東急(9005)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、東急を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「鉄道は営業収益の2割」です。

有報の数字(第157期)

売上高
1兆862億円
純利益
871億円
ROE
10.0%
従業員数(連結)
24,262人
従業員数(単体)
1,551人
平均年間給与(単体)
903万円
平均年齢
42.0歳
平均勤続年数
12.0年

出典:東急の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

東急を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、東急グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは東急の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、東急株式会社 有価証券報告書 第157期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

東急は鉄道会社の顔をしているが、稼ぎの中心は不動産と生活サービスだ。いま会社は、利益の大きさより効率を重く見る経営へ軸を移している。

知っておきたいことは3つある。

営業収益1兆861億円のうち、鉄道・バスの交通事業は20.9%にとどまる。最大は生活サービス事業だ。

純利益は、コロナ禍の底の90億円から871億円まで戻った。人の移動と消費が回復した結果である。

会社は3か年の中期経営計画で4,900億円の投資を掲げた。重視する指標も「規模」から「資本効率」に切り替えた。

この記事では、会社が何に賭けているのかと、その賭けが数字のどこに表れているのかを確かめる。

第1章 東急は何に賭けているのか

1-1. 重視する指標を「規模」から「効率」に替えた

有価証券報告書の「経営方針」を読むと、会社は当期に経営指標そのものを入れ替えている。従来は営業利益など、事業の大きさを測る指標を重く見ていた。今はEPS・ROE・ROAの3つを最も重視すると書いている。

EPSは1株あたりの利益のことだ。ROEは、株主から預かったお金でどれだけ稼いだかを示す比率である。ROAは、会社の全資産でどれだけ稼いだかを示す比率である。

会社は自社の「株主資本コスト」も5.7〜7.9%と開示している。これは、株主が最低限期待する利回りのことだ。当期のROEは10.0%で、この範囲を上回っている。

会社が目指す姿は、「交通/不動産を軸とした事業間シナジーと再投資により持続的成長を実現する長期循環型事業」だ。鉄道を敷き、街をつくり、その利益で次の街をつくる。東急が長年やってきたことを、そのまま言葉にしている。

面接での使い方

志望動機に使える。「規模より資本効率を重視する姿勢に共感した」と、会社自身の言葉を根拠にして語れる。

1-2. 4,900億円の投資と、あえて下げた目標ROE

中期3か年計画は2024年度が始期で、当期は2年目にあたる。最終年度は2027年度だ。会社はこの3年を「再起動の期間」と位置づけている。投資計画は合計4,900億円で、鉄道事業と成長投資にそれぞれ1,800億円を充てる。守りと攻めを同じ規模で回す設計だ。

注目したいのは目標の並び方である。2027年度の目標ROEは9.3%で、当期より低い。純利益は920億円へ増える。それでもROEが下がるのは、利益の積み上げで自己資本がそれ以上に増えるためだ。

会社はこれに対し、自己株式取得200億円と、総還元性向40%を目安に掲げた。総還元性向とは、利益のうち株主に返す割合のことだ。

28卒の入社は2028年4月で、この計画が終わった直後にあたる。

面接での使い方

逆質問に使える。「ROEの目標が下がる中で、利益をどう伸ばす計画か」と聞けば、計画の中身まで読んでいることが伝わる。

1-3. 鉄道は2割、稼ぎ頭は不動産

セグメント(事業区分)ごとの利益を見ると、最大は不動産事業の435億円だ。全社のセグメント利益の42.5%を占める。交通事業は273億円で、前期より減った。輸送人員は増えたが、安全投資と設備更新の負担が重いためだ。

人員の配置も鉄道会社のイメージとは違う。連結の従業員は24,262人で、最多は生活サービスの8,838人だ。交通は7,394人で、その次になる。東急本体の従業員は1,551人しかいない。多数の事業会社を束ねる形の会社だと分かる。

面接での使い方

課題指摘に使える。「利用者が増えても交通は減益になる」という点を示し、自分がどう貢献するかにつなげられる。配属先の多くが事業会社になる点も、志望動機で意識しておきたい。

第2章 鉄道・不動産業の収益構造

2-1. 鉄道は街に人を集める装置、利益は渋谷の不動産から

私鉄のモデルは、郊外に鉄道を敷くところから始まる。沿線を住宅地として開発し、住んだ人が鉄道に乗り、駅前の商業施設で買い物をする。東急は田園調布の開発から始め、渋谷や二子玉川の駅前を再開発してきた。

不動産事業の利益率は16.6%で、交通事業より高い。利益率とは、営業収益に対する利益の割合のことだ。しかも総資産の44.5%を、不動産事業の資産が占める。渋谷スクランブルスクエア、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリームのように、人が集まる場所にビルを持つ。そこから賃料が毎年入る。

つまり鉄道は、それ自体で稼ぐというより、街に人を集める装置として働く。

面接での使い方

志望動機に使える。「鉄道と街づくりを一体で動かせる点に惹かれた」と、事業の仕組みを根拠に語れる。

2-2. インバウンドとホテルの回復

第157期で最も伸びたのはホテル・リゾート事業で、利益は46.0%増えた。都心のホテルで訪日外国人の需要を取り込み、客室平均単価は26,681円まで上がった。自社で建物を持たず、ブランドとノウハウだけを提供するフランチャイズ契約での出店も進めている。

鉄道会社にとって、一人の観光客は乗客であり、宿泊客であり、買い物客でもある。複数の事業で収益を得られるのは、沿線経営モデルの応用形だ。

面接での使い方

逆質問に使える。「インバウンドの需要を、鉄道や商業施設とどう結びつけているか」と聞けば、事業間の連携という会社の論点に踏み込める。

東急の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(交通事業の減益——安全投資という終わらないコスト/人口減少と沿線の成熟/労働力不足——バス運転士の外国人採用/不動産偏重というリスク)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。営業収益1兆861億円、純利益871億円(5期で9.6倍)、ROE 10.0%、交通事業は営業収益の20.9%、利益の最大は不動産435億円、ホテルは客室単価26,681円で利益+46.0%——東急の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 鉄道・不動産業の構造的課題——交通事業の減益——安全投資という終わらないコスト/人口減少と沿線の成熟/労働力不足——バス運転士の外国人採用/不動産偏重というリスク
  • 第3.5章 面接前に押さえる東急の最新ニュース10本——新空港線認定・連続立体交差・タッチ決済まで
  • 第4章 内定者の正体——「まちづくりがしたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——単体1,551人・平均年収903万円の読み方と、連結2.4万人でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——女性役員比率15.4%の他社比較、平均年齢42歳の意味、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 東急の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第157期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は903万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 東急の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第157期)では、提出会社(単体)が1,551人、連結が24,262人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 東急が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。