富士通(6702)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、富士通を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「DX企業への進化」です。
有報の数字(第126期)
- 売上高
- 3兆5,030億円
- 純利益
- 4,494億円
- ROE
- 23.9%
- 従業員数(連結)
- 99,203人
- 従業員数(単体)
- 32,224人
- 平均年間給与(単体)
- 1,012万円
- 平均年齢
- 42.7歳
- 平均勤続年数
- 17.6年
出典:富士通の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
富士通を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、富士通に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは富士通の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
富士通は、事業を切り出してサービス会社へ作り替えている最中であり、過去最高益の中身は読み分ける必要がある。
知っておきたいことは3つある。
本業の利益を示す「調整後営業利益」は3,905億円で、4期連続の過去最高だ。当期純利益は4,494億円と倍増したが、事業の売却益が含まれる。
会社は有価証券報告書(有報)に「既存のIT市場は緩やかに縮小する」と自ら書く。賭け先はFujitsu Uvance(業界をまたぐ課題解決のサービス)で、前年から47%伸びた。
平均年収は929万円で、国内大手の中で上位に入る。一方、有報は「外部転身を含むリソースシフト」とも明記している。
この記事では、会社が自分で書いた目標と、その未達の部分を確かめる。
第1章 富士通は何に賭けているのか
1-1. 3年計画の限界を、自分で認めた会社
有報とは、会社が株主向けに毎年出す報告書である。富士通の有報は、3年先までの目標を決める中期経営計画そのものを振り返っている。
環境の変化が速く、3年後には計画の前提が変わってしまうという。そのため、新規事業と既存事業は時間軸を分けて考えるべきだと続ける。
成績のうち、注力事業は計画を上回った。Fujitsu Uvanceは前年から47%伸びている。
一方、未達の目標も隠していない。従業員の満足度を測るエンゲージメントのスコアは、目標75に対して71だった。女性幹部の比率は、目標20%に対して17.5%の見込みである。会社自身が「いずれも目標達成には至らない見込み」と書いている。
説明会では「働きやすい会社です」としか聞けない。有報には、届いていない数字まで載っている。
逆質問に使える。「エンゲージメントが目標75に対して71でした。差を埋める施策は何ですか」と、会社自身の数字で聞ける。
1-2. 売って、切り出して、身軽になる会社
この数年の富士通は、買う話より手放す話が多い。カーブアウトとは、事業を切り出して社外に出すことだ。
半導体の新光電気工業、エアコンの富士通ゼネラル、電池のFDKが対象である。社内でも、2025年7月1日に通信機器の事業を1FINITY株式会社として分けた。理由は「経営責任の明確化と経営判断の迅速化」だ。
目指す先は、有報に次のように書かれている。「収益性の高いサービスソリューションビジネスを中心とする事業ポートフォリオへの変革」。モノを作る会社から、サービスを売る会社への移動である。
組む相手は選んでいる。NVIDIAとはAI基盤づくりで協業を拡大した。買収ではなく協業で進める形だ。
志望動機では「モノからサービスへ変わる過程に関わりたい」と語れる。逆質問は「次にコアとノンコアの線が引かれるとしたら、どの事業だとお考えですか」が使える。
1-3. 既存IT市場は縮む、と書く会社
有報は、従来型の基幹システムなど既存のIT市場が緩やかに縮むと予測する。主力の市場が縮むと、自分で書いているわけだ。
そこで伸ばすのがモダナイゼーションである。企業の古い基幹システムを、新しい仕組みに作り替える仕事を指す。社内には「モダナイゼーションマイスター」という認定制度もある。
人の動かし方についても、有報は隠さない。「外部転身を含むリソースシフト」を行うと書いている。成長領域へ人を寄せるなら、そうでない領域からは引き揚げるということだ。
海外事業では、売上は減ったが営業利益率は4.1%から5.9%に改善した。構造改革の効果だと会社は説明している。
課題指摘に使える。「縮む市場から人を動かす会社で、自分は成長領域の側に立てる」と話せる。逆質問は「リソースシフトの対象と、移る人への支援を教えてください」が使える。
1-4. ROE23.9%は本業の力だけではない
ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す比率だ。富士通の直近期は23.9%で、前期の12.6%からほぼ倍になった。
ただし、この倍増には事業の売却益が乗っている。会社もそれを分かっていて、一過性の損益を除いた「調整後営業利益」を併記する。本業の利益も4期連続で過去最高を更新している。
つまり、本業は確かに良くなっている。しかしROEを倍にするほどの改善ではない。
課題指摘で差がつく。「ROEは23.9%ですが、売却益が含まれます。会社が調整後営業利益を併記するのもそのためで、本業の改善は別に見ています」と話せる。
1-5. 賭け先と目標:Fujitsu Uvance
売上収益3兆5,029億円のうち、約65%がサービスソリューション(システム構築、保守、コンサルティング、Uvance)だ。富士通の実態は、メーカーというよりサービス会社である。
Uvanceは、Data×AIを軸に、複数の業界にまたがる課題解決をパッケージで提供する事業だ。客の仕様を受けて作るのではなく、会社側が解決策を提案する形に変える狙いがある。
会社が掲げた目標も確認したい。Uvanceの2025年度の目標は7,000億円。2028年度には1兆円超、2030年にはサービスソリューション売上の5割をUvanceで占める想定だ。サービスソリューションの調整後営業利益率は、17.4%を目標にしている。
現中計の最終年度は2025年度で、売上の目標は事業売却で下回った。2026年度は新中計の初年度にあたり、調整後営業利益は4,250億円を見込む。
志望動機では、Uvanceを「会社が賭ける先」として語れる。逆質問は「Uvanceを7,000億円から1兆円超へ伸ばすうえでの課題は何ですか」が使える。
第2章 業界比較——国内SIer/IT企業との立ち位置
SIerとは、顧客の情報システムを作って運用する会社のことだ。国内の同業と、働く側の事実で比べる。
2-1. 年収は国内大手の上位帯
富士通の平均年収は929万円で、平均年齢は43.1歳だ。日立製作所の約935万円とほぼ並ぶ。
野村総合研究所は約1,250万円で、頭一つ抜けている。NECとNTTデータグループよりは上である。
2019年3月期は798万円で、6年で約20%伸びた。背景にはジョブ型人事制度(職務に応じて報酬を決める制度)の導入があるとされる。平均勤続年数は18.2年。単体の従業員は34,850人で、連結では約12万人である。
志望動機に使える。「上位帯の年収と長く働ける環境がある」と根拠を示せる。逆質問は「ジョブ型の導入後、若手の評価や報酬はどう変わりましたか」が使える。
2-2. 規模ではなく、収益性で勝負する局面
売上は事業売却の影響で、横ばいから微減にとどまる。その代わり、調整後営業利益率は2024年度の8.3%から2025年度の11.1%に上がった。
規模を広げる局面ではなく、収益性を上げる局面にある。この見立てでは、年収や賞与に還元されやすい時期とされる。ただし、会社が約束した話ではない。
志望動機では「規模より収益性を重視する方針に共感した」と語れる。逆質問は「収益性を重視する中で、若手に求められる役割は何ですか」が使える。
富士通の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(### 追い風1:国内DX商談の本格化/### 追い風2:生成AI・AIエージェント市場の急拡大/### 追い風3:ジョブ型人事制度による報酬の市場連動/### 構造的な課題)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——### 追い風1:国内DX商談の本格化/### 追い風2:生成AI・AIエージェント市場の急拡大/### 追い風3:ジョブ型人事制度による報酬の市場連動/### 構造的な課題
- 第3.5章 押さえておくべき最新ニュース
- 第4章 内定者の正体——選考プロセス分析
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——有報を使った回答例と逆質問
- 第8章 やましゃんの総合評価