NANKAI(9044)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、NANKAIを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「不動産193人が稼ぐ」です。
有報の数字(第109期)
- 売上高
- 2,647億円
- 純利益
- 251億円
- ROE
- 7.8%
- 従業員数(連結)
- 9,408人
- 従業員数(単体)
- 3,000人
- 平均年間給与(単体)
- 667万円
- 平均年齢
- 45.2歳
- 平均勤続年数
- 22.6年
出典:NANKAIの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
NANKAI(旧・南海電気鉄道)を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、南海グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはNANKAIの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社NANKAI(旧・南海電気鉄道株式会社) 有価証券報告書 第109期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
結論から言う。NANKAIは、鉄道会社から不動産を軸にした会社へ、資産と投資の重心を移し始めた。
知っておきたいことは3つある。
社名から「電気鉄道」が消えた。2026年4月1日に鉄道事業を分社化し、社名を「株式会社NANKAI」に改めた。分社化とは、事業の一部を別会社として切り出すことだ。
2025年度は増収率1.5%に対し、営業利益(本業の儲け)が15.2%増えた。費用が減ったことが効いている。
不動産業は193人、運輸業は5,403人で、稼ぐ利益はほぼ同じ水準だった。人数と利益の釣り合いが、この会社の論点になる。
この記事では、会社が何に賭け、それが数字にどう表れ、鉄道の稼ぎ方がどう変わったかを確かめる。
第1章 NANKAIは何に賭けているのか
1-1. 社名から「電気鉄道」が消えた——会社が掲げた2つの賭け
2026年4月1日、鉄道事業を分社化し、商号を変えた。「南海電気鉄道」の名は、分社化された鉄道会社が引き継いだ。
中期経営計画は、コア事業の強化を最優先に置く。コア事業とは、不動産事業と公共交通事業のことだ。
重点戦略の筆頭は「飛躍的な不動産事業の拡大」である。M&A(他社の買収など)も選択肢に入れている。
2050年の企業像は「沿線への誇りを礎に、関西にダイバーシティを築く事業家集団」だ。自らを単なる鉄道会社とは位置づけていない。
賭けは2つに整理できる。
不動産を飛躍的に拡大する:自前の開発に加え、M&Aも使う
鉄道は分社化して自律させる:公共交通の使命を果たしつつ、親会社は事業投資に集中する
数値目標は、営業利益を2025年度の399億円から2027年度に420億円以上へ伸ばすことだ。
志望動機で「不動産を軸にした事業家集団への転換に関わりたい」と言える。逆質問では「営業利益420億円以上の達成に、不動産はどこまで寄与するのか」と聞ける。
1-2. 賭けは資金に表れた——設備投資は2.40倍、資産は不動産が運輸を上回った
当期の設備投資(設備や不動産への投資)は、前期の2.40倍になった。そのうち不動産が約6割を占める。
事業ごとの資産の順位も入れ替わった。不動産業は4,396億円となり、運輸業の3,994億円を上回った。前期は運輸が上だった。
退く判断も同時に下している。和歌山・徳島航路のフェリー事業から、2028年3月末を目途に撤退する。
理由として、事業環境の変化、運航コストの上昇、船舶・設備の老朽化が挙げられている。撤退の時期まで明記されている点が目を引く。
志望動機で「伸ばす事業に集中投資し、続けられない事業からは退く姿勢に共感した」と語れる。逆質問では「不動産への集中投資の中で、鉄道側の投資をどう確保するのか」と聞ける。
1-3. 目標は「借金を増やす」方向——ROEの次の一手
ROE(株主から預かった資本で、どれだけ利益を出したかの指標)は、当期7.8%だった。中計の目標である7%以上を、すでに超えている。
注目したいのは、会社自身が掲げたもう一つの目標だ。純有利子負債/EBITDA倍率は、借金を何年分の稼ぎで返せるかを示す。数字が大きいほど、借金は重い。
この目標は、6.1倍から7倍台へ「上げる」設定になっている。普通の会社は、この数字を下げる目標を置く。
有報は、財務体質が改善したことを踏まえ、収益拡大投資と安全・更新投資を加速すると書く。改善した余力を投資に回す考え方だ。
副作用も出ている。支払利息は前期より約28%増えた。
逆質問で「負債の倍率目標を7倍台に置いた背景と、上限の考え方を教えてください」と聞ける。課題指摘では、支払利息の増加を踏まえ、投資の回収が鍵だと述べられる。
1-4. 2031年春のなにわ筋線——28卒が入るのはその前夜
この会社の時間軸を決めているのが、なにわ筋線である。難波・新今宮とJR大阪駅(うめきた)を結ぶ新線だ。
有報は、開業目標を2031年春と記す。大阪・夢洲へのIR(統合型リゾート)誘致計画とあわせ、関西のビジネスチャンスの拡大に期待を示している。
28卒が入社する2028年は、開業の3年前にあたる。中期経営計画2025-2027が終わった直後でもある。
当期は、その他の事業を除く5事業すべてが増益だった。有報は、大阪・関西万博の効果とインバウンド需要、前年度に子会社化した通天閣観光の寄与を挙げている。
志望動機で「開業前夜に入社し、関西の需要を伸ばす側に回りたい」と言える。逆質問では「開業までの3年間で、新人に期待する役割は何か」と聞ける。
1-5. 働く側の事実——泉北高速鉄道の吸収合併と年収
連結の従業員は9,408人。提出会社の従業員は、前期より283人増えた。
有報によれば、増えた理由は泉北高速鉄道の吸収合併だ。2025年4月1日付で、子会社だった同社を本体に取り込んだ。
平均年齢は45.2歳、平均勤続年数は22.6年である。平均年間給与は666万円で、同業の私鉄5社の中では中位にあたる。
逆質問で「分社化で、鉄道会社に移る人と親会社に残る人の役割はどう分かれますか」と聞ける。志望動機では、長く働く人が多い環境で経験を積みたい、と結びつけられる。
第2章 鉄道業の収益構造
2-1. 193人の不動産が、5,403人の運輸に並ぶ
事業区分(セグメント)は6つある。不動産業の利益は143億円で、運輸業の149億円にほぼ並んだ。
働く人数は大きく違う。不動産業は193人、運輸業は5,403人だ。
1人あたりの利益に直すと、不動産は運輸の約27倍になる。同業の私鉄5社の不動産事業と比べても、1人あたりの利益は最も高い。
収益の規模では、なお運輸業が大きい。ただし、収益の大きさと利益の大きさは別の話だ。社名の変更は、この構造を追認したものと読める。
課題指摘で「利益の柱が少人数の不動産に偏る点を、運輸の収益力でどう補うか」を論点にできる。志望動機では、不動産と運輸のどちらで貢献したいかを数字で語れる。
2-2. 営業費を減らして増益——一方で本社の費用は増えた
当期の特徴は、営業費を減らしたことだ。営業費は前期より0.6%減った。同業の私鉄5社で、営業費を減らせたのはNANKAIだけである。
建設業は、営業収益が13%減ったのに、利益は増えた。採算の良い工事に絞った、と読める。
一方、販売費及び一般管理費(本社など管理部門の費用)は約14%増えた。現場の費用は減り、本社の費用は増えた構図とも読める。
課題指摘で「現場の費用は減ったが、管理部門の費用は増えた。この増加が続くのかが論点だ」と述べられる。そのまま逆質問にも使える。
NANKAIの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(営業+15.2%が、経常+6.1%になる理由/不動産への集中投資は、いつ利益になるか/運輸業5,403人の1人あたり276万円/2027年3月期は増収でも減益の計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。2026年4月1日に「南海電気鉄道株式会社」から「株式会社NANKAI」へ商号変更し英訳名からもElectric Railwayが外れたこと、営業収益2,647億円(+1.5%)に対し営業費を△0.6%(運輸業等営業費及び売上原価△1.1%)と減らして営業利益399億円(+15.2%)——私鉄5社で唯一費用を減らし唯一の2桁増益で営業利益率15.09%も5社トップ——を達成した一方、受取配当金△53.1%と支払利息+28.4%により経常利益は377億円(+6.1%)と9.1ポイント削られたこと、6つのセグメントでは不動産業がわずか193人(連結の2.1%)でセグメント利益143億円(35.1%)・利益率26.93%を稼ぎ1人あたり7,434万円と運輸276万円の26.9倍・私鉄5社で最高であり、ついにセグメント資産でも不動産4,396億円が運輸3,994億円を上回ったこと、設備投資は733億円(2.40倍)でうち不動産に439億円(59.9%・前期の5.53倍)が振り向けられフリーキャッシュフローは△92億円、その他の事業を除く5事業すべてが増益(レジャー・サービス業+39.9%、建設業は収益△13.0%でも利益+18.0%)で私鉄5社で唯一全事業が伸びたこと、提出会社3,000人は泉北高速鉄道の吸収合併で283人増え平均勤続22.6年・平均年収666万5,128円(+2.5%)・南海電気鉄道労働組合2,916名が私鉄総連に加盟、そして2027年3月期は営業収益+8.6%でも経常△4.9%・純利益△5.3%の計画——NANKAIの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 鉄道業の構造的課題——営業+15.2%が、経常+6.1%になる理由/不動産への集中投資は、いつ利益になるか/運輸業5,403人の1人あたり276万円/2027年3月期は増収でも減益の計画
- 第3.5章 面接前に押さえるNANKAIの最新ニュース10本——社名変更・不動産1人7,434万円・営業費△0.6%まで
- 第4章 内定者の正体——「鉄道が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収667万円の読み方と、6事業でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続22.6年、男性育休93.0%、私鉄5社との比較
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生