京急(9006)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、京急を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「レジャーが鉄道を上回った」です。

有報の数字(第105期)

売上高
3,042億円
純利益
275億円
ROE
7.2%
従業員数(連結)
8,177人
従業員数(単体)
2,921人
平均年間給与(単体)
723万円
平均年齢
40.0歳
平均勤続年数
17.0年

出典:京急の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

京浜急行電鉄を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、京浜急行電鉄に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは京浜急行電鉄の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、京浜急行電鉄株式会社 有価証券報告書 第105期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

京急は、鉄道会社でありながら鉄道以外の事業のほうが高い利益率を出し、不動産を「持つ」から「売って回す」へ切り替えようとしている会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・鉄道より、レジャー・サービス事業のほうが利益率(売上のうち利益として残る割合)が高い。レジャー・サービス事業は16.08%、交通事業は15.37%だ。
・当期は、経常利益(本業に利息などを加えた利益)が17.5%減ったのに、純利益は13.1%増えた。差を埋めたのは、品川の国道用地などを売った利益だ。
・会社は不動産を売って現金に変え、運営は続ける方針に切り替えた。2029年度までに1,500億円以上を現金化する可能性を精査している。

この記事では、京急が何に賭け、どこに課題があるかを、面接で自分の言葉で語れる形で確かめる。

第1章 京浜急行電鉄は何に賭けているのか

1-1. 会社が賭けているもの——不動産を「持つ」から「回す」へ

有報(会社が国に提出する年次報告書)は、最大の転換は不動産事業のやり方だと書いている。長く持ち続ける賃貸から、売って現金にし、次の投資に回す「回転型事業」へ、本格的に移るという。

私募ファンドと私募リート(投資家から資金を集めて不動産を持つ仕組み)も使う。2030年度までに総額1,000億円以上の運用資産を目指す方針だ。

売っても関係は切らない。物件は手放すが、運営は続けて手数料を得る。資産は軽くなり、収益は残る。

もう一つの軸が「沿線価値共創」だ。鉄道が人の移動を生み、不動産やレジャーが移動の目的を生む。互いに需要を高め合う考え方である。当期は経営資源の集中のため、タクシー6社の全株式も他社に譲渡した。

面接での使い方

志望動機で「売って軽くしながら沿線の価値を高める戦略に共感した」と語れる。逆質問では「どの物件を売り、どの物件を持ち続けるのか」と聞ける。

1-2. 当期決算——本業は減益、純利益は売却益で増えた

当期は利益の方向が途中で変わっている。経常利益は17.5%減ったのに、純利益は13.1%増えた。

理由は特別利益にある。品川駅西口の国道用地の譲渡などで、固定資産売却益(土地や建物を売った利益)が197億円出た。前期の84倍である。

一方で、減損(価値が下がった資産を帳簿上で切り下げること)も101億円出した。うち51億円が不動産事業だ。

資産を売って利益を出し、別の資産を減損した決算といえる。増益の中身は本業ではなく資産売却だと読める。

面接での使い方

課題指摘では「増益の中身は売却益で、本業は減益だ」と事実を踏まえて語れる。逆質問は「売却益に頼らず本業の利益を伸ばす計画はあるか」が使える。

1-3. 事業の明暗——伸びるレジャー、縮む不動産と流通

レジャー・サービス事業は、利益が12.4%増え、5事業で最も伸びた。設備投資も118億円に増やしている。会社が伸びる事業に資金を向けていることが分かる。

逆に、不動産事業は利益が32.4%減った。営業収益も減り、減損の半分を占めている。3つの数字が同じ方向を向いている。

流通事業はセグメント資産(事業が持つ資産)が60.2%減った。整理・縮小が進んだと読める。正社員860人に対し、臨時従業員は1,590人いる。

交通事業は資産が増え、設備投資も続いている。縮む事業と伸ばす事業が、はっきり分かれている。

面接での使い方

課題指摘では「不動産と流通の立て直しに貢献したい」と、自分の役割につなげられる。逆質問は「縮小する事業と伸ばす事業は、何を基準に分けるのか」が使える。

1-4. 時間軸——28卒が入るのは次の中期経営計画の中

第20次総合経営計画は2024年度に始まった。長期ビジョンの実現年度は2040年度だ。

中期経営計画の期間は2024〜2026年度で、2025年5月に見直しが公表された。当期の2025年度は、その2年目にあたる。

28卒の入社は2028年4月で、次の中期経営計画の期間に入る。2029年度までの現金化の精査は、入社2年目の頃に当たる。

面接での使い方

志望動機で「次の中計の期間に、入社して戦略の実行側に立ちたい」と語れる。逆質問は「次の中計で不動産の回転型事業をどう位置づけるか」が使える。

1-5. 働く側の事実——人は減り、年収は同業で低め

連結従業員は8,177人で、そのうち交通事業が4,855人と約6割を占める。不動産事業は430人と少ない。

5期でみると、連結従業員は8.5%減った。それでも営業収益は伸びている。

平均年齢は40歳9か月、平均勤続年数は17年11か月だ。平均年間給与は722万円で、前期より増えたが、比較した私鉄の中では最も低い。

面接での使い方

課題指摘で「少人数の不動産部門が会社の資本効率を左右している」と語れる。逆質問は「処遇の改善と人員配置の考え方」が使える。

第2章 鉄道業の収益構造

2-1. 羽田空港という、他社にない資産

品川・横浜から羽田空港へ直通する路線を持つのは京急だけだ(東京モノレールを除く)。羽田空港駅の輸送人員は、前期比5.4%増えた。

訪日客の増加は、運賃収入だけでなく、ホテルなどのレジャー・サービス事業にも効く。当期のレジャー・サービス事業の増益には、この流れがある。

一方で、羽田への依存はリスクにもなる。感染症や災害で航空需要が落ちれば、複数の事業が同時に影響を受ける。コロナ禍の第101期に業績が落ち込んだのが、その例だ。

面接での使い方

志望動機で「羽田という立地が複数の事業を支えている点に惹かれた」と語れる。逆質問は「航空需要の変動に備えた打ち手は何か」が使える。

2-2. 同業比較——規模は小さく、鉄道の効率は高く、処遇は低め

比較した私鉄4社の中で、京急は営業収益が最も小さい。京王の約6割にとどまる。

一方、営業利益率(売上に占める本業の利益の割合)は11.03%で、小田急に次ぐ2位だ。交通事業の利益率も小田急に次ぎ、京王を大きく上回る。

不動産事業の人数も、京王640人、小田急1,779人に対し、京急は430人と少ない。

年収は4社で最も低い。ただし平均年齢は40歳9か月と若い。規模は小さく、鉄道の効率は高く、処遇は低め。これが4社の中での京急の位置だ。

面接での使い方

志望動機では「小さな規模でも効率の高い会社で、自分の貢献が見えやすい」と語れる。逆質問は「効率の高さを処遇にどう反映していくか」が使える。

京急の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(費用の増加が、増収を打ち消している/不動産事業——減損50億円、利益率9.18%/流通事業——利益率2.54%、資産は60.2%減/2期連続のフリーキャッシュフロー・マイナスと、300億円の自社株買い)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。営業収益3,041億円(+3.5%)に対し費用が124億円増えて営業利益は335億円(△5.9%)、支払利息+33.0%と支払手数料38.2倍により経常利益は288億円(△17.5%)、それでも固定資産売却益197億円(前期の84.0倍)で純利益は274億円(+13.1%)、セグメント利益率はレジャー・サービス事業16.08%が交通事業15.37%を上回り不動産事業は△32.4%減益で減損50億円(全社の50.4%)、流通事業は利益率2.54%で資産が△60.2%、2期連続でフリーキャッシュフローがマイナス、そして2027年3月期は不動産流動化により経常+52.5%の計画と300億円の自社株買い——京浜急行電鉄の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 鉄道業の構造的課題——費用の増加が、増収を打ち消している/不動産事業——減損50億円、利益率9.18%/流通事業——利益率2.54%、資産は60.2%減/2期連続のフリーキャッシュフロー・マイナスと、300億円の自社株買い
  • 第3.5章 面接前に押さえる京浜急行電鉄の最新ニュース10本——レジャー16.08%・減損50.4%・2027年計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「羽田があるから」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収723万円の読み方と、5セグメントのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——5期で従業員8.5%減、単体の91.4%が交通事業、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 京急の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第105期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は723万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 京急の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第105期)では、提出会社(単体)が2,921人、連結が8,177人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 京急が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。