不二越(6474)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、不二越を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「減収なのに営業利益+47.3%。7つの製品のうち、伸ばすと決めたのはどれか。」です。
有報の数字(第143期)
- 売上高
- 2,359億円
- 純利益
- 52億円
- ROE
- 3.2%
- 従業員数(連結)
- 6,532人
- 従業員数(単体)
- 2,965人
- 平均年間給与(単体)
- 683万円
- 平均年齢
- 40.3歳
- 平均勤続年数
- 15.8年
出典:不二越の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
不二越を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、不二越に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは不二越の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社不二越 有価証券報告書 第143期(2024年12月1日-2025年11月30日)、および2026年11月期第2四半期(中間期)決算短信・決算補足説明資料(いずれも2026年7月14日公表)に基づきます。
不二越は、売上が減った年に利益を伸ばし、ロボットを会社の中核に育てる賭けに出ている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
第143期(2025年11月期)の売上高は2,359億円で、前期より1.7%減った。それでも、本業の儲けを示す営業利益は97億円と、47.3%増えた。
翌期の計画では、7つの製品のうち5つを伸ばし、2つを減らす。伸ばす筆頭はロボットで、24.4%増を見込む。
会社が自分で掲げた目標は、海外売上高比率60%と営業利益率10%だ。現在地との差が、この会社の論点になる。
この記事では、「なぜ売上が減って利益が増えたのか」と「なぜロボットなのか」を、自分の言葉で説明できるかを確かめる。
第1章 不二越は何に賭けているのか
1-1. ロボットを会社の中核に据えるという賭け
不二越は総合機械メーカーだ。工具・工作機械・ロボット、ベアリング・油圧機器・カーハイドロリクス、特殊鋼の7つを作っている。
有価証券報告書(会社が毎年出す事業報告書。以下、有報)には、はっきりした方針がある。「ロボットを会社の中核として育て上げる」ことを、中長期の運営方針としている。
ただし、ロボットの売上は252億円で、全体の10.7%にすぎない。まだ小さい事業を中核に据えるところに、この会社の賭けがある。
目標は海外売上高比率60%と営業利益率10%だ。前者は売上のうち海外の割合、後者は売上のうち本業の儲けが占める割合である。現在地は海外50.8%、営業利益率4.1%だ。
志望動機では「まだ小さいロボットを中核に育てる方針に関わりたい」と語れる。逆質問では、目標と現在地の差をどう埋めるかを聞ける。
1-2. 賭けは口先ではない——構造改革費用31億円
この期、余剰設備と人員の適正化を進めるため、構造改革費用を計上した。特別損失として31億円だ。
同じ期に、政策保有株式を売って、ほぼ同額の売却益を出している。政策保有株式とは、取引関係の維持などを目的に持つ他社の株式だ。構造改革の費用を、株の売却益でほぼ埋めた形になる。
ベアリング事業では、標準ラジアル軸受の生産を集約した。借入金も減らしている。
課題指摘では「設備と人員の見直しを進めている段階の会社だ」と整理できる。逆質問では、見直しのあとに若手がどの事業で働くのかを聞ける。
1-3. 減収増益をつくった4つの施策
売上は減ったのに、売上総利益は増えた。売上総利益とは、売上から原価を引いた儲けだ。つまり、1つ売ったときの儲けが増えた。
有報が挙げる理由は4つある。固定費の削減、原材料の値上がり分の販売価格への転嫁、生産ラインの自動化・合理化、調達コストダウンだ。
売上が減った理由も書かれている。中国で設備投資計画が見直され、国内の建設機械分野で需要が低迷した。
課題指摘では「減収でも利益が出る体質に変えている途中だ」と語れる。逆質問では、4つのうちどれが最も利益に効いたかを聞ける。
1-4. 7つの製品に、別々の計画がある
伸ばすのは5つで、特殊鋼、ロボット、油圧機器、工具、ベアリングだ。減らすのは2つ。カーハイドロリクス(自動車用の油圧部品)が15.8%減、工作機械が10.7%減である。
注目したいのは「油圧」の扱いだ。カーハイドロリクスは、この期は自動車メーカーの生産回復で増えた。それでも翌期は減らす計画になっている。
一方、建設機械向けが中心の油圧機器は、19.0%増を見込む。同じ油圧でも、向かう先で計画が逆になっている。
志望動機では「伸ばす製品と減らす製品を決めている会社だ」と語れる。逆質問では、工作機械を減らす理由を聞ける。
1-5. 28卒が入るのは回復の途中
2026年11月期の中間期(2025年12月〜2026年5月)は、営業利益が前年同期より60.7%増えた。2026年7月14日には、通期予想と配当予想を上方修正している。
通期の営業利益は153億円を見込む。実現しても営業利益率は6.0%で、目標の10%には届かない。
入社は2028年4月だ。この回復が本物だったかどうかは、2年分の実績で見える時期になる。
最新ニュースとして、中間期の上方修正を志望動機に添えられる。逆質問では、営業利益率10%までの道筋を聞ける。
第2章 総合機械メーカーの収益構造
2-1. 素材から機械まで持つ会社
7つの製品は、顧客がそれぞれ違う。最大の製品はベアリングで、回転する部分に広く使われる。ロボットは溶接や搬送、油圧機器は建設機械向けが中心だ。
この会社は、特殊鋼という素材から作っている。その鋼でベアリングや工具を作り、機械にも組み込む。有報も、この幅広さを特長として挙げている。
その分、設備は重い。減価償却費は187億円で、営業利益の約2倍だ。減価償却費とは、設備の購入費を毎年に分けて費用にしたものである。
志望動機では「素材から機械まで持つ会社で働きたい」と語れる。課題指摘では、重い設備を利益で支える難しさを挙げられる。
2-2. 海外比率の目標との距離
海外の売上は、この期、国内より大きく減った。理由は中国だ。有報は「中国においては経済が低迷するなど一部で事業環境の厳しさが増しております」と書いている。
一方で、拡大の方向も示されている。アメリカとインドで営業拠点を広げ、競争力のある商品を拡販する方針だ。
生産体制は、海外と日本で動きが逆になっている。海外ではベアリングの生産体制を再編し、日本では工具とベアリングの生産能力を増強している。
志望動機では、アメリカやインドでの拡販に関われる点を挙げられる。逆質問では、海外比率の目標に向けて、どの地域で伸ばすのかを聞ける。
2-3. 受注残高と販売先の偏り
受注高は、売上高をわずかに上回った。受注残高(受注済みで未納品の分)は398億円で、年間売上の約2か月分だ。ベアリングや工具は量産品で、納品までが短いためである。
販売先の偏りもある。商社の岡谷鋼機が、売上の12.9%を占める。前期より比率は上がった。
商社経由の販売は、営業の負担を減らす。だが、その1社との関係が変われば、売上の1割以上が動く。
課題指摘では、特定の販売先への依存を挙げられる。逆質問では、商社を通さない販路をどう増やすかを聞ける。
不二越の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(営業利益率4.1%と、目標10%/中国と自動車という2つの逆風/女性役員比率8.0%/特定の取引先への集中)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上が1.7%減るなかで営業利益が47.3%増えた理由が、構造改革による固定費削減・価格転嫁・自動化合理化・調達コストダウンの4つにあること。構造改革費用31億円を特別損失に計上し、政策保有株式の売却益31億円がそれを埋めたこと。翌期の計画では7つの製品のうち2つを減らし、ロボットを+24.4%と最も伸ばす設計になっていること。そして海外売上高比率60%・営業利益率10%という目標に対し、現在地が50.8%・4.1%であること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 不二越が抱える構造的課題——営業利益率4.1%と、目標10%/中国と自動車という2つの逆風/女性役員比率8.0%/特定の取引先への集中
- 第3.5章 面接前に押さえる不二越の最新ニュース10本——通期予想と配当予想の上方修正、構造改革費用、政策保有株式の縮減まで
- 第4章 内定者の正体——「ロボットに興味がある」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収6,828,908円の読み方と、連結6,532人・単体2,965人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢40.3歳・勤続15.8年の読み方、女性役員比率8.0%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生