大和証券(8601)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、大和証券を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「12年ぶりの最高益」です。

有報の数字(第89期)

売上高
1兆4,680億円
純利益
1,753億円
ROE
10.3%
従業員数(連結)
14,984人
従業員数(単体)
624人
平均年間給与(単体)
1,793万円
平均年齢
41.6歳
平均勤続年数
15.2年

出典:大和証券の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

大和証券グループ本社を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、大和証券グループ本社に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは大和証券グループ本社の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

結論から言う。大和証券は、相場に左右されにくい利益を増やす方向へ、会社の形を変えている最中だ。

知っておきたいことは3つある。

2024年4月に始まった中期経営計画には3つの目標がある。2年目の実績では、ROEとベース利益は目標を超えた。経常利益だけが届いていない。ROEとは、株主から預かった元手でどれだけ利益を出せたかの割合のことだ。

2026年3月期の純利益は1,752億円で、12年ぶりの最高益になった。

会社は2030年度に経常利益3,500億円以上を目指している。現状の2,345億円から約49%増える水準だ。

この記事では、数字から「会社が何に賭けているか」と「競合と何が違うか」を確かめる。面接で自分の言葉にするための材料を整理する。

第1章 大和証券グループは何に賭けているのか

1-1. 中期計画の3目標は、2つ達成、1つ未達

大和証券グループは、2024年度から2026年度の中期経営計画で3つの目標を掲げた。会社が自分で決めた物差しだ。2年目の実績は次のとおりである。

連結経常利益(会社全体の通常の稼ぎ):目標2,400億円以上に対し、実績2,345億円。未達

連結ROE:目標10%程度に対し、実績10.3%。達成

ベース利益:目標1,500億円に対し、実績1,827億円。達成

経常利益の不足は55億円だ。一方でベース利益は、目標を327億円上回った。

足りない額より、どの利益が目標を超えたかに注目したい。

面接での使い方

逆質問に使える。「経常利益だけ目標に届かなかった要因を、社内ではどう整理されていますか」と聞ける。

1-2. 稼ぎの約8割は、相場に左右されにくい利益

ベース利益とは、3つの事業の経常利益の合計だ。富裕層や法人に資産運用を提案する部門と、証券と不動産の運用会社である。

中心は、預かった資産から得る手数料だ。市場が動かない年も入り続ける。

対して、自社での売買や、企業の株・債券の発行を手伝う仕事は、当たり年と外れ年の差が大きい。

経常利益2,345億円のうち、ベース利益は1,827億円で、割合は78%になる。この比率が、会社の賭けている方向を示している。

2026年3月期は5期連続の増収、3期連続の増益だった。ただし2022年度は市況の悪化で純利益が落ち込んでおり、相場の影響は消えていない。

面接での使い方

志望動機では「利益の78%が安定した部分で、そこを厚くする方針に共感した」と言える。課題指摘では「残る約2割は相場次第だ」と指摘できる。

1-3. 買って伸ばす戦略で、資産運用を取り込む

直近の期は、買収による拡大が明確に打ち出された。会社はこれを「インオーガニック戦略」と呼ぶ。自社の内側で伸ばすのではなく、外から買って伸ばすという意味だ。

2025年7月、大和アセットマネジメントは三井物産オルタナティブインベストメンツを子会社化した。社名は「大和かんぽオルタナティブインベストメンツ」に変わっている。

オルタナティブとは、不動産やインフラ、未公開株など、株式と債券以外の投資対象のことだ。

2026年4月には、岩手銀行との協業も始めた。証券と銀行が連携し、顧客の基盤を広げる狙いだ。

企業の合併・買収を助言する業務でも、NTTによるNTTデータの完全子会社化など、多くの案件に関わった。

面接での使い方

逆質問に使える。「買った会社の社名まで自社ブランドに変える判断では、何を重視されましたか」と聞ける。

1-4. 2030年度の目標と、残る課題

CEOの中田誠司氏は統合報告書で、2030年度に経常利益3,500億円以上を目指すと明言している。現状の2,345億円から、約49%増える水準だ。

課題は2つある。1つは市況への連動で、ベース利益を厚くしても完全には消えない。

もう1つは、業務負荷だ。CEOは「企業のコーポレートアクションがますます増加していく」と述べている。コーポレートアクションとは、M&Aや自社株買いなど、企業側の動きのことだ。

件数が増えると、案件を担う部門の負担は大きくなる。人材の育成と採用が追いつかなければ、さばききれないおそれがある。

会社はまた、個別商品の販売目標と表彰制度を廃止した。「お客様の資産価値最大化」を掲げた改革の一部だ。

面接での使い方

逆質問に使える。「2030年度の目標に向けて、人材の育成と採用をどう計画されていますか」と聞ける。中期計画は2026年度までなので、次の計画の方向性も尋ねられる。

第2章 業界比較——証券大手3社の中の大和ポジション

2-1. 日本の証券業界の大手3社

独立系の証券大手は3社で、すべて上場している。

野村ホールディングス:業界首位。海外比率が高く、グローバルな投資銀行としての存在感が強い

大和証券グループ本社:業界2位の独立系。国内のウェルスマネジメントと不動産アセットマネジメントに強みがある

SBIホールディングス:ネット証券から拡大した。リテールの口座数では業界1位

三菱UFJモルガンスタンレー証券、SMBC日興証券、みずほ証券は、メガバンクの子会社だ。個別には上場していない。

面接での使い方

志望動機で「国内の個人と法人に根差した独立系」と、会社の立ち位置を一言で言える。

2-2. 大和の独自のポジション

大和の特徴は3つに整理できる。

1つ目は、独立系ゆえの自由度だ。不動産の運用や、エネルギー・インフラ投資など、グループ独自の収益源を持つ。

2つ目は、資格の厚みだ。上位資格のCFP(国際資格のファイナンシャルプランナー)の保有者は1,677名で、国内の金融機関で最多である。AFPを含めると7,288名になる。

3つ目は、店舗とネットの二段構えだ。全国182カ店の対面店舗に加え、海外22ヵ国・地域に拠点を持つ。若年層には、ネットの大和コネクト証券で向き合う。

女性取締役比率は50.0%で、MSCI ESGレーティングは最上位のAAAを3年連続で獲得した。

面接での使い方

働く側の事実として使える。「資格で裏付けるコンサルティング型の営業に魅力を感じた」と、志望動機に結びつけられる。

2-3. 「なぜ野村ではなく大和か」の答え方

この質問への回答軸は3つある。

資産価値最大化の徹底:大和は本部主導で個別商品の販売目標を廃止し、評価をコンサルティングに振り切った

ウェルスマネジメントと不動産運用の両輪:両方の収益を合わせてベース利益をつくる、国内に根差した安定成長の発想だ

女性活躍と多様性:女性取締役比率50.0%と、MSCIのAAA評価が裏付けになる

逆に、グローバルな投資銀行やトレーディングで勝負したい人には、野村のほうが向いている。大和は、国内の個人向けと法人向けの色がやや強い会社だ。

面接での使い方

志望動機の組み立てに使える。軸を1つ選び、会社の数字を1つ添えて話すと、「なぜ大和か」に具体的に答えられる。

大和証券の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(「貯蓄から投資へ」の構造変化/「資産運用立国」の中で増えるコーポレートアクション/ネット証券との競合/AI・デジタルの脅威と機会)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。純利益1,752億円で12年ぶり最高益、経常利益2,345億円は中計最終年度目標2,400億円の98%に2年目で到達、その中核をなすベース利益は1,375億円市況依存からストック収益へ、モデル転換の途中経過が数字に出ています。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。

  • 第3章 業界の構造的課題と追い風——「貯蓄から投資へ」の構造変化/「資産運用立国」の中で増えるコーポレートアクション/ネット証券との競合/AI・デジタルの脅威と機会
  • 第3.5章 面接前に押さえる大和証券グループ最新ニュース10本——個別商品の販売目標・表彰制度の廃止、CFP保有者1,677名で国内金融機関トップ、CEO中田氏の「2030年度 経常利益3,500億円」発言、MSCI ESG AAA 3年連続まで、全10本に面接活用ポイント付き
  • 第4章 内定者の正体——新卒480名(女性比率42.3%)の採用区分と、「ノルマ大丈夫ですか」で企業研究不足を露呈する理由、ファイナンシャル・サービス職のES回答テンプレと逆質問レベル1〜3
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,000〜1,100万円台の読み方と、リテール/ホールセール/アセットマネジメント/クオンツ・IT/大和総研の職種別キャリアパスと転職市場価値
  • 第6章 働く環境の現実——連結社員14,783名・182カ店・海外22ヵ国の組織像、男性育休取得率101.0%・有給取得率75.2%・月平均残業22.7時間、教育投資22.2億円(1人あたり年15万円)から読む定着の構造
  • 第7章 面接攻略——中計進捗・ベース利益・2030年3,500億円目標を組み込んだ志望動機と課題回答、逆質問5本
  • 第8章 やましゃんの総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 大和証券の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第89期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,793万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 大和証券の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第89期)では、提出会社(単体)が624人、連結が14,984人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 大和証券が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。