イオン(8267)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、イオンを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「ツルハで純利益2.6倍」です。
有報の数字(第101期)
- 売上高
- 10兆7,153億円
- 純利益
- 727億円
- ROE
- 6.4%
- 従業員数(連結)
- 179,230人
- 従業員数(単体)
- 559人
- 平均年間給与(単体)
- 933万円
- 平均年齢
- 49.3歳
- 平均勤続年数
- 18.5年
出典:イオンの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
イオンは、スーパーの会社というより、ドラッグストアを新しい柱に据えようとしているグループだ。
知っておきたいことは3つある。
2026年2月期の営業収益(売上にあたる数字)は10兆7,153億円で、5期連続の過去最高だった。本業のもうけを示す営業利益も2,704億円と、2期ぶりに最高を更新した。
最終的なもうけである純利益は726億円で、前期の約2.6倍になった。ただし主因はツルハを子会社にした際の一時的な会計上の利益であり、本業の実力とは分けて読む必要がある。
8つある事業のうち、祖業のスーパー系は伸び悩んだ。利益を押し上げたのは、ドラッグストア、モール、海外だった。
この記事では、イオンが何に賭け、何が課題かを、面接で自分の言葉で語れるところまで確かめる。
第1章 イオンは何に賭けているのか
1-1. 賭けているのは、スーパーではなくドラッグストア
有価証券報告書(会社が毎年出す公式の報告書。以下、有報)に、会社自身の目標が書かれている。ツルハとウエルシアを核にした新会社で、2032年2月期に売上高3兆円、営業利益率7%を目指すというものだ。「アジアNo.1のヘルス&ウエルネス分野のグローバル企業」を掲げている。
営業利益率とは、売上のうち本業で何%もうかるかを示す割合だ。イオン全体は約2.5%なので、この新会社の目標は3倍近い水準にあたる。利益率の低い食品スーパーの隣に、利益率の高いドラッグストアの柱を建てる。これがいまのイオンの賭けである。
食品小売の側にも手を打っている。有報には「これまで以上に踏み込んだ事業構造改革」とある。この言い方は、現状の収益性では足りないと会社自身が認めていることを示す。
志望動機では「ドラッグストアへ軸足を移す会社の変化に加わりたい」と言える。逆質問では「利益率7%に向けて、食品スーパー側で最初に変えるのはどこですか」と聞ける。
1-2. 買って束ねる戦略——ロールアップの完成形
直近期は、同業を次々に取り込んで束ねる動き(ロールアップ)が形になった年だ。2025年12月にウエルシアを完全子会社とする株式交換が完了した。同じ12月にツルハへの公開買付けを始め、2026年1月に連結子会社とした。ドラッグストア業界の上位2社を、約2か月で束ねたことになる。
統合後のツルハグループの営業収益は1兆4,505億円。店舗は新規出店117店、閉店90店で、自力での増加は差し引き27店だった。統合で増えたのは2,991店で、年度末の直営店は5,676店になった。1店ずつ出していては届かない規模を、買収で一気に手に入れた形だ。
内側の整理も進んでいる。イオンモールとイオンディライトを完全子会社にした。一方で、不採算企業を特定してグループ内再編や事業整理に着手するとも有報に書かれている。買うだけでなく、整理するものは整理する方針だ。
課題指摘では「統合後に共同調達やプライベートブランド(自社企画商品)の供給をどう進めるか」を論点にできる。逆質問では「ツルハとウエルシアの統合で、まず何から共通化されますか」が使える。
1-3. 純利益2.6倍の正体と、事業ごとの明暗
純利益726億円の大幅増は、ツルハを連結子会社にした際の「段階取得差益」が主因だ。すでに一部持っていた株を追加で取得して子会社にするとき、持ち株の評価替えで出る一時的な利益である。毎期は続かない。本業の力は、営業利益2,704億円のほうで見るべきだ。
事業ごとに見ると、明暗が分かれる。スーパー事業(SM)の利益は299億円で、前期の325億円から減った。祖業であるGMS(総合スーパー)、SM、DS(ディスカウントストア)は、原材料価格の高騰や人件費の上昇に押されている。増収でも、利益は伸び悩んでいる。
一方、ヘルス&ウエルネス事業(ウエルシア、ツルハ)の利益は524億円で、前期の360億円から増えた。ほかにモールと海外も増益だった。利益を引っ張っているのは、小売以外の事業だ。
「純利益が増えた理由」を問われたら、一時的な利益と本業を分けて答えられる。課題指摘では「スーパー事業の収益性の改善」を、自分が貢献したいテーマに据えられる。
1-4. 2030年度の目標と、28卒の時間軸
2026年5月、イオンは2026〜2030年度の中期経営計画を発表した。2030年度の目標は、営業収益15兆円、営業利益5,300億円、ROE8.5%以上だ。ROEは、株主から預かったお金でどれだけ稼いだかを示す割合である。直近は6.4%なので、目標との差が課題になる。
海外では、ベトナムを最重要市場に置く。営業収益を3,000億円超へ広げ、ショッピングセンターを現状の約3倍の30店舗にする計画だ。特定の地域に集中して出店し、その地域を面で押さえる手法(ドミナント出店)を、ベトナムでも進めてきた。
時間軸も重ねておく。新会社の目標年度は2032年2月期で、28卒の入社は2028年4月だ。入社4年目に、その期限が来る。従業員の働きがいを測る調査を、国内外で60万人規模で行っているとも有報にある。
志望動機では「目標年度に自分は4年目で、どう関わりたいか」を語れる。逆質問では「ROE8.5%に向けて、現場で最も改善したい指標は何ですか」と聞ける。
1-5. 会社が抱える4つの論点
有報や決算から、論点は次の4つに整理できる。
原材料価格や人件費が高騰する中で、GMS・SM事業の収益性改善が計画通りに進むか。
ツルハとウエルシアの統合による相乗効果が、実際に出るか。
金利が上がる局面で、総合金融事業の金融費用が増えるリスク。
計画の中心に置いたベトナムなど、海外事業が想定通りに広がるか。
「イオンのリスクをどう見ていますか」と問われたとき、そのまま答えの骨組みになる。どれか1つを選び、自分なら何で貢献できるかをつなげて話す。
第2章 業界比較——セブン&アイ・ホールディングスとの数値比較
2-1. 集中するセブン、広げるイオン
同じ2026年2月期の決算(ともに2026年4月9日発表)で、国内小売の二強であるセブン&アイと比べる。営業利益率は、イオンの約2.5%に対してセブン&アイは4.1%だ。
両社の戦略は正反対である。セブン&アイは、イトーヨーカ堂、そごう・西武、セブン銀行といった中核でない事業を切り離している。そのうえで、セブン-イレブンの海外展開に経営資源を集める「選択と集中」の最中だ。2027年2月期は減収減益の計画になっている。
イオンは逆に、スーパー、ドラッグストア、金融、モール、海外と多角的な事業を広げている。ツルハとウエルシアの取り込みで、ヘルス&ウエルネスでの存在感も一気に高めた。利益率ではセブン&アイが上だが、成長の速さと事業領域の広さではイオンが上回る。
「セブン&アイとの違い」は、集中と多角化という戦略の違いで語る。志望動機では「なぜセブン&アイではなくイオンか」の根拠になる。
2-2. 働く側の数字
有報で、提出会社単体の平均年間給与を比べる。イオンは933万円(559人、平均年齢49.3歳、平均勤続18.5年)。セブン&アイは855万円(866人、平均年齢45.1歳、平均勤続17.5年)だ。
ただしこれは提出会社単体の数字で、グループ全体の平均ではない。従業員が国内外で60万人規模というグループの、ごく一部にあたる。年収の比較は、この前提を添えて使う必要がある。
逆質問で「提出会社の平均年齢が高い中、若手にはどんな役割が任されますか」と聞ける。年収の数字は、この前提を理解したうえで話題にする。
イオンの構造的課題と追い風は、第3章(有料パート)で扱う。
ここまでが無料パートです。営業収益10兆7,153億円で5期連続最高を更新した一方、純利益が2.6倍(726億円)に膨らんだ最大の要因はツルハ子会社化に伴う特別な会計上の利益。本業の伸びと見た目の数字のギャップをどう読むか。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——構造的課題と追い風
- 第3.5章 面接前に押さえるイオン最新ニュース10本——M&A・株式分割・決算・中期経営計画・海外戦略まで
- 第4章 内定者の正体——採用区分と就職難易度、ES「なぜイオンか」の組み立て、逆質問のレベル別、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収と平均像、市場価値とセカンドキャリア
- 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、退職理由の構造、福利厚生
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答テンプレートと逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——投資視点×就活視点