リコー(7752)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、リコーを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「ROEが資本コストを下回った」です。
有報の数字(第126期)
- 売上高
- 2兆6,083億円
- 純利益
- 557億円
- ROE
- 5.1%
- 従業員数(連結)
- 75,635人
- 従業員数(単体)
- 4,596人
- 平均年間給与(単体)
- 906万円
- 平均年齢
- 45.4歳
- 平均勤続年数
- 20.0年
出典:リコーの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
リコーを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、リコーに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはリコーの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社リコー 有価証券報告書 第126期(2025年4月1日-2026年3月31日)、自己株式取得に係る事項の決定及び自己株式消却に係る事項の決定に関するお知らせ(2026年5月12日公表)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月3日公表)に基づきます。
結論から言う。リコーは、株主の期待ラインを下回る利益率のまま、「デジタルサービスの会社」への転換に賭けている。
知っておきたいことは3つある。
ROE(株主が出したお金に対し、1年でいくら利益を出したかの割合)は5.1%だ。会社が見積もる株主資本コスト(株主が最低限求める利回り)の7.5〜8.0%を下回る。2030年度に10%以上が目標である。
営業利益(本業のもうけ)は268億円増えた。だが5つの事業の合計は4億円の増加にとどまる。
従業員は連結で75,635人だが、株式会社リコー本体は4,596人だ。
この記事では、この3点を有価証券報告書の記述で確かめ、面接で語る材料にする。
第1章 リコーは何に賭けているのか
1-1. 賭けの中身——株主の期待を超えるROEを最優先の目標にした
リコーは複合機・プリンターの会社だ。だが会社自身は、中長期の目標を「デジタルサービスの会社」と書いている。
有報は、株主資本コストを上回るROEの早期実現を「最優先で取り組むべき財務目標」とする。現在は5.1%で、2030年度の目標は10%以上だ。下回っている事実を隠さず、会社が自分で目標を置いている。
もう一つ、計画の作り方が変わった。2026年4月開始の中期経営戦略'26から、3年固定をやめ、5年先を見て毎年見直す方式になった。理由は「前提条件の変化に十分対応できない」ためだ。
目標の中身も書かれている。ストック利益(後述)を15%以上伸ばし、成長投資は3,500億円程度を行う。
28卒が入社する2028年は、この計画の3年目にあたる。ROE10%の期限は、その2年後だ。
志望動機では、自社の弱さを数字で認めたうえで目標を置く姿勢を挙げられる。逆質問では「2030年度のROE10%に向け、3年目の私たちの世代が担う役割は何か」と聞ける。
1-2. 営業利益+268億円は、事業の力で増えたのではない
第126期(2026年3月期)の売上高は2兆6,083億円で、前期比3.2%増だ。営業利益は907億円で、268億円増えた。
だが事業別に見ると、デジタルサービスとグラフィックコミュニケーションズは減益だった。5事業の合計は4億円の増加にすぎない。
増加の大半は、事業ではない「消去又は全社」の263億円だ。有報は理由を2つ書く。前期にあった国内のセカンドキャリア支援制度の一時費用がなくなったこと。そして国内で固定資産の売却益が出たことだ。
直近も見ておく。2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)の営業利益は477億円だ。通期予想950億円の約5割にあたる。通期予想は据え置かれている。
課題指摘として「増益の中身は一時的な要因が大きい」と言える。逆質問では、一時要因を除いた本業の増益ペースを聞ける。
1-3. 「デジタルサービスの会社」を掲げるが、利益が出ているのは機械側
デジタルサービスは、複合機の販売・保守とITサービスの事業だ。売上は全体の約76%を占め、従業員は47,620人いる。社内で最大の事業である。
ところが営業利益率は1.4%で、前期の1.7%から下がった。
利益額が最大なのは、複合機などを作るデジタルプロダクツだ。営業利益は315億円、利益率は5.4%である。転換を掲げる会社で、いま利益を出しているのは機械を作る側だ。
課題指摘として「転換の成否は、デジタルサービスの利益率が握る」と語れる。逆質問では、その利益率の目標水準と達成年度を聞ける。
1-4. 縮む市場への手——競合との合弁と自社株の消却
有報は「プリンティング需要は減少傾向」と書く。この環境で、リコーは2つの手を打った。
一つは合弁会社エトリアだ。2024年7月に東芝テックと発足し、2025年10月に沖電気工業が加わった。共通エンジンの開発、生産体制の最適化、購買の効率化を進める。売る側では競合のまま、作る側で組む形だ。
もう一つは株主還元である。2026年5月12日、発行済株式の4.0%にあたる上限2,300万株、250億円の自己株式の取得と全株の消却を決議した。理由は「株主還元の充実ならびに資本効率の向上のため」だ。
志望動機では、競合と組んででも事業を守る姿勢を挙げられる。逆質問では、エトリアの統合で現場の仕事がどう変わるかを聞ける。
第2章 複合機メーカーの収益構造
2-1. 連結75,635人に対し、提出会社は4,596人
連結の従業員は75,635人だ。有報を提出する株式会社リコー本体は4,596人で、全体の6.1%にとどまる。
本体の内訳を見ると、全社(共通)が1,751人で、約38%を占める。連結で47,620人のデジタルサービスは、本体では792人しかいない。有報は「開発については、主として当社が担当」と書く。本体は本社機能と開発が中心だ。
平均年間給与は906万円だが、これは本体4,596人の数字である。
志望動機では、本体で働く場合の役割を自分の言葉で説明できる。逆質問では、本体とグループ会社でキャリアがどう分かれるかを聞ける。
2-2. 稼ぎ方の軸はストック利益
会社が重要指標とするのがストック利益だ。ストックとは、機械を売った後も続く収入を指す。保守サービス、消耗品、ソフトの利用料などだ。
実績も開示されている。ストック売上は前年度比6%増の4,196億円だった。中期経営戦略'26では、ストック利益を15%以上伸ばすと掲げる。
背景には、機械そのものはいつか売れなくなるという事情がある。有報の「プリンティング需要は減少傾向」という記述と同じ流れだ。売り切りではなく、設置後に稼ぐ構造へ寄せている。
志望動機では、売り切りで終わらず設置後も稼ぐモデルに魅力を感じたと言える。逆質問では、ストック利益15%成長のために、現場に求められる行動を聞ける。
リコーの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(ROE10%までの距離/「デジタルサービスの会社」の営業利益率が1.4%/増益の中身が事業ではない/女性役員比率7.7%と、エンゲージメント)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。ROE5.09%が、会社自身の見積もった株主資本コスト7.5〜8.0%を下回っていること。ROEの3分解では財務レバレッジ2.240倍がすでに高く、残るのは純利益率だけという構造。営業利益の増加268億円のうち5事業の合計は+4億円で、+263億円は固定資産売却益などの全社項目だったこと。「デジタルサービスの会社」を掲げながら、デジタルサービス事業の営業利益率が1.4%であること。そして連結75,635人に対し提出会社は4,596人(6.1%)で、その38.1%が全社(共通)であること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 リコーが抱える構造的課題——ROE10%までの距離/「デジタルサービスの会社」の営業利益率が1.4%/増益の中身が事業ではない/女性役員比率7.7%と、エンゲージメント
- 第3.5章 面接前に押さえるリコーの最新ニュース10本——中経’26の5年ローリング転換、エトリアへの沖電気参画、自己株式250億円の取得と全株消却まで
- 第4章 内定者の正体——「複合機のリコー」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収9,061,743円の読み方と、連結75,635人・単体4,596人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢45.4歳・勤続20.0年の読み方、ジョブ型人事制度、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生