古野電気(6814)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、古野電気を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「3年後の目標が今より低い理由」です。
有報の数字(第75期)
- 売上高
- 1,406億円
- 純利益
- 167億円
- ROE
- 20.7%
- 従業員数(連結)
- 3,411人
- 従業員数(単体)
- 1,954人
- 平均年間給与(単体)
- 752万円
- 平均年齢
- 44.7歳
- 平均勤続年数
- 15.2年
出典:古野電気の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
古野電気を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、古野電気のグループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは古野電気の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
「世界で初めて魚群探知機を実用化した技術力に惹かれました」。そう志望動機を話すと、面接官は「売上の9割近くは船向けだけど、造船の注文が一服したらどう稼ぐと思う?」と返してくる。
知っておきたいことは3つある。
・2026年2月期の売上1,406億円のうち、86.2%が船向けの舶用事業で、71.2%は海外で売れている。
・3年連続で過去最高の売上と利益を更新し、株主から預かったお金100円で20.7円の利益を出した。
・それでも会社は3年後の目標を売上1,500億円と置いた。今期の会社予想1,580億円より低い。
※本記事の数値は、古野電気株式会社 有価証券報告書 第75期(2026年2月期)と、2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年10月9日公表)に基づきます。
第1章 古野電気は何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——3年後は「売上1,500億円」
古野電気は兵庫県西宮市に本社を置く、船の電子機器のメーカーだ。1948年に魚群探知機の実用化に成功し、今は商船のレーダーなどを世界に売る。
2026年2月、会社は2027年2月期から3年間の中期経営計画(3年先の目標を宣言した計画。以下、中計)を出した。有報の原文はこうだ。「過去最高業績の更新で得た力を将来成長に投じ、積極投資で成長基盤を築く3ヶ年」。
最終年度の2029年2月期に置いた目標は、売上1,500億円、営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)10%以上、ROE(株主から預かったお金100円で、1年に何円の利益を出したか)10%以上。2026年2月期の実績は売上1,406億円、ROE20.7%だ。目標のROEは、今の実績の半分になる。
ここが最初の逆説だ。会社は、利益を投資と人に回し、市況に左右されにくい形に変える3年にすると書いている。
面接での使い方:「中計で『積極投資で成長基盤を築く3ヶ年』と位置づけ、ROE目標を実績の20.7%より低い10%以上に置いたと読みました。その投資を、利益に戻す現場に立ちたいと考えています」
1-2. 減らす事業と増やす事業——買収より、自前で育てる
増やす側ははっきりしている。舶用では、既存の船の機器を入れ替える「換装」と保守サービスを世界に広げる。産業用では、電波で正確な時刻を配る時刻同期の製品と、防衛装備品の生産を増やす。
減らす事業の名前は、有報に出てこない。
買収は、2009〜2014年に海外の3社を買うか資本を入れた程度だ。同じ領域の会社を次々に買って束ねるロールアップとは読めない。技術を自前で育てる会社だ。
1-3. 28卒は、中計の最終年度に入社する
28卒が入る2028年4月は、2029年2月期の最中だ。1年目は、売上1,500億円の目標の答え合わせの年になる。
1-4. 稼ぎ頭はどこか——魚群探知機の会社は、商船で稼いでいる
古野電気の事業は3つの区分に分かれる。船向けの「舶用」、医療機器や測位機器、防衛装備品の「産業用」、学校などに入れる無線LAN(建物の中のWi-Fi)の「無線LAN・ハンディターミナル」だ。
舶用の売上は1,211億円で、全体の86.2%を占める。もうけはさらに偏る。3区分の本業のもうけの合計のうち、舶用が94.8%を出した。
意外なのは、その舶用の中身だ。創業の魚群探知機を売る漁業向けは、日本では販売が減った。伸びたのは商船だ。燃料を重油から切り替える船の需要で造船所の仕事が積み上がり、新しい船に積む機器が増えた。既存の船の機器の入れ替えと保守サービスも好調だった。
地域でも、日本の売上は405億円で全体の28.8%にとどまる。欧州が401億円、アジアが371億円で、中国だけで191億円ある。
1-5. 働く側の事実——1,954人、平均44.7歳、平均年収752.3万円
有報の「従業員の状況」によると、古野電気本体(単体=子会社を含まない1社だけの数字)の社員は1,954人、平均年齢44.7歳、平均勤続15.2年、平均年間給与は752.3万円だ。連結(子会社を含むグループ全体)の社員は3,411人で、本体の社員が57%を占める。
新卒が入るのは、この本体の古野電気だ。採用ページの募集職種は、技術系が研究・開発、技術サービス、生産技術、品質管理。事務・営業系が人事、経理、社内システム、法務、商品企画、国内営業、国際営業だ。
1年目の場面はたとえばこうだ。技術サービスに入った人は、船に機器を取り付け、保守や取り扱いの指導をする。国際営業に入った人は、海外の子会社や代理店とやり取りしながら製品を売り込む。
面接での使い方:「売上の71.2%が海外で、欧州とアジアだけで772億円あると知りました。国際営業として、商船の機器の入れ替えや保守の案件を、海外の拠点と組んで取りにいきたいです」
第2章 舶用電子機器の稼ぎ方
2-1. 新造船と換装——同じ船に2回売る
船の電子機器は、売る機会が2回ある。1回目は船を造るときで、造船所に機器を納める。2回目は、動いている船の機器を入れ替えるときで、船主に売る。
今は1回目の波が大きい。有報によると、温室効果ガスを減らす代替燃料船の需要で、造船所の手持ちの仕事は増え続けている。直近の中間期の決算短信は、新造船の発注が過去最高だった2007年とほぼ同じペースだと書く。
2回目の換装は、波が小さい代わりに長く続く。会社が中計で「換装におけるシェア拡大」を掲げるのは、新造船の波が引いたあとも売上を残すためだ。
2-2. 売り方——機器を売ったあと、保守で稼ぐ
船は世界中の港を回るので、どの港でも直せる体制が要る。古野電気は欧州やアジアに販売と保守の子会社を置き、海外売上は71.2%に達する。
会社は、建造から保守、機器の入れ替えまで面倒を見る商船向けの戦略を「ライフサイクルサポート」と呼ぶ。
この形の強みは、機器を一度載せた船が、次の保守と換装の顧客になることだ。2026年2月期、舶用の売上は11.5%増えたが、本業のもうけは25.7%増えた。売上100円あたりのもうけは13.8円で、産業用の4.9円、無線LANの3.5円を大きく上回る。
面接での使い方:「舶用の売上100円あたりのもうけは13.8円と、産業用の4.9円を大きく上回ると知りました。その差は、機器を載せた船を保守と入れ替えで追い続ける『ライフサイクルサポート』にあると考えています」
2-3. この構造で働く人——技術サービスと国際営業
この稼ぎ方では、船の現場に出る技術者と、海外とやり取りする営業が要になる。技術サービスは、代理店の技術者の教育まで担う。
研究開発費は2026年2月期に60億円で、売上の4.3%にあたる。そのうち44億円が舶用に向かう。
古野電気の構造的課題は、4つに分けて第3章で扱う(造船の波に乗る売上/舶用への一本足/在庫と部品の調達/自律航行と人と拠点)。
■同じ業界の会社も読んでおく(併願先と比べると、志望理由が具体的になる)
▶︎ 横河電機の企業解剖
https://note.com/irshukatsu/n/n184e486ac79a
▶︎ アンリツの企業解剖
https://note.com/irshukatsu/n/n0a55e017aa91
▶︎ 堀場製作所の企業解剖
https://note.com/irshukatsu/n/n1629e95bfbe8
■この会社の面接で落ちる場面
冒頭の「世界で初めて魚群探知機を実用化した技術力に惹かれました」のあと、面接官が「売上の9割近くは船向けだけど、造船の注文が一服したらどう稼ぐと思う?」と返す。そこで言葉が止まる人が多い。止まり方は3つあり、第4章で1つずつ分けた。
■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「売上の86.2%が船向けの舶用事業で、海外の売上は71.2%です。新造船の注文が落ち着いたあと、既存の船の機器の入れ替えや保守サービスは、売上をどこまで支えると見ていますか」
必要なのは、86.2%と71.2%の2つだけだ。残り6本も、記事の中で説明した数字だけで組んである。
■有料パートで手に入るもの
・面接前日の1枚まとめ(覚える数字3つ・逆質問3選・言ってはいけない一言2つ)
・頻出6問の回答例と、面接官の深掘り問答6組(第7章)
・志望動機:ES用400字2本・面接用1分2本
・「当社の課題は?」への答え2パターン
・逆質問7本(1本ずつ狙いつき)
・面接前に読むニュース10本(1本ずつ「面接で使うなら」)
・採用の事実5項目と同業比較表2枚(第4章)
■使う場面
ESを書く日に第7章の400字を、面接の前日に1枚まとめを開く。古野電気の面接1社分で1,480円、買い切りで、購入後はいつでも読み返せる。
■章ごとの中身
・第3章 舶用電子機器の構造的課題——造船の波に乗る売上/舶用への一本足/在庫と部品の調達/自律航行と人と拠点
・第3.5章 面接前に押さえる古野電気の最新ニュース10本——中間期の本業のもうけ38.3%増・通期予想を210億円に上方修正・2031年2月期にROE15%以上
・第3.6章 数字で補足——ROEの分解・5期の推移・3つの事業区分と地域・財務・株主還元・リスク
・第4章 内定者の正体——「世界で初めて魚群探知機を実用化した技術力に惹かれました」で落ちる理由、3つの視点、不合格パターン、採用の事実と同業比較
・第5章 職種別キャリア分析——平均年収752.3万円の読み方と、技術系・事務系・営業系のキャリア
・第6章 働く環境の現実——勤続15.2年の読み方、女性役員比率10%の他社比較
・第7章 面接攻略——頻出6問と深掘り、ES用400字と面接用1分、逆質問7本
・第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生
ここまでが無料パートです。売上の86.2%は船向けで、71.2%は海外。商船の新造と保守が利益を押し上げ、会社は3年後の売上目標を1,500億円に置いた。