野村HD(8604)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、野村HDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「利益の83%は日本」です。

有報の数字(第122期)

売上高
4兆7,585億円
純利益
3,621億円
ROE
10.1%
従業員数(連結)
28,677人
従業員数(単体)
204人
平均年間給与(単体)
1,421万円
平均年齢
45.0歳
平均勤続年数
4.0年

出典:野村HDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

野村ホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、野村ホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは野村ホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、野村ホールディングス株式会社 有価証券報告書 第122期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。同社は米国会計基準を採用しています。

野村ホールディングスは、相場に左右される商売を、預り資産と海外の買収で安定させようとしている証券会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・最高益でも、目標はさらに上にある。当社株主に帰属する純利益(以下、純利益)は3,621億円で過去最高だが、会社は2026年5月に、2030年度に向けた利益目標をさらに引き上げた。
・稼ぎ頭は個人向けと法人向けの2部門だ。個人の資産を預かるウェルス・マネジメントと、法人・機関投資家向けのホールセールが、4部門の税引前利益の大半を稼ぐ。
・収益の半分は海外なのに、利益の大半は日本だ。収益の49.8%を海外が占める一方、税引前利益に占める海外は17.0%にとどまる。

この記事では、会社が何に賭け、誰が稼ぎ、どこで働くことになるのかを確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。

第1章 野村ホールディングスは何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——2030年度に向けて、利益の目標を引き上げた

会社は2030年度に向けた経営ビジョンを掲げている。数値目標は、税引前利益(税金を引く前の利益)7,500億円超と、ROE(株主のお金でどれだけ稼いだかを示す割合)10〜12%+だ。2026年5月に更新され、従来より高い。当期のROEは10.1%、税引前利益は5,398億円で、旧目標はすでに超えていた。ROE 10%とは、株主から預かった資本100に対し、年に10の利益を出す水準だ。

28卒の入社は2028年4月だ。2030年度は入社3年目にあたる。新しい目標を現場で担うのは、この世代である。

面接での使い方

志望動機では、最高益の次の目標を自分の言葉で語れる。逆質問では、達成への最初の一手を聞ける。

1-2. 賭けの中身——預り資産を積み、運用会社を買う

有報は中長期の戦略を、こう書く。「野村を今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」。その手段が「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」だ。パブリックは上場株や債券の市場、プライベートは非上場の資産を指す。

賭けは2つに分かれる。1つ目は、預り資産の積み上げだ。個人向けのウェルス・マネジメント部門は、預り資産に応じて毎年入る手数料(ストック収入)を育てている。ストック資産(預り資産のうち報酬が付くものの総額)は27.9兆円まで増え、ストック収入で部門の費用を賄える割合(カバー率)は72%に上がった。

2つ目は、運用会社の買収だ。2025年12月、米国と欧州の資産運用会社を2,888億円で買い、運用資産残高は136.9兆円になった。買収は1件で、続く案件があるかは有報からは読めない。ただ、運用の規模を買い、世界共通のブランドに束ねる入口とは言える。

ただし、成果はまだ途中だ。運用を担うインベストメント・マネジメント部門の税引前利益は、収益が増えたのに△1.4%だった。

面接での使い方

志望動機では、売買の回数でなく預り資産を積む商売に魅力を置ける。課題指摘では、買収した事業を利益につなげる道筋を論点にできる。

1-3. 利益を稼ぐのは誰か——2部門が大半、利益の出どころは日本

4部門の税引前利益のうち、ウェルス・マネジメントが2,040億円、ホールセールが2,006億円で、この2部門で約8割を占める。ウェルスは2002年3月期の部門設立以来、ホールセールは2010年4月の設立以来の最高益だ。

いっぽう、地域別に見ると偏りがある。有報は日本、米州、欧州、アジア・オセアニアの4地域で開示している。収益は日本と海外でほぼ半々なのに、税引前利益の83.0%は日本が稼いだ。海外では、欧州が△311億円の赤字だった。地域区分は法人の所在国が基準で、有報も厳密な区分は難しいと断っている。

「グローバル金融グループ」という看板と、利益の出どころには差がある。海外の存在感は、収益ではなく利益で見る必要がある。この差が、第3章の論点の出発点になる。

面接での使い方

課題指摘として、海外で利益が出にくい点を論点にできる。逆質問では、海外で利益を出す順番を聞ける。

1-4. 働く側の事実——就活生が入るのは野村證券

連結従業員は28,677人。ただし、有報の「提出会社」である持株会社は204人にすぎない。持株会社とは、グループ各社の株式を持ち、経営を管理する会社のことだ。就活生が入社するのは、中核の野村證券である。

野村證券の従業員は11,076人で、別に臨時従業員が2,274人いる。平均年齢は42歳2か月、平均勤続年数は15年10か月。平均年間給与は1,325万3,240円で、前期比6.3%増だった。賞与と基準外賃金(残業代など)を含む数字である。

面接での使い方

志望動機では、中核会社の一員として働く意味を語れる。逆質問では、若手の育成期間と最初の配属の決まり方を聞ける。

第2章 証券業の収益構造

2-1. 証券会社の収入は「売買のたび」と「預かっている間」の2種類

個人向けの収入は、2つの性格を持つ。ひとつは、株や投資信託を売買するたびに入る手数料(フロー収入)。相場が盛り上がると増え、冷えると減る。もうひとつは、預り資産の残高に応じた手数料(ストック収入)で、相場の影響を受けにくい。株価が急騰した月はフローが膨らみ、相場が静かな月はストックが収入を支える。

投資信託の残高に応じた報酬は前期より増えた。当期は株式の売買手数料も伸びたが、会社が育てたいのはストックだ。

面接での使い方

志望動機では、フローとストックのどちらで顧客と付き合いたいかを語れる。逆質問では、フローが減る局面でのストックの厚みを聞ける。

2-2. 法人向けは「相場の中で売り買いの相手を務める」商売

ホールセールは、債券や株の売買で相手方となるグローバル・マーケッツと、M&Aの助言や資金調達を手伝う投資銀行業務からなる。流動性を提供するとは、顧客が売りたいときに買い手に回り、買いたいときに売り手に回ることだ。売買を成立させるために自社の資本を使うので、利益は相場とリスク管理に左右される。費用も重く、収益に対する費用の割合(経費率)は83%だ。当期は業績連動の賞与が増えた。この構造で働く人の報酬は、会社の業績に連動して動く。

面接での使い方

志望動機では、相場の変動の中で顧客に流動性を届ける仕事を選ぶ理由を語れる。課題指摘では、費用の重さを論点にできる。

2-3. 運用会社は「預かった額」に報酬率をかけて稼ぐ

運用資産残高とは、運用会社が顧客から預かって運用している資産の総額だ。運用会社の収入は、この残高に報酬率をかけて決まる。有報は、報酬率への下方圧力が続くと認める。だから会社は、残高を増やすことと、報酬率の高い非上場資産(オルタナティブ)へ広げることを課題に挙げる。

残高の規模を一気に積むには、自前で育てるより買うほうが早い。買収の意味は、ここにある。

面接での使い方

志望動機では、運用の規模と専門性のどちらで貢献したいかを語れる。逆質問では、報酬率の下落をどう補うかを聞ける。

野村ホールディングスの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(最高益の質/買収した運用会社の統合/海外の稼ぐ力/資本・株主還元・規制の綱引き)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

■この会社の面接で落ちる人の共通点
「グローバルに活躍したいです」と言ったあとに、面接官から「海外は収益の約半分ですが、税引前利益では17.0%です。その差をどう見ますか」と返されて、言葉が止まる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。

■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「税引前利益に占める海外の割合は17.0%で、欧州は△311億円でした。海外で利益を伸ばす順番を、地域ごとにどう描いていますか。」
必要な数字は、17.0%と△311億円の2つだ。残り6本は、新目標までの上積み、運用会社の統合、ストック収入、資本配分、若手の育成、バンキング部門を、同じ型で組んである。

ここまでが無料パートです。純利益は3,621億円で過去最高、ウェルス・マネジメント2,040億円とホールセール2,006億円が稼ぎ頭、収益の49.8%は海外なのに税引前利益では17.0%、野村證券の平均年間給与は1,325万円(+6.3%)——野村ホールディングスの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 証券業の構造的課題——最高益の質/運用会社の統合/海外の稼ぐ力/資本の綱引き
  • 第3.5章 面接前に押さえる野村ホールディングスの最新ニュース10本——2026年4〜6月期の純利益1,456億円まで。1本ごとに「面接で使うなら」
  • 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別・ROEの分解・財務・リスク
  • 第4章 内定者の正体——「グローバルに活躍したい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,325万3,240円の読み方と、部門別のキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続15年10か月、女性役員比率16.67%、雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(狙いつき)
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 野村HDの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第122期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,421万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 野村HDの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第122期)では、提出会社(単体)が204人、連結が28,677人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 野村HDが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。