年同期の10倍だったこと。そして中期経営計画PSV-27のROE目標12%以上に対し、実績4.7%であること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 栗田工業が抱える構造的課題——ROE目標12%に対して実績4.7%/電子市場の受注は、半導体の設備投資に連動する/非継続事業の整理が終わっていない/単体比率20.3%と、1,677人という規模/平均年収1,001万円をどう読むか
- 第3.5章 面接前に押さえる栗田工業の最新ニュース10本——ペンタゴン売却、受注残高41.6%増、PFAS・リチウム・月面水資源、PSV-27の進捗まで
- 第4章 内定者の正体——「水を通じて社会に貢献したい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,001万円の読み方と、連結8,268人・単体1,677人という組織
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢43.3歳・勤続16.0年の読み方、女性役員比率16.67%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型、課題回答2パターン、逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生