ANA(9202)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ANAを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上2.54兆円で増収増益」です。
有報の数字(第76期)
- 売上高
- 2兆5,392億円
- 純利益
- 1,691億円
- ROE
- 12.9%
- 従業員数(連結)
- 47,826人
- 従業員数(単体)
- 286人
- 平均年間給与(単体)
- 771万円
- 平均年齢
- 46.2歳
- 平均勤続年数
- 2.9年
出典:ANAの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ANAホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ANAホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはANAホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
結論から言う。ANAは「国際線と貨物」に2030年度までの成長を賭けている。足元の利益は好調だが、来期は大幅な減益予想である。
知っておきたいことは3つある。
会社は2030年度に営業利益3,100億円を目標に掲げている。営業利益とは、本業で稼いだ利益のことだ。
2026年3月期は売上2兆5,392億円、営業利益2,174億円と好調だった。2025年8月には日本貨物航空(NCA)を買収した。
2027年3月期の営業利益は1,500億円(31.0%減)の予想だ。主因は、中東情勢による燃油費の高騰である。
この記事では、会社が何に賭けているか、足元の数字をどう読むか、JALと何が違うかを確かめる。面接でそのまま話せる形にするのが目的だ。
第1章 ANAホールディングスは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標:2030年度に営業利益3,100億円
有価証券報告書には、会社の目標が年度つきで書かれている。国際線旅客と国際線貨物を「成長領域」とし、2030年度に営業利益3,100億円、営業利益率10%を目指す。営業利益率とは、売上のうち本業の利益が占める割合だ。
そこへ向けて、5年間で2.7兆円規模の成長投資を行う。投資先の筆頭は「人財」で、航空機より先に挙がっている。人に投資する会社だと読める。
もう一つ、会社自身が掲げた目標がある。株式数を減らす資本コントロールで、ROE12%以上を安定的に出すというものだ。ROEとは、株主のお金でどれだけ稼いだかを示す指標である。
志望動機では「2030年度の3,100億円を、国際線と貨物の成長で支えたい」と語れる。逆質問では「目標までの途中経過を、どの指標で見ていますか」と聞ける。
1-2. 日本貨物航空を、株式交換で買った
直近期で最も大きな動きは貨物だ。2025年8月、ANAはNCAを株式交換で完全子会社にした。現金ではなく、自己株式を日本郵船に渡して買った形だ。
会社は、ANAとNCAの統合で300億円のシナジー(相乗効果)を見込む。グループ内の貨物事業会社は、2027年4月に再編する予定だ。
目指す姿は「コンビネーションキャリア」である。旅客機の貨物室と貨物専用機の両方で荷物を運ぶ航空会社のことだ。旅客便は効率がよく、専用機は大きな荷物や特殊な貨物を運べる。
組む相手も使い分けている。シンガポール航空とは共同事業を結び、空港の作業では競合のJALとも協業する。
28卒が入社する2028年は、再編の翌年にあたる。統合の効果が見え始める時期だ。
志望動機では「旅客と貨物の両方で航空を支える仕事がしたい」と言える。課題指摘では「株式数を減らす方針と、株を渡して買収した動きをどう両立させるのか」と聞ける。
1-3. 足元の好調と、ROEが下がった理由
2026年3月期の売上は2兆5,392億円で、前期より12.3%増えた。営業利益は2,174億円で、10.6%の増加だ。
財務も急に厚くなった。自己資本比率は31.2%から37.7%に上がった。自己資本比率とは、返さなくてよいお金が総資産の何割かを示す数字である。
背景には、社債型種類株式の発行がある。普通株と社債の中間にあたる資金調達で、既存株主の持ち分を薄めにくい。これで自己資本が2,874億円増えた。
一方、ROEは前期の14.1%から12.9%に下がった。自己資本が増えて分母が膨らんだためだ。稼ぐ力が落ちたのではなく、投資に備えて資本を積んだ結果と読める。それでも、目標の12%以上は保っている。
課題指摘では「ROEの低下は、資本を積んだ結果だと理解しています」と話せる。逆質問では「積んだ資本を、今後どう投資と還元に振り分けますか」と聞ける。
1-4. 来期は減益予想:燃油費と、増え続ける費用
2027年3月期の営業利益は1,500億円で、31.0%減の予想だ。純利益は960億円で、43.2%減る。NCAが通期で入るのに、利益は減る形だ。
主因は、中東情勢に伴う燃油費の高騰である。ほかに、為替の変動と、人件費や空港使用料の上昇も挙がっている。
会社の見立ては保守的で、厳しい前提を織り込んだ予想と読める。ただし、燃油費は構造的に業績を揺らす要因だ。パイロットや整備士の人件費が上がり続けることも、長期の課題である。
競合も多い。国内ではJALやLCC(格安航空会社)、国際線では海外の大手航空会社と競う。
課題指摘では「燃油費に左右されにくい収益源を、貨物や提携で増やす点に関われると考えます」と言える。逆質問では「減益局面でも、人財投資をどう続けますか」と聞ける。
第2章 業界比較——JALとの2強体制の中の独自ポジション
2-1. JALとの違い:規模のANA、収益性のJAL
ANAの売上2兆5,392億円は、JALの2兆125億円を約2割上回る。一方で、利益率はJALにやや劣る。
向かう先も違う。ANAはNCAの取得で、貨物を一気に強くした。JALはZIPAIRなどのLCC事業を育てている。
どちらが優れているかではなく、攻める方向が違うのだと整理できる。
志望動機では「規模と貨物で攻めるANAの方向に魅力を感じた」と語れる。「JALではなくANA」と聞かれたときの根拠にもなる。
2-2. 「なぜANAなのか」を語る3つの軸
ANAの強みは3つにまとめられる。
サービス品質だ。英国SKYTRAX社の最高位「5スター」を13年連続で取得している。
旅客と貨物の両方を持つ、コンビネーションキャリアという事業モデルだ。
世界の航空会社が加盟するスターアライアンスの中核メンバーで、シンガポール航空との共同事業も進んでいる。
稲盛経営の遺産で収益性を取りにいく姿勢ならJAL、中長距離LCCならZIPAIRという住み分けになる。
志望動機では、3つのうち自分の経験に近い軸を1つ選び、具体的に語る。逆質問では「貨物と旅客の連携は、現場でどう進んでいますか」と聞ける。
ANAの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(インバウンド需要の継続/国際線ビジネス需要の回復/グローバル貨物市場の構造変化/脱炭素とSAF(持続可能な航空燃料)/地政学・空路変更)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上2兆5,392億円でJALを約2割上回りながら、営業利益率8.6%はJAL(10.8%)に届かない。自己資本比率は31.2%→37.7%へ急回復し、来期は営業利益△31.0%の減益予想。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——インバウンド需要の継続/国際線ビジネス需要の回復/グローバル貨物市場の構造変化/脱炭素とSAF(持続可能な航空燃料)/地政学・空路変更
- 第3.5章 面接前に押さえるANA最新ニュース10本——NCA(日本貨物航空)全株式取得・第1回社債型種類株式・シンガポール航空とのJV・SKYTRAX 5スター13年連続まで、全10本に面接活用ポイント付き
- 第4章 内定者の正体——年間500〜1,000名規模の採用区分と、「飛行機が好き」で落ちる理由、業務企画職のES回答テンプレと逆質問レベル1〜3
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年間給与約750万円の中身と、業務企画職/客室乗務職/自社養成パイロット(機長1,500〜2,500万円)の年収レンジ、セカンドキャリア
- 第6章 働く環境の現実——連結約4.4万人・平均年齢約40歳の組織像、健康経営銘柄4年連続とCDP「Aリスト」4年連続、不規則勤務の実態と社員割引航空券まで含む福利厚生
- 第7章 面接攻略——NCA連結効果の分解、△31%減益予想、社債型種類株式のコール判断まで踏み込んだ回答例と逆質問
- 第8章 やましゃんの総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生