朝日インテック(7747)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、朝日インテックを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「買収4社を92億円まとめて減損した翌年、ROEは8.4%から19.8%になった」です。

有報の数字(第49期)

売上高
1,200億円
純利益
127億円
ROE
8.4%
従業員数(連結)
9,473人
従業員数(単体)
1,196人
平均年間給与(単体)
695万円
平均年齢
37.1歳
平均勤続年数
7.2年

出典:朝日インテックの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

朝日インテックを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、朝日インテックに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは朝日インテックの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、朝日インテック株式会社 有価証券報告書 第49期(2024年7月1日-2025年6月30日)、および2026年6月期決算短信(2026年8月14日公表)に基づきます。

朝日インテックは、医療機器で厚く稼ぎながら、買収の失敗も抱えて2030年へ進む会社だ。先に知っておきたいことは3つある。

稼ぎ方:売上から原価を引いた利益が売上の7割を占め、2026年6月期の営業利益率は31.1%だった。

傷:2025年6月期に、買収した子会社4社の価値を約92億円分、損失として認めた。

時間軸:28卒が入社する2028年は、中期経営計画「Building the Future 2030」の3年目にあたる。

この記事では、会社の賭け、買収の傷、働く側の事実を順に確かめる。

第1章 朝日インテックは何に賭けているのか

1-1. 賭けは3つ——血管の外への広がり、2030年の計画、買収

朝日インテックは、カテーテル治療に使う極細のガイドワイヤーを作る会社だ。心臓の血管が詰まったとき、細い管(カテーテル)を通して治療する。その道筋をつける針金が、ガイドワイヤーである。

1つ目の賭けは、心臓から脳・腹部・手足の血管への広がりだ。決算短信は、腹部・末梢血管系の製品が全地域で伸び、脳血管系も海外で増えたと書く。

2つ目は、2026年6月期を初年度とする中期経営計画「Building the Future 2030」だ。2030年を見据えた計画が、いま始まったところである。

3つ目は買収だ。朝日サージカルロボティクスなどを子会社に持ち、直近ではニッタモールド社を連結子会社にした。技術を自前開発と買収の両方で集めている。

面接での使い方

志望動機に使う。「血管の外へ広げる2030年までの計画に、自分はこう関わりたい」と語れる。

1-2. 買収した4社を、まとめて減損した

減損とは、買った事業の価値が下がったと認め、その分を損失にすることだ。2025年6月期、朝日インテックは子会社4社で、のれんなどを合計92億円減損した。のれんとは、買収額のうち会社の純資産を上回って払った分をいう。

4社は、朝日サージカルロボティクス、Pathways Medical、Rev.1 Engineering、ASAHI Medical Technologiesである。うち3社は米国カリフォルニア州の会社だ。

有報は理由を「収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった」と書く。さらに「使用価値はゼロとして算定」と明記している。これ以上の価値は出ないという判断だ。会社が子会社名と金額を並べて開示している点も、事実として押さえたい。

面接での使い方

課題指摘に使う。「4社とも回収できなかった原因を、会社はどう分析しているか」を逆質問にできる。

1-3. 減損の翌年にROEは19.8%になった

ROEは、株主のお金で1年にどれだけ利益を出したかを示す率だ。2025年6月期は8.4%に下がり、2026年6月期は19.8%に上がった。

8.4%の年も、営業利益は前期比35.9%増えていた。利益を削ったのは、減損を含む約110億円の特別損失(その期だけの臨時の損失)である。

翌期は減損が約10億円に減り、純利益は約320億円になった。ROEを上下させたのは、本業ではなく買収の後始末だ。

2027年6月期の会社予想は、売上1,617億円、営業利益521億円である。28卒が入る2028年4月は、中計の3年目にあたる。減損が一過性だったかが、問われる時期だ。会社は減損の後も、ニッタモールド社を連結子会社にしている。

面接での使い方

課題指摘に使う。「ROEの落ち込みは減損が原因で、本業は伸びていたと理解している」と言える。逆質問は「減損の教訓を、次の買収の選び方にどう生かしたか」が使える。

1-4. 賭けは数字に出ている——売上の7割が粗利になる

2026年6月期の売上は1,454億円で、前期比21.2%増だった。売上総利益率(売上から原価を引いた利益の割合)は70.4%。営業利益率(本業の儲けの割合)は31.1%である。

ただし、伸びの全てが実力とは限らない。デバイス事業の増収には、ニッタモールド社の連結が含まれる。決算短信は、円安も売上増に寄与したと書く。コスト側には、米国関税の増加も挙がっている。

面接での使い方

志望動機と課題指摘の両方に使う。「利益率の高さに惹かれたが、伸びには買収と為替が含まれる点も見ている」と語れる。

1-5. 働く側の事実——連結9,473人のうち、日本は1,196人

従業員は連結で9,473人、提出会社(日本の本体)は1,196人だ。日本の本体は全体の約13%で、製造の主力は海外にある。

提出会社の平均年齢は37.1歳、平均勤続は7.2年、平均年間給与は約695万円である。平均年齢に比べて勤続が短い。30歳前後で入った人が多いとみられ、急拡大する会社の姿と重なる。

面接での使い方

逆質問に使う。「勤続年数が短めですが、中途入社と新卒入社の役割はどう分かれていますか」と聞ける。

第2章 医療機器メーカーの収益構造

2-1. なぜ粗利が7割になるのか

理由は、医療機器という商品の性格にある。

第1に、材料費が小さい。ガイドワイヤーは極細の金属線で、材料そのものの値段は製品価格のごく一部だ。第2に、価値が技術に乗っている。曲がりくねった血管を、折れず傷つけず通す性能に価格がつく。第3に、参入が難しい。各国の承認、臨床の実績、医師への使い方の指導が要る。

その代わり、販管費(販売費及び一般管理費)が重い。2026年6月期は572億円で、うち研究開発費が133億円を占める。決算短信も、米国での販売強化の費用や研究開発費で増えたと書く。

面接での使い方

志望動機に使う。「厚い粗利を研究開発と営業に再投資する構造に、自分は開発(営業)で貢献したい」と語れる。

2-2. 景気で減りにくい需要

売上は2021年6月期から2026年6月期の6期で、約2.4倍になった。一度も減っていない。

心臓の血管が詰まる人の数は、景気で増減しない。医療機器の需要は、人口と高齢化と医療インフラの広がりで決まる。そのため、この会社は成長企業として扱われてきた。

面接での使い方

志望動機に使う。「景気に左右されにくい需要を土台に、血管の外へ広げる点に魅力を感じた」と言える。

2-3. 日本の1,196人は何をしているか

製造の主力は海外にある。極細のガイドワイヤーには、手作業に近い精密な工程が多い。人手が要る製品を、人件費の水準が違う場所で作ることが、70.4%の粗利率を支えているとみられる。

日本の1,196人のうち、メディカル事業は715人だ。国内の役割は、作ることより、設計・承認・販売の側にあるとみられる。自分が入る日本の職場で何をするのかは、考えておきたい。

面接での使い方

逆質問に使う。「日本拠点と海外拠点で、若手の仕事はどう分かれていますか」と聞ける。

朝日インテックの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(買収が、そのまま損失になりうる/為替と関税が、利益の相当部分を動かす/中国市場という不確実性/人が定着する前に、組織が大きくなる)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。PCIガイドワイヤーを中心とした売上総利益率70.4%・営業利益率31.1%という収益構造。ROEが11.2%→8.4%→19.8%と動いた理由が、買収4社に対する92億円の減損(「使用価値はゼロとして算定」)という一過性であったこと。連結9,473人に対し日本の本体は1,196人であること。そして減損の翌年にニッタモールド社を新たに連結子会社化していること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 医療機器業界の構造的課題——買収が、そのまま損失になりうる/為替と関税が、利益の相当部分を動かす/中国市場という不確実性/人が定着する前に、組織が大きくなる
  • 第3.5章 面接前に押さえる朝日インテックの最新ニュース10本——ROE19.8%への回復、設立50周年記念配当、自己株式105億円まで
  • 第4章 内定者の正体——「医療に貢献したい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収6,950,333円の読み方と、連結9,473人・単体1,196人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続7.2年の読み方、女性役員比率15.4%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 朝日インテックの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第49期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は695万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 朝日インテックの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第49期)では、提出会社(単体)が1,196人、連結が9,473人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 朝日インテックが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。