小田急(9007)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、小田急を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「人は4分の1、利益は半分」です。

有報の数字(第105期)

売上高
4,187億円
純利益
374億円
ROE
7.6%
従業員数(連結)
11,656人
従業員数(単体)
3,685人
平均年間給与(単体)
827万円
平均年齢
43.5歳
平均勤続年数
22.0年

出典:小田急の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

小田急電鉄を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、小田急電鉄に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは小田急電鉄の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、小田急電鉄株式会社 有価証券報告書 第105期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

小田急は、株主への還元を厚くしながら、2030年度に本業の利益(営業利益)800億円以上を目指す会社だ。

知っておきたいことは3つある。

第105期(2026年3月期)は、本業が伸びたのに純利益が28.1%減った。前期にあった子会社株の売却益が消えた反動で、実質的な悪化ではない。

稼ぎ手は鉄道と不動産で、利益率はほぼ同じだ。百貨店やホテルなどの生活サービス業だけが低い。

連結従業員は5期で1割以上減った。一方で、平均勤続は22.0年と長い。

この記事では、小田急が何に賭け、どこで稼ぎ、鉄道がなぜ高い利益率を出せるのかを数字で確かめる。

第1章 小田急電鉄は何に賭けているのか

1-1. 賭けの中身——2030年度に向けた会社自身の目標

有報の「経営方針」に、会社自身が決めた目標がある。2030年度に、営業利益を800億円以上にする。ROEは10%以上にする。

ROEとは、株主から預かったお金で、1年にどれだけ純利益を出せたかを示す率だ。第105期は7.6%だった。目標との差が、そのまま会社の課題になる。

目標の中に、他社では珍しい一行がある。2030年度までに自己資本比率を30%に圧縮すると書いているのだ。2025年度末は36.4%だった。自己資本比率とは、総資産のうち返さなくてよいお金の割合を指す。

多くの会社は、この比率を高めると書く。小田急は逆に、意図して下げる。目的はROEを上げることだ。分母にあたる自己資本を抑えれば、同じ利益でも率は上がる。株主への還元もすでに目標を上回る見込みで、総還元性向(利益のうち株主に返す割合)は56%である。

事業面の賭けは観光とホテルだ。観光は2030年度に観光収益1,200億円を目指す。特急料金の見直しなどで、1人あたりの支払額も上げる方針だ。物価が上がれば宿泊料を動かしやすいホテルも、強化の対象にしている。

28卒の入社は2028年4月だ。2030年度のゴールの2年前にあたる。

面接での使い方

志望動機では「2030年度の営業利益800億円以上という目標に、観光の収益づくりで貢献したい」と言える。逆質問では「自己資本比率を下げていく中で、若手に期待する役割は何ですか」と聞ける。

1-2. 純利益が減った理由——本業は伸びている

第105期の営業利益は、前期より2.4%増えた。営業収益(売上にあたる額)は小幅に減った。ただし、前期に一部の事業で13か月分を連結した反動である。

増益の理由は、販売費及び一般管理費(販管費)を減らしたことだ。運輸業などの営業費はほぼ横ばいだった。販管費の削減が、そのまま増益になった。

純利益は28.1%減った。前期にUDS株式会社の株式を外部に売った利益があり、その反動だ。減益は実質的な悪化ではない。

気になる点も2つある。1つは減損損失(資産の価値を引き下げる損失)だ。その98.1%が生活サービス業で出た。もう1つは借入である。支払利息が前期より27.4%増えた。

面接での使い方

課題指摘で「減益は前期の売却益の反動で、営業利益は増えている」と整理して語れる。逆質問では「借入が増える中で、株主還元と設備投資をどう両立させますか」と聞ける。

1-3. 稼ぎ手は鉄道と不動産——人が多い事業ほど利益率は低い

事業は3つに分かれる。交通業(鉄道・バスなど)の利益率は16.28%だ。不動産業もほぼ同じ水準になる。

一方、百貨店・ストア・ホテルなどの生活サービス業は4.83%にとどまる。第105期は営業利益が減り、減損損失も多く出た。

従業員1人あたりの営業利益は、不動産業が870万円、交通業が432万円だ。不動産業は交通業の約2倍を稼ぐ。

生活サービス業は、パート・アルバイトなどの臨時雇用者が正社員より多い。最も人が関わる事業が、最も利益率が低い。ただし、切り離せる事業ではない。沿線に人を住まわせ、移動させる装置だからだ。

面接での使い方

志望動機では「鉄道と不動産で沿線の価値を高めたい」と軸にできる。課題指摘では、生活サービス業の利益率の低さを挙げ、自分が貢献できる点につなげられる。

1-4. 働く側の事実——人員は減り、勤続は長い

連結の従業員は、5期で13,272人から11,656人に減った。減少率は12.2%だ。

小田急電鉄の単体は3,685人で、約8割が交通業にいる。不動産や生活サービスの大半は、子会社で行われている。

平均年間給与は827万円だ。平均年齢は43.5歳、平均勤続は22.0年である。長く勤める人が多い会社だといえる。

面接での使い方

志望動機では、長く働ける環境を数字で裏づけて話せる。逆質問では「人員が減る中で、業務の効率化をどう進めていますか」と聞ける。

第2章 鉄道業の収益構造

2-1. 鉄道が高い利益率を出せる理由

交通業の利益率は、製造業の多くが1桁なのと比べて高い。理由は3つある。

1つ目は、競争がないことだ。新宿〜小田原間に並行する鉄道は他になく、事実上の独占である。運賃は国土交通大臣の認可が要る。

2つ目は、費用の大半が固定費であることだ。乗客が1人増えても費用はほとんど増えない。増えた分が、ほぼそのまま利益になる。3つ目は、通勤・通学の需要が景気に左右されにくいことだ。

この構造は逆にも働く。乗客が減れば、減った分が利益から消える。コロナ禍の第101期(2022年3月期)は、純利益が121億円まで落ちた。第105期は輸送人員が増え、交通業の営業利益は11.4%増えた。

面接での使い方

志望動機では、乗客数が利益に直結する構造を挙げ、沿線の人を増やす仕事に関わりたいと話せる。課題指摘では、乗客が減ると利益も減る点を論点にできる。

2-2. 「沿線」というモデル——1つの需要を3つの事業で受け止める

有報は、鉄道を軸に、沿線で不動産やホテル、レストランなどを営むと書いている。沿線に人が住み、電車に乗り、駅前で買い物をする。1つの需要を、3つの事業で受け止める形だ。

収益は、交通業と生活サービス業がほぼ並ぶ。だが営業利益では、交通業が4倍近い。生活サービス業は、利益を稼ぐ事業というより、沿線の価値を保つ装置である。

不動産業は、鉄道が生んだ土地の価値を回収する役割を持つ。第105期は減益だったが、2027年3月期は不動産事業の拡大が見込まれている。

面接での使い方

志望動機では「鉄道・不動産・生活サービスをつなぐ沿線づくり」に関わりたいと話せる。逆質問では「2027年3月期の不動産事業の拡大は、何が柱ですか」と聞ける。

2-3. 決算の読み違いを防ぐ——工事負担金等受入額

鉄道会社の決算には、公共工事に伴う項目が出る。踏切をなくす連続立体交差事業などでは、費用の多くを自治体が負担する。この受取が工事負担金等受入額で、特別利益(その期だけの利益)に入る。

受け取った分だけ、固定資産の帳簿上の価値を減らす処理をする。この損失が固定資産圧縮損で、第105期は62億円だった。受け取った負担金とほぼ同額で、相殺される。

特別損失(その期だけの損失)は前期より大きく増えた。だが、そこには圧縮損も含まれる。数字だけで、悪化と決めつけてはいけない。

面接での使い方

課題指摘で「特別損失の増加は、圧縮損や減損の内訳まで見て判断した」と語れば、決算を読める学生だと伝わる。

小田急の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(生活サービス業——収益△6.0%、利益△15.5%、減損の98.1%/2期連続でフリーキャッシュフローがマイナス/女性管理職7.3%と、男性育休98.7%/2027年3月期は経常△11.3%の減益計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。営業収益4,187億円(△0.9%)の減収ながら販管費△6.8%により営業利益は526億円(+2.4%)・経常利益540億円(+7.0%)と増益、それでも純利益は373億円(△28.1%)で要因は前期の関係会社株式売却益171億円の剥落と特別損失+98.3%(再開発関連費用53億円が2.45倍)、交通業は6,827人で295億円(利益率16.28%)・不動産業は1,779人で154億円(16.08%)と1人あたりでは不動産が2.0倍、生活サービス業は臨時4,351人を抱えながら利益率4.83%で減損の98.1%が集中、営業CFを超える投資により2期連続でフリーキャッシュフローがマイナス、女性管理職7.3%と男性育休98.7%という対比、そして2027年3月期は経常△11.3%の減益計画——小田急電鉄の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 鉄道業の構造的課題——生活サービス業——収益△6.0%、利益△15.5%、減損の98.1%/2期連続でフリーキャッシュフローがマイナス/女性管理職7.3%と、男性育休98.7%/2027年3月期は経常△11.3%の減益計画
  • 第3.5章 面接前に押さえる小田急電鉄の最新ニュース10本——1人あたり2.0倍・減損98.1%・2027年計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「鉄道が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収827万円の読み方と、3セグメントのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続22.0年、女性管理職7.3%と男性育休98.7%の意味、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 小田急の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第105期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は827万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 小田急の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第105期)では、提出会社(単体)が3,685人、連結が11,656人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 小田急が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。