堀場製作所(6856)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、堀場製作所を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「「時価総額1兆円記念配当」240円。中間期の営業利益は+39.3%、通期予想は700億円へ」です。
有報の数字(第88期)
- 売上高
- 3,331億円
- 純利益
- 371億円
- ROE
- 11.2%
- 従業員数(連結)
- 9,101人
- 従業員数(単体)
- 1,573人
- 平均年間給与(単体)
- 821万円
- 平均年齢
- 42.8歳
- 平均勤続年数
- 16.0年
出典:堀場製作所の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
堀場製作所を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、堀場製作所に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは堀場製作所の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社堀場製作所 有価証券報告書 第88期(2025年1月1日-2025年12月31日)、および2026年12月期第2四半期(中間期)決算短信(2026年8月7日公表)に基づきます。
堀場製作所は、利益の8割を半導体向けの1フィールドに頼っており、その偏りをどう直すかが最大の論点だ。
知っておきたいことは3つある。
会社は中長期経営計画「MLMAP2028」で、2028年を到達点に置いた。28卒が入社する2028年4月は、その到達点の年にあたる。
営業利益(本業の儲け)の84%を、先端材料・半導体の1フィールドが稼ぐ。バイオ・ヘルスケアは2期連続で営業赤字だ。
2026年8月、会社は今期の営業利益予想を700億円に引き上げた。配当には「時価総額1兆円記念配当」も入った。
この記事では、利益の偏りが強みなのか弱みなのか、そして計測機器という商売の構造から見て直せるのかを確かめる。
第1章 堀場製作所は何に賭けているのか
1-1. 3つの賭け——MLMAP2028、3フィールド、先端半導体
堀場製作所は、分析・計測機器を作る会社だ。自動車の排ガス、半導体工場のガスの流れ、血液中の細胞を測る装置を売っている。
1つ目の賭けは、2024年2月に公表した中長期経営計画「MLMAP2028」だ。名前のとおり、到達点は2028年に置かれている。
2つ目の賭けは、組織の作り替えである。事業区分を、自動車・環境・医用・半導体・科学の5つから、3つの「フィールド」に組み替えた。エネルギー・環境、バイオ・ヘルスケア、先端材料・半導体の3つだ。製品別ではなく、向き合う社会課題別に分けた形になる。
3つ目の賭けが、先端材料・半導体だ。決算短信は、AI・データセンター向けの先端半導体需要が、半導体製造装置メーカー向けの販売を押し上げたと書いている。
志望動機で「2028年に向けた3フィールド体制のどこで働きたいか」を語る材料になる。入社年が計画の到達点にあたる点は、逆質問にもできる。
1-2. 営業利益の84%を、1つのフィールドが稼いでいる
本業の儲けを示す営業利益は、2025年12月期の全社で530億円だった。うち445億円を、先端材料・半導体が稼いでいる。
その割合は84%だ。一方、売上に占める割合は47%にとどまる。売上の半分弱で、利益の8割強を稼ぐ構造である。
残る2フィールドは見劣りする。エネルギー・環境は営業利益94億円で、売上に対する利益率は7%だ。バイオ・ヘルスケアは営業損失9億円で、前期も同規模の赤字だった。
課題指摘に使える。「この2フィールドの立て直しに、自分はどう貢献できるか」と語れば、志望動機につながる。
1-3. 半年で予想を引き上げた——計画の最終年に何が起きているか
2026年1〜6月の営業利益は305億円だった。前年同期より39%増えている。
伸びを引っ張ったのは先端材料・半導体で、売上は32%増えた。
会社は2026年8月、通期の営業利益予想を560億円から700億円へ引き上げた。半年で大きく見直した形だ。
逆質問にできる。「MLMAP2028の目標に対して、現在の進み具合をどう見ているか」と聞けば、計画の年度を押さえている学生だと伝わる。
1-4. 配当が2年で大きく増えた
年間配当は、2025年12月期の450円から、2026年12月期予想の790円へ増える。2026年の期末配当には「時価総額1兆円記念配当」が含まれる。
注意したいのは中身だ。普通配当は210円で変わっていない。増えているのは特別配当と記念配当で、いずれも今回限りの性格を持つ。790円が来期も続くとは限らない。
最新ニュースの文脈として語れる。「増えたのは今回限りの配当で、普通配当は変わらないと理解している」と言えれば、数字を正確に読んでいる印象になる。
1-5. 働く側の事実——人員の6割は全社共通
連結従業員は9,101人だ。うち64%が、フィールドをまたぐ全社共通の人員である。製造・研究開発・管理は、フィールド横断で集約されている。
単体の平均年齢は42.8歳、平均勤続は16.0年だ。
平均年間給与は約821万円である。
逆質問に使える。「配属はフィールド別か、全社共通の機能か」と聞けば、入社後の働き方を具体的に確かめられる。
第2章 分析・計測機器メーカーの収益構造
2-1. 「測る」ことを売る商売
堀場製作所が売るのは、測定という機能だ。排ガス、半導体工場のガスの流れ、血液中の細胞。いずれも正確でなければ意味がない測定である。
だから精度に価格がつき、他社へ簡単には替えられない。営業利益率(売上に対する本業の儲けの割合)は、2025年12月期で15.9%だった。
測る対象の重心も動いてきた。かつては自動車の排ガスが中心だったが、いまは半導体向けが利益の8割を稼ぐ。5つの事業区分を3フィールドに組み替えたのは、この重心の移動があったからだ。
志望動機で、精度で選ばれる商売に惹かれた理由を語る足場になる。
2-2. 利益の集中は、強みであり弱みでもある
強みは、AI・データセンター向けの半導体投資を取り込んでいることだ。中間期の売上32%増は、その恩恵である。
弱みは、半導体の設備投資が「シリコンサイクル」と呼ばれる波を持つことだ。設備投資が増えたり減ったりする周期で、一巡すると注文は急に減る。
そのとき、他の2フィールドが支えられるか。エネルギー・環境の利益率は7%と低く、バイオ・ヘルスケアは赤字だ。現状では難しい。この2つの立て直しが、計画の本当の課題と読める。
課題指摘と貢献につなげられる。「半導体の波に左右されない柱をどう育てるか」を、逆質問にできる。
2-3. EVが遅れるほど売れる、という逆説
エネルギー・環境フィールドには、エンジンの燃焼を測る装置がある。電気自動車にはエンジンがないため、EVが普及するほど需要は減る。
逆に、EVシフトが緩やかになりハイブリッド車の開発が続けば、装置は売れる。決算短信にも、ハイブリッド車向けの需要増が書かれている。
一方、水素関連市場は成長が鈍化し、欧州で販売が減った。自動車の動力の行方が、このフィールドの将来を決める。それは会社が自分でコントロールできない。
最新ニュースの文脈で語れる。「EVの普及が進んだ場合、次の柱は何か」を逆質問にできる。
堀場製作所の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(利益の集中と、シリコンサイクル/赤字のフィールドを、どうするか/財務が厚くなりすぎている/組織が「フィールド」で分かれていない)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。中長期経営計画「MLMAP2028」に合わせて報告セグメントを5つから3フィールドへ組み替えたこと。営業利益の83.9%を先端材料・半導体が稼ぎ、バイオ・ヘルスケアは2期連続で営業赤字であること。ROEが11%台で安定する裏で、自己資本比率が5期連続で上昇し67.1%になっていること。そして中間期に営業利益+39.3%を記録し、通期予想を700億円(+32.0%)へ引き上げ、配当に「時価総額1兆円記念配当240円」を加えたこと。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 分析・計測機器業界の構造的課題——利益の集中と、シリコンサイクル/赤字のフィールドを、どうするか/財務が厚くなりすぎている/組織が「フィールド」で分かれていない
- 第3.5章 面接前に押さえる堀場製作所の最新ニュース10本——通期予想の上方修正、記念配当、セグメント再編まで
- 第4章 内定者の正体——「はかるを楽しむに惹かれました」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収8,209,409円の読み方と、連結9,101人・単体1,573人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続16.0年の読み方、女性役員比率17.0%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生