名鉄(9048)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、名鉄を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「鉄道は増益、全体は減益」です。
有報の数字(第162期)
- 売上高
- 6,916億円
- 純利益
- 230億円
- ROE
- 4.8%
- 従業員数(連結)
- 30,637人
- 従業員数(単体)
- 5,096人
- 平均年間給与(単体)
- 661万円
- 平均年齢
- 44.4歳
- 平均勤続年数
- 23.3年
出典:名鉄の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
名古屋鉄道を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、名鉄グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは名鉄の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、名古屋鉄道株式会社 有価証券報告書 第162期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
名鉄は、本業の鉄道が好調なのに、物流と流通の赤字で全体の利益が大きく減った会社だ。
知っておきたいことは3つある。
鉄道を中心とする交通事業の利益は218億円で、前期より11.2%増えた。本業は崩れていない。
それでも営業利益は14.0%減り、純利益は39.2%減った。赤字の事業や、借入の利息の増加が重なったためだ。
運送事業は77億円の赤字で、従業員は8,936人いる。会社自身が、黒字化を「喫緊の課題」と書いている。
この記事では、会社が何に賭け、どこでつまずき、28卒がどんな局面で入社するのかを、数字で確かめる。
第1章 名古屋鉄道は何に賭けているのか
1-1. 会社は自分を「立て直しの途中」に置いている
名鉄を読む出発点は、当期の減益ではない。会社が自分の現在地をどう呼んでいるかだ。
有報は、2026年度を最終年度とする中期経営計画の期間を、「成長基盤構築・収益力強化期」と位置づけている。基盤を作り、収益力を戻す期間という意味である。成長期でも収穫期でもない。
会社が重視する指標は3つある。営業利益、借入の重さ、そしてROEだ。ROEとは、株主から預かった資金で、どれだけ利益を出せたかを示す割合である。当期は4.8%で、前期の8.4%から下がった。
そのうえで有報は、運送事業と流通事業の黒字化を「喫緊の課題」と名指ししている。
志望動機では、「立て直しの時期に、自分が何を担えるか」を軸にできる。逆質問では、中計最終年度の目標と現状の差を聞ける。
1-2. 賭けの中身は1,225億円の投資と、止まった名古屋駅再開発
戦略は、言葉ではなく資金の動きで確かめる。有報の設備投資計画は、総額1,225億円だ。交通事業が最も多く、次いで不動産事業が415億円である。
この会社の最大の案件は、名古屋駅地区再開発だ。ただし、いまは宙に浮いている。2025年5月に事業化を決めたが、工事の施工者を選ぶ段階で、応募者が入札を辞退した。現計画での施工体制の構築が困難、という理由である。
2025年12月、会社は計画の再検証と見直しに着手すると公表した。方向性は2026年度中に示す予定で、今後のスケジュールは未定だ。会社は、まちづくりに取り組むことは使命だとも書いている。やめるのではなく、練り直す判断である。
28卒の立ち位置も確認しておく。2028年4月の入社時には、いまの中期経営計画は終わっている。再開発の見直しの結果も出ているはずだ。一方、選考の時点では答えが出ていない可能性が高い。「見直しを決めた会社だと知ったうえで志望している」と言えるかが、差になる。
志望動機で、見直しを知ったうえで入社後の関わり方を語れる。逆質問では、2026年度中に示す方向性の中身を聞ける。
1-3. 減益は、下の段階ほど大きくなった
営業収益はほぼ横ばいだったが、営業費が増えた。そこから先は、別々の要因が重なっている。
借入が増え、支払利息は前期より41.9%増えた。借入が増えたのに、ROEは下がった形だ。買った資産の価値を下げる処理である減損損失は、54億円に膨らんだ。
新たに店舗閉鎖の損失も出ており、流通事業の苦戦が数字に表れている。税金の負担も重くなった。その結果、営業利益の減少よりも、純利益の減少のほうがはるかに大きくなった。
課題指摘で、「減益は利息、減損、税金が段階的に重なった結果だと理解している」と語れる。「業績が悪化した」で止まらず、原因を分けて話せる。
1-4. 赤字は運送と流通の2事業
名鉄の事業は7つに分かれる。このうち赤字は2つだ。運送事業が77億円、流通事業が19億円の赤字である。
運送事業の従業員は8,936人で、連結のおよそ3割を占める。流通事業は1,341人だ。外部顧客への営業収益で見ると、赤字の2事業で全体の34.1%になる。小さな事業の不調ではない。
一方で、会社の2027年3月期予想では、運送事業の収支改善により、営業利益は増益に転じる見通しとされている。
課題指摘で、「赤字の2事業の黒字化に、自分の強みで貢献したい」と結べる。逆質問では、黒字化に向けた進み具合を聞ける。
1-5. 働く側の事実——長く勤める会社で、賃上げは進んでいる
連結の従業員は30,637人だ。名古屋鉄道単体では、平均年齢が44.4歳、平均勤続年数が23.3年である。引き算すると、入社時の平均は約21歳になる。新卒で入り、長く勤める構造だ。
平均年間給与は661万円で、前期より4.4%増えた。私鉄各社で賃上げが進んでいる。
単体の従業員5,096人のうち、4,000人が交通事業にいる。会社そのものはほぼ鉄道会社で、物流会社はグループ側に大きく含まれる。
志望動機では、長く働ける環境を根拠に、長期のキャリアを語れる。単体は鉄道中心なので、配属のイメージは逆質問で確かめたい。
第2章 鉄道業の収益構造
2-1. 「鉄道会社」でも、鉄道は営業収益の4分の1
外部顧客への営業収益で見ると、交通事業は25.4%にとどまる。運送事業が24.6%でほぼ並び、レジャー・サービス、不動産、流通が続く。
私鉄は、鉄道だけでは規模が足りないため、多角化する。ただし、中身は会社ごとに違う。名鉄の第2の柱は、名鉄運輸を中心とするトラック輸送だ。多角化は、うまくいけば収益の分散になり、うまくいかなければ重石になる。
志望動機で、「鉄道だけでなく、物流や不動産まで含む会社の全体像を理解している」と示せる。どの事業を志望するかを、この構成比から語れる。
2-2. 運送事業が赤字になる4つの理由
トラック輸送には、業界に共通する課題がある。
1つ目は、人手不足と人件費の上昇だ。労働集約的な事業なので、賃上げがそのまま費用になる。2つ目は燃料費で、軽油価格の変動をすぐ運賃に転嫁できるとは限らない。
3つ目は、荷主との価格交渉だ。競争が激しく、運賃を上げにくい。4つ目は、労働時間の規制強化である。同じ人数で運べる量が減る。当期は運送事業で減損損失も計上された。
課題指摘で、赤字の原因を4つに分けて話せる。物流を志望するなら、どの課題に取り組みたいかを逆質問にできる。
2-3. 不動産に投資を集中させた代償
当期の設備投資のうち、52.8%が不動産事業に投じられた。理由は3つ考えられる。利益率が交通事業に次いで高いこと。沿線の価値を高めること。人口減少で、運賃収入が伸びにくいことだ。
ただし、代償もある。投資は営業活動で得た現金を大きく上回り、不足分を借入で埋めた。支払利息は増え、自己資本比率(返す必要のない資金の割合)も前期より下がった。
同じ私鉄の東武鉄道、近鉄グループと比べると、ROEは最も低く、支払利息の増加幅は最大だった。鉄道の利益率は東武鉄道とほぼ同水準で、鉄道事業そのものは健全だ。不動産事業の利益は前期より減っており、投資が利益として返るには時間がかかる。
逆質問で、「不動産投資の回収時期をどう見ているか」を聞ける。課題指摘では、投資の回収と借入のバランスを論点にできる。
名鉄の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(赤字の2事業が、収益の34.1%を占める/投資が営業CFの2.5倍、支払利息+41.9%/税負担率51.5%と、子会社の赤字/2027年3月期は純利益+69.9%の計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。営業収益6,915億円(+0.1%)に対し交通事業は営業収益+11.5%・セグメント利益+11.2%と鉄道が好調だったにもかかわらず、不動産事業の利益△28.4%(営業収益△11.0%)と運送事業の赤字が△37億円から△77億円へ2.07倍に拡大したことで連結営業利益は361億円(△14.0%)、さらに支払利息+41.9%と持分法による投資利益△42.9%で経常利益383億円(△19.5%)、減損損失2.43倍・店舗閉鎖損失15億円で税金等調整前は△24.3%、法人税等調整額67億円により税負担率が26.8%から51.5%へ24.7ポイント上昇し、非支配株主に帰属する当期純損失△41億円(前期の20倍)を経て親会社株主帰属当期純利益は229億円(△39.2%)・ROEは8.4%から4.8%へ低下したこと、7つのセグメントでは運送事業(従業員8,936人=29.2%・外部収益24.6%)と流通事業(同9.5%)の2つが赤字で収益の34.1%を占める一方、不動産は1人あたり884万円と交通184万円の4.8倍を稼ぎ設備投資1,559億円の52.8%(823億円)が振り向けられ、その結果フリーキャッシュフローは△894億円・財務CFは+897億円の借入超・自己資本比率は30.6%へ低下、提出会社5,096人は平均勤続23.3年・平均年収661万4,236円(+4.4%)で名古屋鉄道労働組合4,748人が私鉄総連に加入、そして2027年3月期は純利益390億円(+69.9%)の計画で第1四半期は経常+16.0%——名古屋鉄道の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 鉄道業の構造的課題——赤字の2事業が、収益の34.1%を占める/投資が営業CFの2.5倍、支払利息+41.9%/税負担率51.5%と、子会社の赤字/2027年3月期は純利益+69.9%の計画
- 第3.5章 面接前に押さえる名鉄の最新ニュース10本——運送△77億円・不動産に投資の52.8%・純利益+69.9%計画まで
- 第4章 内定者の正体——「鉄道が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収661万円の読み方と、7事業でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続23.3年、女性管理職8.7%、私鉄総連加盟の意味
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生