京王電鉄(9008)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、京王電鉄を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「1人あたりで11.8倍差」です。
有報の数字(第105期)
- 売上高
- 4,969億円
- 純利益
- 429億円
- ROE
- 10.0%
- 従業員数(連結)
- 13,079人
- 従業員数(単体)
- 2,429人
- 平均年間給与(単体)
- 758万円
- 平均年齢
- 40.5歳
- 平均勤続年数
- 17.7年
出典:京王電鉄の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
京王電鉄を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、京王電鉄に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは京王電鉄の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、京王電鉄株式会社 有価証券報告書 第105期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
京王電鉄は、過去最高の売上を出しながら利益が減った会社であり、その差を埋める賭けを2030年前後に集中させている。
知っておきたいことは3つある。
営業収益は4,969億円(前期比+9.7%)で過去最高だった。一方、本業のもうけを示す営業利益は523億円(△3.4%)に減った。
不動産業は640人で営業利益171億円を稼ぐ。交通業は5,813人で132億円だ。1人あたりでは11.8倍の差がある。
2030年前後に4つの大規模開発が完成する。会社は2030年度の営業利益を620億円にする目標を置いている。
この記事では、この3つの背景を確かめ、面接で自分の言葉として語れる形にする。
第1章 京王電鉄は何に賭けているのか
1-1. 賭けの中身——2030年前後に4つの開発が完成する
有報には、会社が何に賭けているかが書いてある。中心は2030年前後に完成を目指す4つの大規模プロジェクトだ。
・新宿駅西南口地区開発計画
・橋本駅周辺開発
・京王多摩川開発プロジェクト
・京王線(笹塚駅〜仙川駅間)連続立体交差事業(線路を立体化する工事)
これらを進める中期経営計画が「HIRAKU 2030」で、期間は2025年度〜2030年度である。
橋本駅にはリニア中央新幹線の駅ができる。会社は橋本を西の拠点とし、新宿から15km圏内に並ぶ「第二の輸送主軸」に育てると書いている。
4つの基本方針の3つ目は「事業成長と財務課題解決の両立」だ。方針名に課題があることを入れている。
28卒の入社は2028年4月で、計画の4年目にあたる。完成直前の現場に入り、2030年度の答え合わせを新人として迎える。
面接での使い方:志望動機で「2030年前後に4つが完成する時期に、自分は計画4年目から入る」と時間軸を語れる。
1-2. 増収なのに減益——何が利益を削ったのか
当期は全セグメント(事業区分)で増収だった。それでも営業利益は541億円から523億円に減った。
大きな理由は、交通業の営業利益が15.5%減ったことだ。有報は「鉄道安全投資をはじめとした投資の増加」を挙げている。交通業の設備投資は477億円で、全社の7割を超える。
一方、純利益は過去最高の429億円だった。理由は政策保有株式の売却である。政策保有株式とは、取引先などの株を持ち続けているものを指す。
つまり、純利益の最高益は本業の伸びではない。株の売却益が支えている。
面接での使い方:課題指摘として「増収でも本業の利益は減っている」と言える。逆質問では、2026年度の営業利益計画が510億円と今期より低い理由を聞ける。
1-3. 1人あたりで見ると、不動産は交通の11.8倍
セグメント利益を従業員数で割ると、会社の稼ぎ方が見える。
・不動産業:640人で171億円(1人あたり2,683万円)
・交通業:5,813人で132億円(1人あたり228万円)
不動産業は連結従業員の5%に満たない。それでも営業収益は31.9%増え、増収分の3分の2を占めた。
ただし不動産業の利益は2.6%減った。利益率は19%台から14%台に下がっている。分譲の売上が増えたことが背景と読める。
面接での使い方:志望動機では「鉄道を軸に不動産で稼ぐ構造に魅力を感じた」と言える。課題として、分譲に偏ると利益率が下がる点も指摘できる。
1-4. 2030年度のROE目標が、いまより低い理由
ROEとは、株主のお金でどれだけ利益を出したかを示す指標だ。当期は10.0%だった。ところが会社が掲げる2030年度の目標は9.0%以上で、いまより低い。
理由は、これから資産が増えるからだ。大規模プロジェクトでは、先に投資が資産として積み上がり、収益は後から出る。
そこで会社はROAも目標にしている。ROAとは、持っている全資産でどれだけ経常利益を出したかを示す指標だ。目標は4.5%以上である。
ROEは下がっても、資産に見合う利益を出せば、ROAは保てる。この考え方が目標の意味だ。
面接での使い方:逆質問として「ROE目標が当期より低いのは、開発投資を織り込んだ設計か」と確かめられる。
1-5. 働く側の事実——人は増やさず、年収は少し下がった
連結従業員は13,079人で、5期前の13,150人とほぼ変わらない。その間に営業収益は65.7%増えた。人を増やさずに規模を伸ばした5期だった。
平均年間給与は758万円で、前期比0.3%減った。平均年齢は40.5歳、平均勤続年数は17.7年である。
提出会社である京王電鉄単体では、2,429人のうち8割超が交通業にいる。建設設備業と生活サービス業は、単体ではなく子会社が担う。
面接での使い方:「少人数で収益を伸ばす会社で、自分はどの職種で貢献したいか」と、働き方の視点で語れる。
第2章 鉄道業の収益構造
2-1. 事業の切り方に、会社の考え方が出る
京王は事業を交通業、不動産業、ホテル業、建設設備業、生活サービス業に分けている。特徴は、ホテル業と建設設備業を独立させていることだ。
ホテル業は京王プラザホテルを中心とする事業で、利益率は16.87%と全セグメントで最も高い。建設設備業は鉄道の保守・工事や設備工事を担い、当期は最も大きく増益した。
収益の決まり方が違うので、分けて見せている。
面接での使い方:志望動機で、鉄道以外の事業にも関心があることを示せる。職種研究の入口にもなる。
2-2. 鉄道の利益率は、投資の先行で下がっている
交通業の利益率は9.95%で、前期の水準を下回った。営業収益は伸びたが、設備投資が先に出て減価償却費が増え、利益を圧迫した。
減損損失は当期ゼロだった。採算が悪化した設備があるわけではなく、投資が先行している形だ。
京王は短距離・高頻度の通勤路線が中心だ。座席指定の京王ライナーを拡充しているのは、単価を上げる取り組みと読める。
面接での使い方:課題指摘として「投資の回収が利益に出る時期」を論点にできる。逆質問にもなる。
2-3. 不動産業——人ではなく土地と建物が稼ぐ
不動産業は640人で営業収益1,207億円、利益率は14.23%だ。賃貸は建物を貸して少人数で管理でき、分譲は企画から販売までを少人数で回す。
分譲は売れれば収益が大きい。ただし用地や建築の費用がかかるため、賃貸より利益率は低い。当期の利益率低下は、分譲の比率が上がったためと考えられる。
不動産業の中にも、規模で稼ぐ事業と利益率で稼ぐ事業がある。
面接での使い方:「賃貸と分譲のバランスをどう考えているか」と、逆質問にできる。不動産職を志望する場合は、志望動機の根拠にもなる。
京王電鉄の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(増収しても利益が増えない構造/交通業の利益率9.95%をどう戻すか/生活サービス業の利益率4.00%と、臨時2,670人/株式売却益に頼らない利益を作れるか)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。営業収益4,969億円(+9.7%)と過去最高を更新しながら原価が+12.7%増えたため営業利益は523億円(△3.4%)・経常利益511億円(△3.9%)と減益、投資有価証券売却益102億円(前期の37.7倍)で税前利益は+9.1%に転じたものの法人税等が+45.4%増えて純利益は+0.2%、増収440億円の66.6%を占める不動産業は利益率が19.26%から14.23%へ低下、交通業は設備投資+50.0%に伴う減価償却費+11.0%で△15.5%の減益となり利益率9.95%は小田急16.28%を大きく下回る、そして不動産業640人で171億円・交通業5,813人で132億円という1人あたり11.8倍の差——京王電鉄の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 鉄道業の構造的課題——増収しても利益が増えない構造/交通業の利益率9.95%をどう戻すか/生活サービス業の利益率4.00%と、臨時2,670人/株式売却益に頼らない利益を作れるか
- 第3.5章 面接前に押さえる京王電鉄の最新ニュース10本——1人あたり11.8倍・増収減益・2027年計画まで
- 第4章 内定者の正体——「鉄道が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収758万円の読み方と、6セグメントのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続17.7年、年収△0.3%の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生