長野計器(7715)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、長野計器を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「減益でも3期連続増配」です。
有報の数字(第104期)
- 売上高
- 677億円
- 純利益
- 54億円
- ROE
- 11.8%
- 従業員数(連結)
- 2,390人
- 従業員数(単体)
- 771人
- 平均年間給与(単体)
- 532万円
- 平均年齢
- 42.3歳
- 平均勤続年数
- 18.4年
出典:長野計器の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
長野計器は、圧力計測ひとつを100年以上磨き、国内の圧力計で約6割のシェアを持つニッチトップの会社である。
知っておきたいことは3つある。
・前の中期計画(売上753億円が目標)は未達だった。新計画は、ほぼ同じ売上755億円を2028年度の目標に置き直した。
・2026年3月期は減収減益だった。営業利益は70億円で、主因は半導体向けの設備投資が在庫調整から抜けなかったことだ。
・それでも配当は52円に増やし、次期は60円を予想する。自己資本比率(返さなくてよいお金の割合)は62.9%まで上がった。
この記事では、会社が何に賭けているか、目標と現状の差、他社と比べた立ち位置を確かめる。
第1章 長野計器は何に賭けているのか
1-1. 753億円の目標を、755億円にして3年先送りした
前の計画(2023〜2025年度)は、最終年度に売上753億円、営業利益率12.9%を掲げた。有価証券報告書は、半導体関連の設備投資が急に変わったことを理由に、未達を認めている。
新しい「新中期経営計画2028」(2026〜2028年度)の最終年度の目標は、売上755億円、営業利益率12%である。あわせて「期間中ROE 12%の確保」も掲げる。ROEとは、株主から預かったお金で、どれだけ利益を出したかを示す率だ。
ほぼ同じ売上目標を3年後ろにずらし、利益率はわずかに下げた。届かなかった水準を、現実的な時間軸に置き直した計画だといえる。
柱は2つある。1つ目の「進化」は、従来の圧力計事業の安定成長。2つ目の「挑戦」は、光学式センサ、ワイヤレス化、海外での圧力センサ拡販である。企業理念は「一芸を極めて世界に挑戦」だ。
志望動機では、未達を認めたうえで目標を置き直す姿勢に共感した、と語れる。逆質問では、売上755億円に向けて「挑戦」の柱で何割を作る想定かを聞ける。
1-2. 長野の工場に集中し、買収に頼らない
生産拠点は、長野県上田市の2工場(上田計測機器工場、丸子電子機器工場)である。2025年6月には、丸子の敷地内にダイアフラム加工棟が完成した。稼働は2025年9月からだ。
ダイアフラムとは、圧力を受けてたわむ薄い膜のこと。圧力センサの心臓部にあたる。その加工と研磨の能力を上げた。
当面の設備投資は、生産設備の更新・改良が中心である。新しい生産棟は「市況を見極めながら」検討中とされ、慎重な姿勢だ。一方、新計画の3年間で、成長投資に約50億円を充てる計画も示された。
有価証券報告書に、買収の記述は見当たらない。この会社は、自社の技術を深めることで伸びようとしている。
志望動機では「買収ではなく自社技術を深める会社だから」と理由にできる。逆質問では、新生産棟に着手する判断基準が受注残か顧客の投資計画かを聞ける。
1-3. 半導体は在庫調整、インフラは安定——直近決算
2026年3月期の売上は677億円で、減収減益だった。国内では、社会インフラの老朽化対策やプラント向けの圧力計の需要は安定していた。減ったのは、半導体業界向けである。
事業別では差が出た。圧力センサの営業利益は31.7%減り、営業利益率は前期の20.3%から15.2%へ下がった。半導体向けの反動減が響いた形だ。一方、圧力計は減収でも営業利益が増えた。
会社予想では、2027年3月期の売上は675億円、営業利益は68億円である。半導体の本格回復は、2026年度後半と会社は見ている。
リスクとして、米国の関税政策の不透明感と為替が挙げられている。もう一つの課題は、収益が圧力計と圧力センサに偏っていることだ。新計画でも、この構造への対応が明記されている。
課題指摘では、高収益の圧力センサが半導体の波を受けやすい点を示し、光学式センサなど新領域で収益源をどう増やすかを論点にできる。逆質問では、半導体回復を2026年度後半と見る根拠を聞ける。
1-4. 減益でも増配——守りの財務と株主還元
自己資本比率は62.9%と高い。借入に頼らず、自己資本を厚くする運営が続いている。配当は、前期の増配に続いて52円、次期は60円を予想する。
方針も変わった。従来の「安定配当の維持」から、「前年度の配当水準を維持または引き上げる累進配当」へ転換した。3年間の株主還元には、約35〜40億円を配分する計画だ。
ROEは11.8%で、前期の14.5%から下がった。新計画の目標は12%なので、現状との差は0.2ポイントである。数字だけ見れば近いが、減益局面からの回復が前提になる。
志望動機では、財務の安定と株主を意識する姿勢を挙げられる。逆質問では、成長投資と株主還元をどの順で優先するか、ROE12%の達成に何が効くかを聞ける。
第2章 業界比較
2-1. アズビルと比べると何が違うか
比較対象は、同じ計測・制御機器のアズビル(6845)である。ビル空調制御からプラント計装、ガス・水道メーターまで手がける総合メーカーだ。長野計器の圧力計測に近い事業は、その一部にすぎない。
売上はアズビルが2,989億円で、長野計器の677億円の4倍超。営業利益率もアズビルが15.8%、長野計器が10.3%と上回る。
ただし、総合メーカーと一点特化の専業メーカーでは、事業構造が違う。数字だけの単純な比較には限界がある。
志望動機では「総合ではなく専業だから選んだ」と対比して語れる。逆質問では、専業としてアズビルとの利益率の差をどう見ているかを聞ける。
2-2. 上場は長野計器だけという位置づけ
国内の圧力計市場は、長野計器が約6割を握る。残りは第一計器製作所・日新計器・旭計器工業など、非上場の同業が分け合う。海外最大手級のドイツWIKA社も非上場だ。
国内で圧力計測を専業とする上場企業は長野計器のみで、その有価証券報告書が業界の実態を数字で確認できる窓口である。新計画は、国内シェアの維持と、産業用圧力センサの生産数での世界トップクラスを目指すとしている。
志望動機では、国内首位を守りながら世界を狙う姿勢を理由にできる。逆質問では、シェアを守るために今取り組んでいることを聞ける。
長野計器の構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(### 半導体業界の投資サイクルへの連動/### IoT化・データセンター拡大が生む新たな需要/### 脱炭素・水素社会への対応)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。減益でも3期連続増配——長野計器の構造を数字で確認しました。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 圧力計測・センサ業界の構造的課題——### 半導体業界の投資サイクルへの連動/### IoT化・データセンター拡大が生む新たな需要/### 脱炭素・水素社会への対応
- 第3.5章 面接前に押さえる長野計器最新ニュース9本
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略
- 第8章 やましゃんの総合評価