第一ライフグループ(8750)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、第一ライフグループを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「利益は2つある」です。
有報の数字(第124期)
- 純利益
- 4,366億円
- ROE
- 11.1%
- 従業員数(連結)
- 60,138人
- 従業員数(単体)
- 702人
- 平均年間給与(単体)
- 1,143万円
- 平均年齢
- 39.0歳
- 平均勤続年数
- 10.0年
出典:第一ライフグループの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
第一ライフグループを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、第一ライフグループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは第一ライフグループの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社第一ライフグループ(2026年4月1日に第一生命ホールディングス株式会社から商号変更) 有価証券報告書 第124期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日公表)に基づきます。
結論から言う。第一ライフグループは、国内で株を売って作った資本を、海外と資産運用に振り向ける会社だ。
知っておきたいことは3つある。
この会社には利益が2つある。会計上の純利益は4,365億円で前期比△4.8%と減った。一方、グループ修正利益は5,515億円で+25.5%と増えた。修正利益は、有報が「株主還元の原資となる当社独自の指標」と定義する利益で、配当も中期経営計画(中計)の目標もこれで決まる。
賭けは「海外」「資産運用」「国内株の削減」の3つだ。当期の増益は、このうち株の売却が前倒しで進んだ結果である。
本業は保障から貯蓄へ動いている。個人保険の保有契約は減り、個人年金は増えた。
この記事では、この3点を有報の記述で確かめる。
第1章 第一ライフグループは何に賭けているのか
1-1. 2030年度までの賭けは3つ——海外・資産運用・株の削減
有報は2030年度の到達点を、「グローバルトップティアに伍する保険グループになること」と書く。数字では、利益目標が7,000億円だ。当期の修正利益は5,515億円で、ここから積み増す計画になる。
賭けは3つに絞れる。1つ目は海外で、保険事業に占める海外比率を2030年度に50%へ上げる。2つ目は資産運用だ。事業区分名から「保障」が消え、「アセットマネジメント事業」が入った。3つ目は市場リスクの削減で、国内株式を3年間で1.2兆円減らす。
志望動機では「国内の資本を海外と資産運用に振り向ける会社」と言い切れる。逆質問では、7,000億円に海外50%がどれだけ効くのかを聞ける。
1-2. 賭けは実行されている——1年で4社に出資し、1社を手放した
当期の有報には5件の取引が並ぶ。英国の運用会社Capulaと、資産運用・保険のM&Gに出資した。豪州子会社は年金保険のChallengerの19.9%を取得した。米国子会社は損害保険のPortfolio Holdingを買収した。
出資先は運用会社や年金会社で、保険以外の領域に寄る。自社ブランドには統合せず、持分を持って運用ノウハウと商品を結ぶ型だ。一方、タイのオーシャンライフは株式を創業者一族に譲り、15年以上続いた提携を解消した。
過去に買った資産は重い。のれん(買収価格のうち、相手の純資産を超えた分)など無形固定資産は合計8,242億円で、純資産の19.4%にあたる。最大はベネフィット・ワン(福利厚生サービス)の買収だ。
志望動機では、買い切らずに運用に強い会社と組む戦い方を、具体的な出資先を挙げて語れる。課題指摘では、買った資産の評価が重い点を取り上げられる。
1-3. 増益の中身は本業ではなく運用だった
修正利益が増えた理由を、有報は有価証券売却益の増加と書く。あわせて、債券の入替えとオルタナティブ資産(株や債券以外の運用資産)の増配で、順ざや(運用利回りと約束利回りの差)が増えたとする。いずれも運用側の要因だ。国内株の削減が計画を上回って進み、売却益が前倒しで出た。
第一生命単体の基礎利益(保険本業の期間収益)は+3.5%にとどまる。修正利益の+25.5%との差が、一過性の大きさだ。売却益は一巡するため、会社は売却益に頼らない利益へ入れ替えようとしている。
「減益でしたね」ではなく「修正利益は増益でしたね」と、会社の言葉で話せる。課題指摘では、売却益に頼らない利益へ移れるかを論点にできる。
1-4. 本業は保障から貯蓄へ動いている
第一生命単体の個人保険の保有契約高は△4.0%と減った。個人年金保険(貯蓄性の商品)は+8.3%と増えた。新契約高も同じ向きで、個人保険は減り、個人年金は増えている。
会社は、万一に備える「保障」と将来に備える「資産形成・承継」は密接不可分だと説明する。そのうえで事業区分名から「保障」を外した。生命保険会社の本業は保障だが、伸びているのは貯蓄だ。
課題指摘では、保障の需要が減るなかで何を売るのかを論点にできる。逆質問では、区分名から「保障」を外した理由を聞ける。
1-5. 中計は前倒しで達成、次の中計に入社する
2024〜2026年度の中計は、修正利益の目標4,500億円に対し、当期は5,515億円だった。2027年3月期の見通しは5,600億円で、次期中計を見据える重要な1年と位置づけられている。28卒が入社する2028年4月は、次の中計の2年目にあたる。配当性向(利益のうち配当に回す割合)の目安も、50%以上に引き上げた。
働く側の数字も押さえる。連結の従業員は60,138名だ。持株会社は702名で、運用執行機能を集約して337名増えた。平均年齢は39歳1ヶ月、平均年間給与は1,142万円。最大人員の第一生命保険は46,447名で、47歳0ヶ月、517万円である。
志望動機では「次の中計の実行期に入社する」と時期を示せる。逆質問では、次期中計で海外と資産運用の比率をどう置くのかを聞ける。
第2章 生命保険という産業の収益構造
2-1. 利益は「3つの差」から生まれる
生命保険会社は、預かった保険料を運用し、保険金を払う。利益は3つの差から生まれる。死亡率が予定より低ければ「死差益」、事業費が予定より少なければ「費差益」。運用利回りが予定利率(契約者に約束した利回り)を上回れば「利差益(順ざや)」だ。
第一生命の順ざやは1,693億円で、運用利回りと平均予定利率の差は0.66ポイントだ。金利が上がれば順ざやは膨らみ、下がれば逆ざやになる。1990年代の生命保険会社の経営危機は、この逆ざやだった。
金利上昇が追い風になる理由を、順ざやで自分の言葉で説明できる。志望動機の根拠として使える。
2-2. 会計利益は市場で揺れる——だから修正利益がある
当期の責任準備金等繰入額は、1兆8,149億円に膨らんだ。責任準備金は、将来の保険金支払いに備えて積む資金だ。第一フロンティア生命で円建商品の販売が増え、円安が進んだことが理由である。為替が動けば、同じ契約でも会計上の費用は大きく動く。
だから会社は修正利益を使う。会計利益は株主総会で報告する数字で、修正利益は配当を決める数字だ。海外保険事業は、会計上の利益が半減した一方、修正利益では増えた。
業績を語るときに会計利益か修正利益かを明示すると、数字を読める学生に見える。課題指摘でも、どちらの数字かを確認する癖が武器になる。
2-3. 営業職員と上場——売り方と経営の向き
第一生命保険の46,447名の大半は、営業職員の「生涯設計デザイナー」だ。有報は持株会社との給与差の理由に、入社年次が浅く賃金が低い層の割合が高い点を挙げる。チャネルも分かれる。営業職員が売るのは保障で、第一フロンティア生命が銀行窓口で売るのは貯蓄性商品だ。保有契約の変化は、売り方の変化でもある。
第一生命は2010年に株式会社化して上場した。日本生命や明治安田は相互会社で、株主がいない。株主に説明する義務があり、その圧力が海外M&Aと株式売却を動かしている。相互会社は契約者のために内部留保を厚くし、株式会社は株主のために資本効率を上げる。
志望動機では、「なぜ日本生命ではなく第一生命か」に、株主への説明責任が経営を動かす点で答えられる。
第一ライフグループの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(売却益は一巡する——7,000億円の中身をどう作るか/買った資産が純資産の19.4%——減損の可能性/保障が減り続けている/不祥事と信頼——有報が自分で書いている)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。純利益△4.8%と修正利益+25.5%という2つの利益、ROE11.1%の3分解で動いたのは純利益率、海外比率を2030年度に50%へ、買った資産は純資産の19.4%、個人保険の保有契約は2兆6,610億円減。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 第一ライフグループが抱える構造的課題——売却益は一巡する——7,000億円の中身をどう作るか/買った資産が純資産の19.4%——減損の可能性/保障が減り続けている/不祥事と信頼——有報が自分で書いている
- 第3.5章 面接前に押さえる第一ライフグループの最新ニュース10本——第1四半期の修正利益+113%、M&G15%取得完了、ESR206%への低下まで
- 第4章 内定者の正体——「一生涯のパートナーとして人に寄り添いたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——持株会社1,142万6千円と第一生命517万円の読み方と、連結60,138名でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続10年11ヶ月の読み方、女性管理職31.4%と女性役員26.6%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生