TBS(9401)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、TBSを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上4%の不動産が利益3割」です。
有報の数字(第99期)
- 売上高
- 4,248億円
- 純利益
- 522億円
- ROE
- 5.1%
- 従業員数(連結)
- 8,518人
- 従業員数(単体)
- 269人
- 平均年間給与(単体)
- 1,328万円
- 平均年齢
- 45.6歳
- 平均勤続年数
- 14.0年
出典:TBSの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
TBSホールディングスは、2期連続の最高益を出しながら、稼いだ利益を資本の大きさに活かしきれていない会社だ。
知っておきたいことは3つある。
2026年3月期の売上高は4,248億円(前期比+4.5%)、営業利益は247億円(同+27.1%)だった。広告収入と配信広告(TVerなど)が伸びた。
売上の4%弱しかない不動産事業が、営業利益の3割近くを稼いでいる。放送が揺れたときの支えになっている。
自己資本比率は69.3%と高い。一方、資本をどれだけ効率よく使えているかを示すROEは5.1%にとどまる。会社は2026年5月に、この点を直す方針を打ち出した。
この記事では、TBSの強みと宿題を数字で確かめ、面接で自分の言葉で語れる状態にする。
第1章 TBSホールディングスは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で掲げた3つの指標
有価証券報告書(上場企業が毎年出す事業報告書)には、会社が重視する指標が3つ書かれている。売上高、営業利益、そしてROICだ。
ROICとは、事業に投じたお金がどれだけ利益を生んだかを見る指標である。テレビ局がこれを掲げているのは珍しい。
直近期の実績は、営業利益が247億円(+27.1%)、ROICが3.8%だった。利益は大きく伸びたが、投じた資本に対する利益はまだ小さい。会社も「自己資本と負債調達のバランスを見直し、資本効率の改善に取り組む」と書いている。
志望動機で「ROICを経営指標に置くテレビ局」という切り口を示せる。逆質問では、ROICの目標水準と達成の時期を聞ける。
1-2. 海外への出資と、広告代理店への依存
直近期は海外への出資が続いた。2026年1月に米国の映画製作会社Legend Picturesへ出資した。4月には韓国のCJ ENMとも提携した。どちらも買収ではなく、出資と資本業務提携だ。
国内のテレビ広告だけでは成長しにくい。そこで海外の制作・配信会社と組む、という方向が読み取れる。
一方で、売上の取引先は偏っている。電通が24.0%、博報堂DYメディアパートナーズが13%台で、2社で4割近い。広告代理店の交渉力が強ければ、価格の主導権は代理店側に傾く。
志望動機では海外戦略への関心を語れる。課題指摘では代理店依存を挙げ、自分ならどう関わるかを続けられる。
1-3. 「小さいのに稼ぐ」不動産事業
TBSの事業は3つある。メディア・コンテンツ、ライフスタイル(雑貨小売・化粧品・学習塾など)、不動産・その他だ。
注目は不動産・その他事業である。売上は168億円で、連結の3.97%しかない。それなのに営業利益は72億円で、連結の29.4%を占める。赤坂サカスを中心とした土地・建物の賃貸が中心だ。
一方、ライフスタイル事業は増収だったが、営業利益は前期比18.2%減だった。学習塾・幼児教育の「やる気スイッチグループ」で人件費が増えたことが響いた。
「放送と不動産の両輪」という理解を志望動機に使える。ライフスタイル事業の減益は、課題指摘の材料になる。
1-4. 最高益なのにROEは5.1%
ROEとは、株主から預かった資本で、どれだけ利益を出したかを示す率だ。TBSの直近期は5.1%で、前期の4.2%からは改善した。
ただし水準は高くない。自己資本が1兆円を超えるほど積み上がっているためだ。その大きな原因が、持ち合い株式(政策保有株式)の含み益である。
会社は2026年5月14日に「中期経営計画2026アップデート」を発表した。内容は次の3点だ。
政策保有株式8銘柄の売却
自己株式の取得(上限360億円)
自己株式450万株の消却
眠っていた資産を減らし、資本効率と株主還元を同時に進める狙いである。
逆質問で「ROE改善の目標はいくらですか」と聞ける。5.1%の理由まで語れれば、番組の感想だけの学生と差がつく。
1-5. 来期の予想とリスク
2027年3月期の会社予想は、売上高4,400億円、営業利益260億円だ。ただし純利益は485億円で、7.1%の減益を見込む。今期は投資有価証券の売却益488億円という一度きりの利益があったためだ。本業の伸びと、この一時的な利益は分けて読む必要がある。
主なリスクは次の3つだ。
地上波広告がネット広告に押される構造
株価に左右される含み益への依存
三菱地所と進める赤坂の再開発(2028年完成予定)の投資負担
「純利益の減益は本業の悪化ではない」と説明できると、数字を読めている証拠になる。再開発は、28卒が入社する時期と重なる話題として逆質問にできる。
第2章 業界比較——民放キー局4局のポジショニング
3局の増益とフジ・メディアHDの赤字
2026年3月期は、キー局4社で明暗が分かれた。
日本テレビHD:営業利益693億円(+26.2%)
テレビ朝日HD:営業利益261億円(+32.9%)
TBSHD:営業利益247億円(+27.1%)
フジ・メディアHD:87億円の営業赤字(前期は182億円の黒字)
フジの赤字は、2025年1月に発覚した人権問題への対応をめぐるスポンサー離れが背景にある。
ただし、フジも不動産などの都市開発・観光事業で251億円の黒字を出し、赤字幅を抑えた。放送が傷んだとき不動産が支える構図は、TBSと同じだ。
業界研究として「放送リスクを不動産が和らげる」という共通点を語れる。他局の不祥事を挙げるときは、批判ではなく事実の整理にとどめたい。
利益率で見るTBSの立ち位置
営業利益率(売上のうち本業の利益になる割合)で比べると、TBSは5.8%だ。日本テレビHDの約14.3%、テレビ朝日HDの7.7%より低い。
TBSも、配信広告や映画などの事業部門で収益の改善を進めている。それでも放送収入への依存度や費用構造の違いから、4局の中では利益率が低い位置にある。
課題指摘として「利益率の差を縮めるために何が必要か」を問える。逆質問では、日本テレビとの差をどう見ているかを聞ける。
TBSの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(### 構造課題1:地上波広告費の長期的な地盤沈下/### 構造課題2:不動産事業への収益依存という「もろ刃の剣」/### 構造課題3:コンプライアンス・ガバナンスがそのまま業績に直結する業界構造/### 構造課題4:マスメディア集中排除原則という規制の壁と再編論)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。営業利益27.1%増で2期連続最高益、それでも売上の4%にすぎない不動産事業が利益の3割近くを稼ぐという非対称な収益構造——。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 構造課題1:地上波広告費の長期的な地盤沈下/### 構造課題2:不動産事業への収益依存という「もろ刃の剣」/### 構造課題3:コンプライアンス・ガバナンスがそのまま業績に直結する業界構造/### 構造課題4:マスメディア集中排除原則という規制の壁と再編論
- 第3.5章 面接前に押さえるTBSホールディングスの最新ニュース8本——中計アップデート・自己株買いと消却・WACUL買収・赤坂再開発まで
- 第4章 内定者の正体——事業会社別採用の仕組み、就職難易度、ES「なぜTBSか」の組み立て
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収の中身、事業会社別のキャリアパス、市場価値
- 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、離職率、福利厚生
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ志望動機と逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——5軸スコアリングと向き不向き