川崎汽船(9107)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、川崎汽船を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「経常利益6,908億→1,091億の正体」です。

有報の数字(第158期)

売上高
1兆184億円
純利益
1,330億円
ROE
7.7%
従業員数(連結)
5,262人
従業員数(単体)
962人
平均年間給与(単体)
1,450万円
平均年齢
38.0歳
平均勤続年数
13.4年

出典:川崎汽船の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

川崎汽船を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、川崎汽船に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは川崎汽船の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、川崎汽船株式会社 有価証券報告書 第158期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。直近の数字は2026年8月4日公表の2027年3月期第1四半期決算と、同年7月24日の業績予想修正で補っています。

川崎汽船は、自分で船を動かす会社であると同時に、コンテナ船会社ONEの大株主でもある。利益の大きな振れは、売上高に一円も載らないその持ち分から来ている。

知っておきたいことは3つある。

・利益は4年で6分の1になった。経常利益は2023年3月期の6,908億円から、2026年3月期は1,091億円。落ちたのは主にコンテナ船の分だ。
・会社は「資本が厚すぎる」と自分で認めた。1,300億円を上限に自社株を買い、9月に取得を終えた。
・28卒は、次の中期経営計画の2年目に入る。会社は次の計画でROE15%以上を目指し、M&Aを積極的に使うと書いた。

この記事では、利益の振れの正体、資本の使い方、次の計画への賭けを確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。

第1章 川崎汽船は何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——ROE10%以上、経常利益1,600億円

いまの中期経営計画は2022年度から2026年度までの5年間だ。最終年度の目標として、有報はROE10%以上と経常利益1,600億円を掲げる。ROEは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す数字である。

足元はどうか。2026年3月期のROEは7.7%で、目標に届いていない。経常利益も、5月時点の見込みは1,000億円だった。

7月24日、会社はこの見込みを1,350億円に引き上げた。それでも目標の1,600億円には届かない。

面接での使い方

逆質問で、届かない差を次の計画でどう埋めるのかを聞ける。

1-2. 減らす事業と増やす事業——船を選び、外は株主として支える

会社は事業を役割で分けている。有報の言葉を借りると、鉄鋼原料・自動車船・LNG船は「成長を牽引する役割の事業」だ。経営資源を集中して配る。

一方、バルクキャリアや近海内航、港湾・物流は「稼ぐ力の磨き上げで貢献する役割の事業」とされた。

増やす側の証拠は船の発注に出ている。9月にはマレーシアの国営会社向けLNG船が竣工し、8月には大型原油タンカー3隻を発注した。

面接での使い方

志望動機で、どの「役割」の事業に関わりたいかを、理由とセットで語れる。

1-3. 28卒は、次の中期経営計画の2年目に入る

いまの計画は2027年3月に終わる。次の計画は2026年度中に公表される予定で、2027年度に始まる。28卒の入社は2028年4月なので、ちょうど2年目にあたる。

会社は次の計画の重点課題を3つ挙げた。自営事業の成長、コンテナ船事業の課題解決、資本政策だ。そのうえで「将来的なROE15%以上の実現」を目指すと書いている。

面接での使い方

志望動機で「次の計画が実行段階に入る時期に、現場で成果を出したい」と言える。

1-4. 稼ぎ頭はどこか——売上に載らない会社が、利益を決める

コンテナ船の事業は、日本郵船・商船三井と統合したONEに移した。川崎汽船は持株会社を通じて31.0%を持つ。

持ち分の利益は「持分法による投資利益」として、売上高の下の段で足される。2025年3月期は2,020億円あったものが、2026年3月期は227億円になった。経常利益が大きく減った主因はここにある。

自分で動かす事業の利益は、それほど減っていない。売上高は2.8%の減収にとどまった。

面接での使い方

課題指摘で「自営事業の安定と、ONEの振れをどう切り分けるか」を論点にできる。

1-5. 働く側の事実——本体962人、平均年収1,450万円

川崎汽船は持株会社ではない。有報に載る単体の数字は、実際に船の事業を動かす本体の数字だ。

単体の従業員は962人、平均年齢38.0歳、平均勤続13.4年、平均年間給与は1,450万4,365円(前期比18.6%増)。この人数には、船に乗る海上従業員も含まれる。

グループ全体は5,262人で、物流や港湾、近海航路の子会社が多くを占める。本体はその2割に満たない。

面接での使い方

年収に触れるなら「海上職も含む本体の数字だと理解しています」と添えると、読んでいることが伝わる。

第2章 海運業の収益構造

2-1. 市況で稼ぐ船と、契約で稼ぐ船

海運の稼ぎ方は大きく2つある。1つは、運賃や用船料の相場(市況)で稼ぐ船だ。鉄鉱石や石炭を運ぶドライバルク船がその代表で、市況が上がれば利益が跳ね、下がれば沈む。

もう1つは、長い契約で稼ぐ船だ。LNG船は、エネルギー会社と長い期間の契約を結ぶ。有報も、LNG船などは「中長期の傭船契約のもとで順調に稼働」したと書く。

会社は、契約で稼ぐ船を増やして土台を固めようとしている。

面接での使い方

志望動機で、市況を読む仕事と契約を積む仕事のどちらに関心があるかを語れる。

2-2. 船は「持つ」か「借りる」か

川崎汽船が運航する主要な船は389隻ある。そのうち自社で持つ船は155隻で、半分以上の229隻は他社から借りている。

借りる船は、市況が悪くなれば返せる。持つ船は長く使えるが、建造に大きなお金がかかる。

会社は投資の方針を「好況の時は抑制的に、市況が悪化した折には戦略的に」と書く。

面接での使い方

逆質問で、船を持つか借りるかを決めるときの判断軸を聞ける。

2-3. この構造で働く人の事実

本体の仕事は、船そのものより「船の使い方」を決めることに近い。どの荷主と、どの船で、どの航路を、どの条件で結ぶか。

単体の売上高は8,047億円で、962人で割ると1人あたり8.4億円になる。少ない人数で、大きな金額と長い契約を扱う仕事だ。

海上従業員は、陸上の部署にも異動する。有報は総合職の区分に「陸上勤務中の海上従業員も含む」と注記している。船を知る人と、契約を組む人が同じ職場にいる。

面接での使い方

逆質問で、陸上職が船の現場を知る機会をどう作っているかを聞ける。

川崎汽船の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(コンテナ船の供給過剰とONEへの依存/中東と関税が運航コストを押し上げる/脱炭素の投資と新しい燃料/厚すぎる資本とROEの壁)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

■この会社の面接で落ちる人の共通点
「世界の物流を支える、スケールの大きな仕事がしたい」と言ったあとに、面接官から「当社の経常利益は前の期から3分の1近くまで減りましたが、どの事業が原因か分かりますか」と返されて、言葉が止まる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。

■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「持分法による投資利益が2,020億円から227億円に減った一方、自営事業の経常利益は850億円と底堅く推移したと理解しています。次の中期経営計画で自営事業を伸ばすうえで、いま現場が一番手応えを感じている領域はどこでしょうか」
この質問を作るのに必要な数字は、持分法の利益の落ち込みと自営事業の利益の2つだけだ。残り6本は、M&Aの使い方、資本の適正化、自動車船の立て直し、女性管理職比率を、それぞれ同じ型で組んである。

ここまでが無料パートです。経常利益は6,908億円から1,091億円へ、持分法の利益は2,020億円から227億円へ、ROEは7.7%で目標の10%に届かず、本体は962人で平均年収1,450万円——川崎汽船の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 海運業の構造的課題——コンテナ船の供給過剰とONEへの依存/中東と関税が運航コストを押し上げる/脱炭素の投資と新しい燃料/厚すぎる資本とROEの壁
  • 第3.5章 面接前に押さえる川崎汽船の最新ニュース10本——自社株買い1,224億円・経常予想を1,350億円へ上方修正・自動車船の経常利益152億円→21億円まで。1本ごとに「面接で使うなら」
  • 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
  • 第4章 内定者の正体——「世界の物流を支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,450万4,365円の読み方と、陸上職・海上職のキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続13.4年の読み方、女性役員比率18.1%と女性管理職比率9.2%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 川崎汽船の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第158期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,450万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 川崎汽船の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第158期)では、提出会社(単体)が962人、連結が5,262人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 川崎汽船が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。