ジャフコ(8595)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ジャフコを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「連結子会社がゼロ」です。
有報の数字(第54期)
- 売上高
- 297億円
- 純利益
- 96億円
- ROE
- 6.9%
- 従業員数(単体)
- 133人
- 平均年間給与(単体)
- 1,366万円
- 平均年齢
- 43.0歳
- 平均勤続年数
- 13.0年
出典:ジャフコの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
※本記事の決算数字は、ジャフコ グループ株式会社が提出した第54期(2025年4月1日〜2026年3月31日)有価証券報告書に基づきます(2026年7月執筆)。
この記事は、最低3回は読み返してほしい。
自ずと「なぜジャフコ グループがこの決算になったのか」を自分の言葉で説明できるようになる。
そこまで来れば、面接で財務の話になったとき、面接官より深く踏み込める。
ジャフコ グループを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ジャフコ グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。役員を目指すなら、自社がどの数字で評価されているかを知らないままでは話にならない。
結論から言う。ジャフコは海外から手を引いて国内投資に賭け直し、その途中の決算で減益と増配を同時に出した会社だ。
知っておきたいことは3つある。
連結決算をやめた。アジア法人を2025年10月に、米国法人を2026年1月に売却し、連結子会社がゼロになった。前期との比較は、個別の決算どうしになる。
減収減益でも増配した。売上高は216億円で23.3%減。それでも1株あたりの配当は133円に引き上げた。
財務は堅いが、資本効率は低い。ROE(自己資本に対する利益の割合)は4.8%で、会社の目標は15〜20%。これを従業員133人で回している。
この記事では、決算の中身とファンドの成績表を読み、なぜこの決算になったのかを確かめる。
第1章 ジャフコは何に賭けているのか
1-1. 賭け先は「国内投資」と投資倍率3倍
2025年4月、ジャフコは海外をやめて国内投資に集中すると決めた。投資倍率(投資額に対する回収額の倍数)の目標も、2.5倍以上から3倍以上に引き上げた。
有報の基本方針には「純資産の圧縮による資本効率の向上」とある。自己資本を厚くするのが健全とされるなかで、あえて減らすと書く会社だ。
28卒が入社する2028年は、この決定から3年目にあたる。新しい目標にどこまで近づいたかが見える時期だ。
志望動機で「海外を切って国内に絞り、倍率3倍を掲げた点に魅力を感じた」と述べられる。「3年目の進捗をどう見ているか」は、そのまま逆質問になる。
1-2. ファンドへの自社出資比率を20%へ下げる
ベンチャーキャピタル(VC)の収入は2つある。自社が出したお金の値上がり益と、外部の出資者から預かった資金を運用して得る報酬だ。
会社は新規ファンドへの自社出資比率を段階的に下げ、中長期で20%にする目標を掲げている。他人のお金で報酬を得るほうが、資本効率が高いからだ。
成熟した会社を買い取って立て直し、売るバイアウト投資も柱の一つだ。有報は、事業承継の税制改正などを追い風に、さらなる拡大が見込まれると書いている。
「自社出資比率20%の目標は、値上がり益より報酬を厚くする方向という理解でよいですか」と逆質問できる。
1-3. 連結をやめた期と、減益の理由
この期の前期比は、連結ではなく個別どうしの比較だ。ここを外すと、数字を並べても面接官と話がかみ合わない。
減益の主因は、投資先の新規上場(IPO)が前期の8社から2社に減ったことだ。全体の投資倍率は下がったが、国内投資分だけを見ると2.15倍から2.76倍に上がっている。
海外の整理で受け取った配当や売却益は、一度きりの収益だ。来期は繰り返されない。
課題指摘で「IPOが8社から2社に減ったのが主因だが、国内分の倍率は上がっており、国内集中の方針とは整合している」と話せる。
1-4. 配当性向107.6%と、ROE目標15〜20%
会社は配当を、DOE6%と配当性向50%のうち大きいほうで決める。DOEとは、前期末の株主資本に対する年間配当の割合だ。当期はDOEのほうが大きく、133円になった。
その結果、配当性向は107.6%になった。稼いだ利益より多く配ったことになる。自社株買いも続けている。
自己資本比率は85.0%と高く、財務は堅い。そのぶん自己資本が重く、ROEは4.8%にとどまる。15〜20%という会社自身の目標とは差がある。配当と自社株買いは、自己資本を削る手段だ。
「還元に積極的」で終えず、「ROEの目標との差を、自己資本を減らして埋める狙いだと理解している」と話せる。逆質問にもできる。
1-5. キャピタリストを新卒から育てる
有報は、継続的な新卒採用と、専門領域のスペシャリスト採用を併用する育成モデルを掲げる。キャピタリスト(投資先を見つけ、投資し、育て、売るまでを担う人)を「投資運用力の根幹」と位置づけている。
最大の経営テーマは、ファンドパフォーマンスを持続的に向上させることだ。1件の大当たりではなく、続けて成績を出せるかが問われる。
志望動機で「新卒から育てる方針に惹かれた」と述べ、「新卒の育成で最初に任される仕事は何か」を逆質問にできる。
第2章 ファンドの成績表をどう読むか
2-1. グロス倍率とネット倍率は「時間」で読む
ジャフコの本当の成績表は、損益計算書ではなくファンドの運用成績にある。グロス倍率は投資そのものの成績。ネット倍率は、手数料などを引いたあとに出資者の手元へ戻る分だ。
2013年設立のSV-4(B)は、グロス2.38倍、ネット1.98倍と成果が出ている。一方、2022年設立のV7は分配金がまだなく、ネット倍率は0.89倍で1倍を割っている。
これは失敗を意味しない。ファンドの運用期間は10年で、さらに2年の延長期間がある。未上場株は値下がりだけを反映する評価方法のため、若いファンドは倍率が低く出やすい。
「V7が1倍を割っているのは設計上の姿で、設立年と合わせて見るべきだと理解している」と話せる。
2-2. ファンド募集力と少人数経営
ファンドは、機関投資家や事業会社から資金を集めて運用する。運用中と延長中を合わせて16本、コミットメント総額(出資の約束額)は3,128億円だ。自社の出資割合は34.7%になる。
2025年12月には、次の世代のジャフコSV8シリーズを設立した。前回のSV7シリーズを上回る総額を目標に、募集を続けている。募集の進み具合は、数年後の業績を左右する。
これを従業員133人(うち投資・ファンド管理運営業務97人)で回している。平均年間給与は1,365万円だ。
「SV8の募集状況と、少人数で運用する中での新卒の役割」を逆質問にできる。
ジャフコの構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(なぜ売上が乱高下するのか/収益源は2つ/出資比率20%への引き下げという宣言)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上216億1,900万円で23.3%減、当期純利益65億7,600万円で31.7%減。連結子会社がゼロになり非連結決算へ移行した期で、新規IPOは前期8社から2社へ。それでも配当は133円に増配し、配当性向は107.6%。自己資本比率85.0%に対しROEは4.8%。ここから先は、この数字を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ベンチャーキャピタルという業態の構造——なぜ売上が乱高下するのか/収益源は2つ/出資比率20%への引き下げという宣言
- 第3.5章 面接前に押さえるジャフコ最新ニュース10本——非連結移行、IPO2社、配当性向107.6%、SV8シリーズ募集まで
- 第4章 内定者の正体——「VCに行きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,365万円の正しい読み方、133人の会社での市場価値
- 第6章 働く環境の現実——パートナーシップモデルと、社員が自腹で出資するという仕組み
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問4本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生