日本航空(9201)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、日本航空を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「再上場後の最高益」です。

有報の数字(第77期)

売上高
2兆125億円
純利益
1,376億円
ROE
12.2%
従業員数(連結)
39,076人
従業員数(単体)
14,627人
平均年間給与(単体)
1,011万円
平均年齢
40.2歳
平均勤続年数
14.9年

出典:日本航空の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

日本航空を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、日本航空に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは日本航空の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

日本航空は、経営破綻から立ち直り、「飛行機以外の稼ぎ」と「10年先の計画」に賭けている会社だ。

知っておきたいことは3つある。

2026年3月期は、売上収益2兆125億円で再上場後の最高益だった。EBIT(利息と税金を引く前の利益)は2,180億円で、前期より26.4%増えた。

一方、2027年3月期のEBIT予想は1,800億円で、17.4%の減益だ。航空機の更新投資などを見込んだ数字である。

ANAとの違いは、2010年の経営破綻と、その後の再建にある。コスト意識の強さが、JALの組織の特徴だ。

この記事では、JALが何に賭けているか、来期の減益をどう読むか、ANAとどこが違うかを確かめる。

第1章 日本航空は何に賭けているのか

1-1. 5年計画をやめ、10年先と単年度に分けた

JALは、計画の作り方を変えた。有価証券報告書に「従来の5ヵ年の中期経営計画という枠組みを越え」るという記述がある。

今は、10年先を見据える「JALグループ経営ビジョン2035」と、単年度計画の二段構えだ。2035年を見据え、2030年度の経営目標を置いている。

理由は、航空業界の性質にある。感染症、原油価格、為替、地政学の影響で、5年先を数字で約束しにくい。

直近の中期経営計画の最終年度は、EBIT目標2,000億円を上回った。達成要因の筆頭は、非航空事業の利益拡大である。航空会社が、飛行機以外で稼ぎ始めている。

面接での使い方

28卒の入社は2028年で、2030年度の目標の手前にあたる。志望動機では「10年先を見る会社で、その途中から加わりたい」と語れる。逆質問では「2030年度の目標に対し、現在の進み具合をどう見ていますか」と聞ける。

1-2. マイルを、金融商品に変えていく

JALの成長戦略で、最も踏み込んでいるのがマイルの使い方だ。マイルは、航空券のおまけから、独立した通貨に近づいている。

2026年2月、持分法適用会社(出資して影響力を持つ会社)のマネースクエアHDが、資産運用でマイルが貯まる新プログラムを始めた。海外でも、Capital OneやBilt Rewardsなどの金融企業と組む。

組む相手は金融だけではない。JR東日本の「えきねっと」と連携し、飛行機を降りた後の移動まで、一続きで予約できるようにした。

国内線では、競合との協業にも踏み込む。燃油サーチャージの導入や、業界全体での需給バランスの改善を掲げている。需要が減る路線で便数を競えば、共倒れになるからだ。

面接での使い方

逆質問で「マイルは航空券への交換が前提ですが、他の使い道も増やしていくのですか」と聞ける。志望動機では、異業種と組む戦略への関心を軸にできる。

1-3. 国内線の構造改革と、人・機材

国内線は、JALの課題がはっきり表れる場所だ。人口が減れば需要も減るが、地方と都市を結ぶ路線は社会インフラとして守る必要がある。採算と社会的責任の両立が難しい。

JALは「国内路線事業構造改革の完遂」を掲げる。成長の側には、LCC(低価格の航空会社)の事業拡大を置く。2026年3月末の機材は234機で、フルサービス事業が220機、LCC事業が14機だ。

機材は、A350などへの更新を進めている。更新は短期では費用の増加になるが、中長期では燃費の削減につながる。

人への取り組みも、外部から評価された。「D&I AWARD 2025」で、従業員3,001人以上の企業部門の大賞を、航空会社として初めて受賞した。DXの面では「日本トップレベルの社員のウェルビーイング」(働く人の心身の健やかさ)を掲げる。

面接での使い方

課題指摘として「需要減と社会インフラの両立」を挙げ、自分がどう貢献できるかにつなげられる。逆質問では「フルサービスとLCCの役割分担をどう描いていますか」と聞ける。

1-4. 最高益のあとに、減益予想が来る

2026年3月期は、EBITが2,180億円で、前期比+26.4%だった。売上に対する利益の割合を示すEBITマージンは、10.8%だ。

航空は、燃油費が営業費用の21.6%を占める。原油価格と為替が、業績に直結する構造だ。

2027年3月期の予想は、売上収益が2兆950億円に増える一方、EBITは1,800億円(△17.4%)に減る。理由は、機材の更新に伴う減価償却費(機材の購入費を毎年の費用にしたもの)の増加、インフレ、為替の影響と見られる。

株主還元は増えている。1株あたりの配当は86円から96円になり、来期予想も96円だ。手元の現金は1兆102億円あり、破綻を経験した会社として、外部ショックへの備えになっている。

面接での使い方

「来期は減益で大変ですね」と言うと平凡だ。「更新投資を優先する計画的な減益と読みましたが、合っていますか」と逆質問にすれば、経営の意図を読む姿勢が伝わる。

第2章 業界比較——ANAとの2強体制

2-1. ANAとの違いは、破綻を経たかどうか

JALとANAは、日本の航空の2強と呼ばれる。ANAは売上規模がJALに匹敵し、ANA・ピーチ・エアージャパンのLCC統合運用を進める。国際線ネットワークの広さでは、JALを上回る場面もある。

JALは2010年に経営破綻し、稲盛和夫氏の下で再建した。そこで根づいたのが「アメーバ経営」(小さな部門ごとに採算を管理する方法)だ。社員一人ひとりが採算に責任を持つ文化が、EBITマージン10.8%につながっていると見られる。

ANAには破綻の経験がなく、国際路線の拡大とLCC統合を軸にしている。スカイマークは、JALとANAに次ぐ3社目の位置にある。

面接での使い方

「なぜANAではなくJALか」を聞かれたら、破綻と再建で培われたコスト意識を軸にできる。相手を下げず、戦略の違いとして話すのがよい。

2-2. 「なぜJALか」を語る4つの軸

志望動機に使える軸は、次の4つだ。

コスト・収益意識:稲盛氏の再建の遺産として、部門別の採算管理が根づいている。

再生ストーリー:失敗から学び、組織を作り直した経験がある。

JALエコノミー圏:JALカード、マイレージバンク、JALペイなど、航空券販売以外の収益源を持つ。

地方創生・観光:ATR機によるリージョナル路線や、自治体との連携に表れる。

よりグローバルな路線展開を志向する人はANA、LCC中心のキャリアならスカイマークという住み分けになる。

面接での使い方

志望動機では、4つの軸から自分の経験に近いものを1〜2つ選び、事実で裏づける。逆質問では「航空券以外の収益を、今後どこまで高めたいですか」と聞ける。

日本航空の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(インバウンド回復の継続と日本発ビジネス需要/脱炭素と次世代燃料(SAF)/地政学・外部ショックリスク/デジタル・データ活用)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

  • 第3章 業界の構造的課題と追い風——インバウンド回復の継続と日本発ビジネス需要/脱炭素と次世代燃料(SAF)/地政学・外部ショックリスク/デジタル・データ活用
  • 第3.5章 面接前に押さえるJAL最新ニュース10本——決算・増配・機材更新・SAF・新体制まで
  • 第4章 内定者の正体——採用区分と就職難易度、ES「なぜJALか」の組み立て、逆質問のレベル別、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——年収と平均像、市場価値とセカンドキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、退職理由の構造、福利厚生
  • 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答テンプレートと逆質問例
  • 第8章 やましゃんの総合評価——投資視点×就活視点

よくある質問

Q. 日本航空の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第77期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,011万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 日本航空の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第77期)では、提出会社(単体)が14,627人、連結が39,076人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 日本航空が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。