三菱重工業(7011)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、三菱重工業を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「防衛と原発で復活する」です。
有報の数字
- 売上高
- 4兆9,742億円
- 純利益
- 3,321億円
- ROE
- 12.2%
- 従業員数(連結)
- 78,793人
- 従業員数(単体)
- 23,373人
- 平均年間給与(単体)
- 1,072万円
- 平均年齢
- 42.3歳
- 平均勤続年数
- 18.5年
出典:三菱重工業の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
三菱重工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、三菱重工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは三菱重工業の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
三菱重工業は、先に「稼ぐ力」を整え、いまは売上の規模と成長投資で次の段階を狙っている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
・中期計画の目標のうち、利益率とROEは1年前倒しで達成した。売上だけが未達で、ここが会社の課題である。
・受注残高は11.5兆円ある。受注済みでまだ売上になっていない仕事の量で、売上の約2.3年分にあたる。
・平均年収は1,018万円で、前期より52万円上がった。平均年齢は42.5歳だ。
この記事では、会社が何に賭け、どこが課題で、同業の中でどこにいるのかを確かめる。
第1章 三菱重工業は何に賭けているのか
1-1. 中期目標は「2つ達成、1つ未達」
中期経営計画「2024事業計画」は、2026年度の目標を3つ置いている。売上収益5.7兆円以上、事業利益率8%以上、ROE12%以上だ。事業利益は本業で稼いだ利益を指す。ROEは、株主のお金でどれだけ利益を出したかを示す指標である。
直近期の実績は、売上収益4兆9,741億円、事業利益率8.7%、ROE12.2%だった。利益率とROEは1年前倒しで達成した。売上だけが5.7兆円に届いていない。儲ける力が先に整い、規模がまだ追いついていない状態だ。
会社は目標を引き上げている。2026年度の見通しは、売上収益5.4兆円、事業利益率10%である。2025年5月には「高利益体質と成長投資の好循環」を新しい方針に掲げた。稼いだ利益を投資に回し、また利益を生む循環をつくる、という賭けだ。
逆質問に使える。「利益率は先に整いましたが、売上が当初の5.7兆円に届かない要因は何ですか」と聞ける。見通しの5.4兆円も当初目標を下回るので、質問に説得力が出る。
1-2. 買わずに、持つ事業の中で配り直す
有報にM&Aとして出てくるのは、上場している関係会社の少数株主を整理し、支配を強める手続きだけだ。同業を次々に買って規模を作る話は出てこない。
代わりに掲げるのが「ポートフォリオ経営の強化」である。どの事業に資源を寄せ、どこから引き揚げるかを決める経営のことだ。三菱重工には発電設備、原子力、航空機、防衛、宇宙、製鉄機械、冷熱、物流機器がそろう。買わなくても、選べるだけの品揃えがある。
配り方は設備投資に出る。エナジー(GTCC関連設備ほか)が870億円、航空・防衛・宇宙が450億円だ。残る2セグメントはこれより小さい。資金はエナジーと防衛に寄っている。
志望動機では「買収ではなく、内側の配り直しで変わる会社だから」と言える。逆質問なら「資源を寄せる側だけでなく、縮小する側の判断はどうされていますか」が使える。
1-3. 追い風はAI投資と防衛費、だから「急務」と書く
追い風の1つ目は電力だ。GTCC(ガスタービンと蒸気タービンの両方で発電する方式)は、データセンターの電力需要で引き合いが強い。三菱重工はシーメンス・GEと並ぶ世界3強の1社で、2026年3月期の上期だけで6,025億円を受注した。
2つ目は防衛だ。日本の防衛費は2023〜2027年度の5年間で、総額43兆円規模に拡大する。従来の年間予算の約1.5倍の水準である。三菱重工は防衛装備品で大きなシェアを持つ。
有報には焦りに近い一文がある。「変化を上回るスピードで事業遂行能力を高めることが急務である」。受注が積み上がる局面では、作り切る力が課題になりうる。この一文はそこを意識したものと読める。
志望動機では、数年単位で続く追い風に乗る会社だと語れる。逆質問なら「受注は強いと理解していますが、作り切る力のほうが課題になっていませんか」と聞ける。
1-4. 4つの柱と、手放す事業
三菱重工は2025年4月から、事業を4つに再編した。エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙だ。利益を引っ張るのは、エナジーと航空・防衛・宇宙の2つである。
縮小の動きもある。物流・冷熱・ドライブシステムでは、フォークリフト子会社のロジスネクストの売却が2025年下半期に決まった。エナジーと防衛に資源を集中する流れの一環だ。
課題指摘に使える。自分の志望する事業が「伸ばす柱」か「見直し対象」かを先に確かめ、そのうえで貢献を語る。
第2章 業界比較——国内重工メーカーとの立ち位置
2-1. 売上規模は重工業の中で突き抜けている
売上は三菱重工の5.0兆円に対し、川崎重工業は1.9兆円規模だ。三菱重工は約2.6倍あり、国内の重工メーカーでは最大である。
受注残高の11.5兆円も大きい。受注から売上になるまで1年から数年かかるため、いまの受注が数年後の業績を決める。1-1で見た「売上の規模が追いついていない」という課題は、この受注が売上に変わっていくかどうかにかかっている。
志望動機では「国内最大の重工メーカーで、仕事の量が先まで見えている」と言える。逆質問では「受注残高が売上に変わるペースをどう見ていますか」と聞ける。
2-2. 年収は同業で最上位、ただし読み方に注意
平均年収は三菱重工が1,018万円で、川崎重工業の約780万円、日立製作所の961万円、トヨタ自動車の982万円を上回る。前期より52万円上がっており、直近期の業績拡大と時期が重なる。
数字の中身も押さえたい。平均年齢は42.5歳、平均勤続年数は18.9年だ。従業員は単体で約2.2万人(連結では約7.8万人)、新卒採用は年間約570名である。
年収の高さだけを志望動機にしない。「事業の追い風と処遇が重なる時期に、何を担いたいか」まで話すと説得力が出る。
三菱重工業の構造的課題と追い風は、6つに分けて第3章で扱う(### 追い風1:データセンター需要・脱炭素によるGTCC市場の爆発/### 追い風2:日本の防衛費GDP比2%目標/### 追い風3:原発再評価/### 追い風4:水素・アンモニア・CCUS/### 追い風5:ベストオーナー戦略・ロジスネクスト売却/### 構造的な課題)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——### 追い風1:データセンター需要・脱炭素によるGTCC市場の爆発/### 追い風2:日本の防衛費GDP比2%目標/### 追い風3:原発再評価/### 追い風4:水素・アンモニア・CCUS/### 追い風5:ベストオーナー戦略・ロジスネクスト売却/### 構造的な課題
- 第3.5章 押さえておくべき最新ニュース
- 第4章 内定者の正体——選考プロセス分析
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——有報を使った回答例と逆質問
- 第8章 やましゃんの総合評価