テイ・エステック(7313)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、テイ・エステックを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「稼ぐ力を取り戻す」です。
有報の数字(第80期)
- 売上高
- 4,423億円
- 純利益
- 71億円
- ROE
- 2.3%
- 従業員数(連結)
- 13,558人
- 従業員数(単体)
- 1,649人
- 平均年間給与(単体)
- 780万円
- 平均年齢
- 41.4歳
- 平均勤続年数
- 17.6年
出典:テイ・エステックの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
テイ・エステックを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、テイ・エステックに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはテイ・エステックの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、テイ・エス テック株式会社 有価証券報告書 第80期(2025年4月1日-2026年3月31日、IFRS)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日公表)に基づきます。
テイ・エステックは、自社の「稼ぐ力」が失われたと認め、次の3年で取り戻すと宣言した会社だ。
知っておきたいことは3つある。
会社は前の3年間(2024年3月期〜2026年3月期)を「収益面では課題を残す結果」と総括した。戦略の方向は「概ね適切」としつつ、収益が伴わなかったという自己評価だ。
次の3年間の最終年度に、営業利益率5.0%を目指している。営業利益率とは、売上のうち本業の利益が何%残るかを示す数字だ。
売上の59.0%を占める米州は、利益では4地域合計の8.4%にとどまる。稼ぐ力の弱さは、ここに集中している。
この記事では、稼ぐ力がどこで弱まり、会社がどこに手を打っているかを確かめる。
第1章 テイ・エステックは何に賭けているのか
1-1. 会社は「稼ぐ力を取り戻す」と書いた
前の中期計画(第15次)について、有報はこう書く。「収益面では課題を残す結果となりました」。ただし戦略の方向性は「概ね適切であったと評価しています」とも書く。方向は正しかったが、収益は出なかったという整理だ。
次の第16次(2027年3月期〜2029年3月期)の方針は「"稼ぐ力"を取り戻す」。最終年度に営業利益率5.0%を目指す。当期は2.3%なので、3年で約2.2倍にする計画だ。
さらに会社は、この3年を「将来的に業界トップ水準の営業利益率を実現するための基盤を固める期間」と位置づける。5.0%も通過点という位置づけである。
志望動機では、失われたと認めたうえで取り戻すと宣言した姿勢に触れられる。逆質問では「5.0%までの道筋で、最初の1年に何を優先するか」を聞ける。
1-2. 当期は減収減益、今期は回復を見込む
当期(2026年3月期)の売上収益は4,423億円だった。4期連続で伸びたあと、初めて減った。営業利益は103億円で、4割近く減っている。
今期の営業利益予想は130億円だ。売上はほぼ横ばいなので、利益率は約3%にとどまる。
第1四半期(2026年4〜6月)の営業利益は17億円。通期予想の約13%で、単純に4倍しても予想には届かない。
逆質問で「今期の利益予想の達成に向け、第2四半期以降に何が伸びる想定か」を聞ける。中計目標との差を示す、最新ニュースの文脈としても使える。
1-3. 売上は米州、利益は日本と中国
米州は売上の約6割を占める最大の市場だ。しかし営業利益率は0.6%で、前期から営業利益は大きく減った。
日本の営業利益率は8.6%、中国は12.1%。4地域の営業利益の大半は、この2地域が稼いでいる。アジア・欧州は赤字だが、前期よりは改善した。
売上と利益が、まったく違う場所にある会社だとわかる。
課題指摘に使える。「米州の収益改善に関わりたい」と、自分の役割まで落として語れる。
1-4. 売上の84.4%がシート1製品
製品別に見ると、四輪事業が売上の大半を占める。中でもシートは3,732億円で、全社売上の84.4%にあたる。
同じ自動車内装のトヨタ紡織は、シートと内装を「一体のシステム」として提案する方向へ進んでいる。テイ・エステックは、シートに集中している。
課題指摘で、1製品への依存を取り上げられる。逆質問では「シート以外の柱をどう育てるか」を聞ける。
1-5. 自己資本比率73.3%の会社が借入を使うと書いた
自己資本比率にあたる親会社所有者帰属持分比率は73.3%。借金がほとんどない会社だ。一方、ROE(株主のお金に対する当期利益の割合)は2.3%にとどまる。
資本の使い方について、有報は「必要に応じて負債性資金を活用しながら」と書く。負債性資金とは、借入など返済が必要なお金のことだ。
手元の資本を守る側から、使って稼ぐ側へ回る意思表示と読める。
志望動機で、財務が強い会社があえて借入を使う姿勢に触れられる。逆質問では「借入を使う投資の優先順位」を聞ける。
第2章 シートという事業の構造
2-1. 米州に設備投資の半分以上が向かっている
当期の設備投資(工場や設備への支出)のうち、米州が54.3%を占める。
利益が細った米州に半分超が向かい、利益率12.1%の中国には2.2%しか入っていない。投資は、いま稼ぐ場所ではなく、これから稼がせたい場所に向いている。
米州では減損損失(設備の価値を切り下げる損失)が15億円出た。営業利益が落ちた一因である。
課題指摘に使える。逆質問では「米州への投資は、何年で利益率の回復につながる想定か」を聞ける。
2-2. 国内は集約、海外は新設と提携
当期は、国内で埼玉地区の生産拠点を行田工場へ集約する再編が完了した。海外では、インドと中国で新工場が稼働した。インドでは、Krishnaグループと合弁会社を設立した。
Krishnaグループは、インドで大きなシェアを持つマルチ・スズキ向けのメインサプライヤーだ。現地の有力企業と組んで入る形になる。
会社は5つの重点戦略を「成長戦略」と「機能戦略」に分ける。インドの動きは前者、国内集約は後者にあたる。広げる打ち手と絞る打ち手が、同時に走っている。
志望動機で、国内は集約、海外は拡大という方針に触れられる。逆質問では「インド合弁の初期の目標」を聞ける。
2-3. 働く側の事実:人員の6割は米州にいる
連結の従業員は13,558人。うち米州が8,086人で、約6割を占める。人員の配分は、売上の配分とほぼ重なる。
提出会社(テイ・エス テック株式会社そのもの)の従業員は1,649人だ。有報の平均年間給与は約780万円で、この人たちの数字になる。
平均年齢は41.4歳、平均勤続は17.6年。新卒中心で、長く勤める会社だと読める。
志望動機では、働く先が国内本社か海外拠点かを意識した話ができる。逆質問では「米州と日本本社の人の関わり方」を聞ける。
テイ・エステックの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(会社自身が「収益面では課題を残す結果」と書いた/米州の営業利益が76.0%減った/売上の84.4%がシート1製品/自己資本比率73.3%がROEの重石になっている/通期予想と第1四半期の間に開きがある)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。会社が次の中期計画の経営方針に「"稼ぐ力"を取り戻す」と書き、前の3年間を「収益面では課題を残す結果」と自ら総括したこと。売上の59.0%を占める米州が4地域の営業利益合計の8.4%しか稼いでおらず、利益率0.6%であること。売上の84.4%がシート1製品に集中していること。自己資本比率73.3%と財務レバレッジ1.388倍がROE2.3%の一因であること。そして中期最終年度の営業利益率目標が5.0%であること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 テイ・エステックが抱える構造的課題——会社自身が「収益面では課題を残す結果」と書いた/米州の営業利益が76.0%減った/売上の84.4%がシート1製品/自己資本比率73.3%がROEの重石になっている/通期予想と第1四半期の間に開きがある
- 第3.5章 面接前に押さえるテイ・エステックの最新ニュース10本——稼ぐ力を取り戻す宣言、米州の△76.0%、シート84.4%、インドの合弁まで
- 第4章 内定者の正体——「ホンダ系のシートメーカーで」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収780万円(+2.7%)の読み方と、連結13,558人・単体1,649人という組織
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢41.4歳・勤続17.6年の読み方、女性役員比率27.3%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型、課題回答2パターン、逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生