三菱自動車(7211)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、三菱自動車を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「ROEが24%から1%」です。

有報の数字

売上高
2兆8,965億円
純利益
100億円
ROE
1.1%
従業員数(連結)
27,695人
従業員数(単体)
13,498人
平均年間給与(単体)
790万円
平均年齢
42.4歳
平均勤続年数
16.0年

出典:三菱自動車の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

三菱自動車を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、三菱自動車に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは三菱自動車の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、三菱自動車工業株式会社 有価証券報告書 2025年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

結論:三菱自動車は、増収でも利益が大きく落ち、作り直した新ビジョンで巻き返しに賭けている会社だ。

知っておきたいことは3つある。

2025年度は売上高が3.9%増えたのに、営業利益は45.6%減った。純利益は75.6%減っている。

前の中期計画「Challenge2025」は、有報自身が「一部の施策は期待した進捗に達していない」と認めている。そのうえで2026年5月に、新しい中長期ビジョンを発表した。

働く側の事実として、連結従業員は5期で減り、平均年間給与も前期より下がった。

この記事では、会社が何に賭けているか、なぜ利益が落ちたか、自動車業の何が原因かを順に確かめる。

第1章 三菱自動車は何に賭けているのか

1-1. 賭けは「絞り込み」と「利益率」

2023年3月発表の「Challenge2025」は、一部が期待した進捗に届かなかった。そこで2026年5月に、2030年代に向けた新ビジョンを出した。有報は「従来の中期計画の延長にとどまることなく」と書いている。

目標は、年度つきの数字で二段階に書かれている。

・2029年度:営業利益1,600億円、営業利益率4.5%、ROE 10%
・2030年度以降:営業利益2,000〜2,500億円、ROE 12%以上

ROEとは、株主から預かったお金で、どれだけ純利益を出したかを示す比率だ。当期は1.08%で、10%はその約9倍にあたる。

賭けは3つに整理できる。

・商品:アセアンとオフロードに集中する。2031年度までの6年間で13車種を投入し、2026年度にパジェロを出す。
・市場:重点国はフィリピン、ベトナム、日本である。米国と中国は重点国に入っていない。
・1台あたりの価値:中古車、販売金融、アフターサービス、用品など、売った後の事業を強める。

面接での使い方

志望動機で「アセアンとオフロードに絞る戦略に共感した」と、賭けの中身を名指しで語れる。「2029年度のROE 10%まで、何が最大の壁か」は逆質問になる。

1-2. 賭けの規模と、28卒が入る時期

有報は、2029年度までの4年間で約1兆円の成長投資を行うと書く。株主還元は総額1,000億円規模を予定している。

構造転換では、生産能力や固定費の見直しを進めるとある。狙いは損益分岐点の最適化だ。損益分岐点とは、赤字と黒字の境目になる売上の水準を指す。

28卒の入社は2028年4月で、新ビジョンの3年目にあたる。入社2年目の2029年度に、目標の答えが出る。13車種のうち何車種かは、入社後に世に出る。

リスクとして、有報は中東情勢を挙げる。販売とコストの両面に影響が出ており、アセアンの需要にも波及するという。

面接での使い方

逆質問で「13車種のうち、私の入社年次に投入する車種はどれか」と聞ける。計画の途中に自分が入ることを、貢献の話につなげられる。

1-3. 利益が削られた3つの段階

利益は、段階的に削られている。

第1に原価だ。売上原価が8.7%増え、売上の伸びを上回った。売上総利益が減り、販管費を減らしても追いつかなかった。営業利益が半分近く減った理由はここにある。

第2に特別損失だ。米国環境クレジット評価損として161億円が出た。前期は計上がなかった項目である。

第3に非支配株主だ。連結子会社の株式を、三菱自動車以外が持つ部分を指す。当期純利益の52.7%が、この非支配株主の取り分になった。

面接での使い方

課題指摘では「売上ではなく原価と利益率が課題だ」と言える。そのうえで、自分がコスト改善のどこに貢献できるかを語る。

1-4. 本体の赤字と、働く側の事実

本体(提出会社)の単体決算では、営業損失が671億円だった。クルマを作って売る事業は赤字で、子会社からの配当で黒字にしている。連結だけを見ていると、この苦しさは見えない。

働く側の事実も押さえておく。

・連結従業員は27,695人で、5期で3.8%減った
・提出会社の平均年齢は42.4歳、平均勤続年数は16.0年
・平均年間給与は789万5,000円で、前期比3.0%減

給与の減少は、純利益が大きく落ちた業績と同じ方向の動きだ。

面接での使い方

逆質問で「業績が落ちた局面で、若手に任される役割はどう変わったか」と聞ける。給与や人員の数字を知っていると、志望動機に現実味が出る。

第2章 自動車業の収益構造

2-1. 原価が少し上がるだけで、利益は大きく減る

2025年度に起きたことは、自動車業の収益構造をそのまま示している。

売上総利益率は、売上から原価を引いた利益が、売上の何%かを示す比率だ。前期の19.25%から、当期は15.50%に下がった。売上の大半は原価に消えている。

自動車は1台に数万点の部品を使う。原価がわずかに動くだけで、利益は大きく動く。販管費は売上に比例して減らないため、粗利の減少を埋めきれなかった。

有報は事業環境について、米国の関税率引き上げ、環境規制の見直し、中国メーカーの海外展開による競争の激化を挙げる。どれも会社の力だけでは動かせない外部要因だ。

面接での使い方

課題指摘では「同じ台数を売っても、原価次第で利益が消える業界だ」と語れる。逆質問は「原価上昇に対し、調達でどこまで吸収できるか」になる。

2-2. 環境規制は、自動車メーカーの費用になる

1-3で見た評価損の背景には、環境クレジットがある。環境クレジットとは、排出ガスなどの規制を満たすために、他社から買う「排出枠」のことだ。

三菱自動車はこの枠を保有していたが、価値を評価し直して損失を計上した。米国の規制の方針が変われば、保有する枠の価値も変わる。自動車業は、政策の変化を費用として直接負う。

規制に対応するには、電動化への投資が要る。一方で研究開発費は、前期より減っている。規制対応の負担と投資余力のバランスが、中期的な論点になる。

面接での使い方

志望動機では「規制や政策の変化を事業の前提にする仕事に関心がある」と言える。逆質問は「規制対応と新車開発の投資配分をどう決めているか」が使える。

三菱自動車の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(ROEが23.97%から1.08%へ振れる/営業CFが79.5%減り、借入が増えた/単体の営業赤字671億円という現実/2027年3月期は回復計画——第1四半期は営業+78.8%)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高2兆8,965億円(+3.9%)の増収ながら売上原価が+8.7%増えて売上総利益は△16.3%、営業利益755億円(△45.6%)・純利益100億円(△75.6%)でROEは2022年度の23.97%から1.08%へ落ち純利益は16.8分の1、利益は「原価→特別損失(米国環境クレジット評価損161億円)→税負担率63.1%→非支配株主52.7%」の4段階で削られ、2つのセグメントでは金融事業がわずか212人・総資産の19.1%を持ち利益率5.48%と自動車事業2.53%の2.2倍、単体は営業損失671億円で受取配当金1,196億円により黒字を確保、営業CFは△79.5%でフリーキャッシュフローは△866億円・自己資本比率は3.58ポイント低下、平均年収789万5,000円は△3.0%と減少、そして2027年3月期第1四半期は販売台数△8%でも営業利益+78.8%と回復——三菱自動車の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 自動車業の構造的課題——ROEが23.97%から1.08%へ振れる/営業CFが79.5%減り、借入が増えた/単体の営業赤字671億円という現実/2027年3月期は回復計画——第1四半期は営業+78.8%
  • 第3.5章 面接前に押さえる三菱自動車の最新ニュース10本——ROE 1.08%・非支配株主52.7%・回復計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「クルマが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収790万円の読み方と、事務技術系・技能系のキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続16.0年、女性管理職6.8%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 三菱自動車の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書()の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は790万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 三菱自動車の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書()では、提出会社(単体)が13,498人、連結が27,695人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 三菱自動車が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。