オリックス(8591)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、オリックスを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「純利益が27.2%増」です。
有報の数字(第63期)
- 売上高
- 3兆3,308億円
- 純利益
- 4,473億円
- ROE
- 10.4%
- 従業員数(連結)
- 37,286人
- 従業員数(単体)
- 3,016人
- 平均年間給与(単体)
- 1,040万円
- 平均年齢
- 44.2歳
- 平均勤続年数
- 15.8年
出典:オリックスの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
オリックスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、オリックスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはオリックスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
オリックスは、事業を買って育てて売ることを本業にし、その売却益で利益が大きく動く会社だ。
知っておきたいことは3つある。
会社は10年先の利益目標を、有価証券報告書に自分で書いている。
直近の利益は、インド企業の株の売却益に大きく支えられた。事業の売却は、この会社では一過性ではなく本業だ。
事業は10に分かれ、一つが落ちても他が補う。ただし米国の部門は、利益が大きく落ちた。
この記事では、目標と現状の差、利益の中身、弱点の三つを確かめ、面接で自分の言葉で語れる論点にする。
第1章 オリックスは何に賭けているのか
1-1. 会社が掲げた目標は「ROE15%、純利益1兆円」
ROEとは、株主から預かったお金で、どれだけ利益を出せたかを示す割合だ。オリックスは、これを最も重い経営指標に置いている。
有価証券報告書には、10年先の目標が書かれている。2035年3月期にROE15%、当期純利益1兆円。中間目標は、2028年3月期のROE11%だ。
現状との差を見る。2026年3月期は純利益4,472億円、ROE10.4%だった。前期の8.8%から上がり、中間目標まで0.6ポイントに迫っている。
28卒が入社する2028年は、この中間目標の年度の直後にあたる。
志望動機では、「2035年の目標に向かう時期に入社したい」と語れる。逆質問では、「中間目標まで0.6ポイントの現状で、いちばん伸ばしたい事業はどこか」と聞ける。
1-2. 事業の売却は一過性ではなく本業だ
直近期の利益を押し上げたのは、インドの再生可能エネルギー大手、Greenko Energy Holdingsの株式売却益831億円だ。持分を持っていた会社の株を売って得た利益である。
多くの会社では、事業の売却は一度きりの利益になる。オリックスは違う。会社を買い、価値を高め、売る。この循環を「事業価値創造」と呼び、本業としている。
だから領域を絞らない。事業は10に分かれ、総資産は18兆円に達する。投資の方向は、テクノロジーの進化、人口増加、地球温暖化の三つで整理されている。
有価証券報告書は、課題も書いている。資本効率の低い資産を持ち続けると、資本が滞留してROEが上がらない、という認識だ。
逆質問では、「Greenkoの売却益は、御社にとって一過性ではなく本業という理解でよいか」と聞ける。志望動機では、三つの投資の方向のうち、どれに関わりたいかを軸にできる。
1-3. 利益が増えた理由は、売却益と環境エネルギー
2026年3月期の純利益は、前期より27.2%増えた。
最大の要因は、前の項で見たGreenkoの売却益だ。環境エネルギー事業は、これで赤字から黒字に変わった。
その数字を見る。前期は49億円の赤字だったが、当期は1,158億円の黒字になった。
売却で稼ぐ利益は、年によって大きく振れる。リースの利ざやのように安定して稼ぐ分と、売って稼ぐ分を分けて見る必要がある。ROEが10.4%に上がった主因も、この売却益だ。
課題指摘では、「利益が売却益に支えられている分、年ごとに振れやすい」と整理できる。ROEの改善を語るときは、主因が売却益だと添えると理解の深さが伝わる。
1-4. 弱点は米国部門、来期予想は5,300億円
ORIX USAは、米州で金融・投資・資産運用を担う部門だ。利益が前期の399億円から9.5億円へ、98%減った。
主な原因は、減損の発生だ。減損とは、買収時に上乗せして払った価値などを、帳簿上で切り下げる処理をいう。ほかに貸し倒れへの備えと、経費も増えた。米国の金利や貸出先の状況が悪化した影響だ。
それでも全体は増益だった。利益が10の事業に分かれ、他の部門が補ったからだ。
来期の予想は、純利益5,300億円で、18.5%の増益だ。Greenkoのような一過性の益がなくなっても伸びる、という計画である。
配当は、配当性向39%か前期の実績の高いほうとする。配当性向とは、利益のうち配当に回す割合だ。実質的に、配当を減らさない方針といえる。
逆質問では、「ORIX USAの利益回復は、来期の増益予想にどれだけ織り込まれているか」と聞ける。課題指摘では、分散で補えた点と、米国の回復が次の論点である点を述べられる。
第2章 業界比較——多角化金融・リース業界の構造
2-1. 同じリース出身でも、戦い方が違う
リースとは、設備や車を貸して料金を受け取る事業だ。オリックスは1964年に、リース会社として創業した。
同じリース大手には、三菱HCキャピタル、東京センチュリー、芙蓉総合リースがある。三菱HCキャピタルは三菱グループを背景に、航空機・不動産・環境のリースが中核だ。東京センチュリーは伊藤忠・みずほと連携し、航空機リース、再エネ、モビリティが強みになっている。
これに対しオリックスは、リースから出発し、金融・保険・不動産・事業投資へ広げた。「投資して育てて売る」点で、他のリース会社と一線を画す。
志望動機では、「同じリース出身の他社ではなく、なぜオリックスか」への答えの材料になる。比較の軸は、グループの後ろ盾か、自前の目利きで投資する力か、とできる。
2-2. オリックスの独自性は三つある
第1は、事業領域の幅だ。生命保険、銀行、水族館や旅館の運営、関西・伊丹の空港運営、再エネ、海外の資産運用まで持つ。空港運営は、運営権を得て行う「コンセッション」という形をとる。
第2は、目利きと売却だ。有望な資産や企業に投資し、価値を高めて売る。機能としては、投資銀行や投資ファンドに近い。
第3は、分散によるリスクへの強さだ。ある事業が落ちても、他が補う。1-4のORIX USAが、その例である。
志望動機では、「幅の広さ」より「目利きで投資し、売って回収する点」を軸にすると、ブランドの話で終わらない。課題指摘では、分散が強みである一方、米国部門のような個別の弱点が残る点を挙げられる。
オリックスの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 課題1:利益の変動性/### 課題2:海外(米国)の与信・金利リスク/### 課題3:金利上昇の両面影響/### 課題4:多角化ゆえの「分かりにくさ」/### 課題5:事業ポートフォリオの新陳代謝)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 課題1:利益の変動性/### 課題2:海外(米国)の与信・金利リスク/### 課題3:金利上昇の両面影響/### 課題4:多角化ゆえの「分かりにくさ」/### 課題5:事業ポートフォリオの新陳代謝
- 第3.5章 押さえておくべきオリックス・業界の最新ニュース
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価