日本精工(6471)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、日本精工を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「NTNと統合。ROE8%へ」です。

有報の数字(第165期)

売上高
9,116億円
純利益
229億円
ROE
3.5%
従業員数(連結)
26,278人
従業員数(単体)
7,231人
平均年間給与(単体)
788万円
平均年齢
42.1歳
平均勤続年数
16.6年

出典:日本精工の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

日本精工を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、日本精工に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは日本精工の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、日本精工株式会社 有価証券報告書 第165期(2025年4月1日-2026年3月31日)、日本精工株式会社とNTN株式会社との共同持株会社設立(株式移転)による経営統合に関する基本合意書の締結について(2026年5月12日公表)、および2027年3月期第1四半期決算短信・連結業績予想の修正に関するお知らせ(いずれも2026年7月30日公表)に基づきます。

結論:日本精工は、前の計画の未達を認めたうえで、NTNとの統合に賭けた会社だ。

知っておきたいことは3つある。

前の計画(2022〜2026年度)の目標は、営業利益率8%とROE8%だった。営業利益率は売上のうち本業で残る利益の割合、ROEは株主のお金に対する利益の割合である。実績は4.3%と3.5%で、どちらも届かなかった。

会社は計画を1年前倒しで打ち切り、2026年5月に新しい「中期経営計画2028」を発表した。有価証券報告書には「ROE8%に再挑戦」と書かれている。

同じ2026年5月12日、同業のNTNと経営統合することに基本合意した。28卒が入社する2028年は、新計画の最終年度であり、統合が動いている最中でもある。

この記事では、会社の賭けの中身と、数字を読むときの注意点を確かめる。

第1章 日本精工は何に賭けているのか

1-1. NTNとの経営統合——出発点は危機感

日本精工は、1916年に日本で初めて軸受(回転部分を支える部品)の生産を始めた会社だ。2026年5月12日、同業のNTNと共同持株会社をつくる経営統合に基本合意した。

理由は、中国経済の成長鈍化、欧州製造業の不振、米国の関税政策の影響である。有価証券報告書は、目的を「単なる規模の拡大ではなく、危機感に裏打ちされた長期的かつ利益ある成長」と書く。NTNは1918年創業で、100年以上切磋琢磨してきた相手だ。

面接での使い方

志望動機で「規模ではなく利益ある成長を掲げた統合に関わりたい」と語れる。逆質問では「統合後、私の職種の仕事はどう変わりますか」と聞ける。

1-2. 計画を1年前倒しで打ち切った

前の中期経営計画2026は、2022年度から2026年度までの5ヵ年計画だった。会社はその4年目に打ち切った。理由は、自動車生産台数の下振れと、工作機械や家電の需要回復の遅れである。

新しい長期ビジョンは「NSKビジョン2036」で、中心は「トライボロジーソリューション」だ。トライボロジーとは、摩擦・摩耗・潤滑を扱う学問である。軸受だけでなく、ユニット製品や顧客の課題解決へ広げる方向が示されている。

会社が自分で掲げた目標は、2036年にROE10%以上の収益構造だ。

面接での使い方

志望動機では、会社が掲げた「軸受から課題解決へ」の方向に自分の関心を重ねられる。逆質問では「最終年度の2028年度に向け、現場で最優先の課題は何ですか」と聞ける。

1-3. 増収増益でも、目標との差は大きい

第165期(2026年3月期)の営業利益は388億円、当期利益は228億円(+114.8%)だった。増収増益である。それでも営業利益率は4.3%、ROEは3.5%にとどまる。

当期利益には一時的な損益が含まれる。有価証券報告書によると、負ののれんの発生益が85億円、取得に伴う差損が46億円だ。負ののれんとは、買った会社の純資産より安く買えたときの利益である。差し引き38億円で、当期利益の16.9%にあたる。

2026年7月30日、通期の営業利益予想は500億円へ上方修正された。ただし売上予想に対する営業利益率は4.8%で、目標の8%には届かない。

面接での使い方

課題指摘で「利益の伸びには一時的な損益が含まれる」と一段踏み込める。逆質問では「予想でも営業利益率は4.8%です。8%に向けて何が鍵ですか」と聞ける。

1-4. 事業別に見ると——産業機械の減益とステアリングの買い戻し

事業は3つある。自動車事業は、営業利益が18.0%伸びた。関税を売価に転嫁したことが理由だ。

産業機械事業は従業員が11,697人で最も多いが、営業利益は△9.9%だった。欧州の構造改革の一時的な費用が響いた。営業利益率は3.3%で、会社は10%以上への回復を目指す。

ステアリング事業は、一度は手放した会社を2025年9月1日に買い戻して連結した。今期は7ヵ月分である。有価証券報告書は、提携先探しの方針を継続すると書く。

面接での使い方

課題指摘で「最大の人員を抱える産業機械の収益回復が鍵」と言える。逆質問では「ステアリング事業の提携先探しは、今どの段階ですか」と聞ける。

第2章 軸受メーカーの収益構造

2-1. 景気に左右される事業だから「2本立て」にする

軸受は、自動車、鉄道、工作機械、風力発電、産業用ロボット、家電に使われる。裾野が広い分、景気の影響を受けやすい。有価証券報告書は、欧州や中国の回復の遅れ、米国の追加関税、バッテリーEVの成長鈍化を挙げ、先行きは不透明だと書く。

新計画のテーマは“Bearings & Beyond”だ。軸受側は構造改革で、欧州は完遂、日本は「着手」と書かれている。2026年4月1日には、英国の生産撤退計画に伴う組合協議が始まった。

成長側は3領域ある。電動化(電動ブレーキ用ボールねじ)、サービス化(状態監視・寿命予測)、ロボット(関節向けの軸受)である。AIロボティクス企業への投資も行った。

面接での使い方

志望動機で、3領域のうち自分が関わりたいものを根拠つきで語れる。逆質問では「日本の構造改革は、私の職種にどう関わりますか」と聞ける。

2-2. 働く側の事実——連結26,278人、単体7,231人

連結従業員は26,278人、提出会社(単体)は7,231人で、27.5%にあたる。単体の内訳は、自動車事業3,098人、産業機械事業2,976人、全社・その他1,157人だ。ステアリング事業は別会社が担うため、単体には含まれない。

有価証券報告書の平均年間給与は、約788万円である。この数字は単体7,231人のものだ。

面接での使い方

年収の話は「単体の数字」と理解したうえで質問できる。逆質問では「単体と子会社の間で、異動や出向の機会はありますか」と聞ける。

日本精工の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(ROE8%までの距離/統合の行方は、まだ「基本合意」の段階/産業機械事業が減益/配当性向72.7%という数字)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。2026年5月12日にNTNとの経営統合に基本合意したこと。中期経営計画2026の目標(営業利益率8%・ROE8%・ROIC6%)に対して実績が4.3%・3.5%・2.6%で3つとも未達に終わり、有報に「ROE8%に再挑戦」と書かれたこと。5ヵ年計画を1年前倒しで打ち切り、『NSKビジョン2036』と『中期経営計画2028』へ切り替えたこと。当期利益が114.8%増えたうち、NS&C取得に伴う負ののれん益と段階取得差損の差引38億円(当期利益の16.9%)が一過性であること。そして一度手放したステアリング事業を買い戻し、なお「ストラテジック・パートナー探しの方針を継続」していること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 日本精工が抱える構造的課題——ROE8%までの距離/統合の行方は、まだ「基本合意」の段階/産業機械事業が減益/配当性向72.7%という数字
  • 第3.5章 面接前に押さえる日本精工の最新ニュース10本——NTNとの経営統合、NSKビジョン2036、ステアリング事業の買い戻し、通期上方修正まで
  • 第4章 内定者の正体——「ベアリングの世界シェア」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収7,879,335円の読み方と、連結26,278人・単体7,231人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——平均年齢42.1歳・勤続16.6年の読み方、女性役員比率15.4%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 日本精工の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第165期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は788万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 日本精工の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第165期)では、提出会社(単体)が7,231人、連結が26,278人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 日本精工が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。