テレビ朝日HD(9409)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、テレビ朝日HDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「年収1,500万円と454万円が、同じグループにある」です。
有報の数字(第86期)
- 売上高
- 3,395億円
- 純利益
- 297億円
- ROE
- 6.5%
- 従業員数(連結)
- 5,622人
- 従業員数(単体)
- 84人
出典:テレビ朝日HDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
テレビ朝日ホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、テレビ朝日グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはテレビ朝日ホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社テレビ朝日ホールディングス 有価証券報告書 第86期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
結論から言う。テレビ朝日HDは、放送で稼ぐ力を土台に、2029年度までの数字目標と資本の使い方の転換に賭けている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
会社は2029年度までの数字目標を掲げ、ROE(株主の資本でどれだけ利益を出したかの指標)まで目標に入れた。
事業別に見ると、インターネット事業の利益率が放送事業を上回っている。ABEMAなど、他社との共同事業が収益を取る段階に入った。
同じグループでも、会社によって平均年収が大きく違う。どの会社で働くかで条件が変わる。
この記事では、会社が何に賭けているか、どこで稼いでいるか、決算のどこに注意すべきかを、面接で語れる形で確かめる。
第1章 テレビ朝日ホールディングスは何に賭けているのか
1-1. 目標は2029年度の営業利益330億円——ROEまで掲げた
経営の基本方針は、放送の公共性・公益性を自覚し、魅力ある情報やコンテンツで社会に貢献することだ。ここは他の放送局と似ている。違いは、その先に置かれた数字にある。
新経営計画は、2029年度までに営業利益330億円を目指すと書く。営業利益は、本業で稼いだ利益のことだ。当期の実績は262億円で、ここから積み上げる計画になる。
会社は資本効率の目標も掲げた。ROEは、株主から預かった資本でどれだけ利益を出したかを示す。目標は7%台で、2030年代早期に8%とする。当期のROEは6.51%で、目標にはまだ届かない。
自己資本比率は80.1%と高い。これは総資産のうち、返済不要の資本が占める割合だ。資本が厚いほど、ROEは上がりにくい。
志望動機では、「2029年度の営業利益330億円」という会社自身の目標を根拠にできる。逆質問では、ROEの現状と目標の差をどう埋めるのかを聞ける。
1-2. 買収の原資は持ち合い株の売却だ
有報は、賭けの金額を2か所で明記している。
1つ目は、M&A(企業の買収)に使う「戦略投資枠1,000億円」だ。
2つ目は、政策保有株式の縮減だ。政策保有株式とは、取引先などと持ち合っている株をいう。これを減らして得た資金を、4年間で1,000億円の成長投資に充てる。放送設備への投資や、配当・自己株式の取得(株主への還元)にも回す。
つまり、持っている資産を売って、買収と株主還元の資金に変える方針だ。1-1で見たROEの改善と、同じ方向を向いている。
事業の側にも実行の跡がある。ABEMAはサイバーエージェントとの共同事業で、週に1回以上使う人が2,200万人前後いる。TELASAはKDDIとの共同事業で、会員は233万人を超える。どちらも自前ではなく、他社と組んで育てる形だ。
AI分野では「AIクリエイティブスタジオ」を新設した。効率化で生んだ経営資源は、クリエイティブ領域に集中的に投下すると書く。
志望動機では、「他社と組んで事業を育てる会社」という点を根拠にできる。逆質問では、持ち合い株の縮減と成長投資がどこまで進んだかを聞ける。
1-3. ABEMAは「収益獲得フェーズ」に入った
有報は、ABEMAが「収益獲得フェーズに入っています」と書く。有料のプレミアム会員が増えているという。投資が先行していた事業が、回収する段階に入ったと会社が認めた形だ。
数字にも差が出ている。利益率は、売上のうち利益になる割合だ。インターネット事業は14.71%で、テレビ放送事業の約2倍にあたる。
人員は対照的だ。インターネット事業が444名、テレビ放送事業が4,268名である。
ここから、2つの流れが同時に進んでいると読める。テレビ放送は最大の事業で、AIによる効率化で資源を出す側だ。インターネットは少人数で、資源を投下される側だ。
28卒が入社するのは2028年度だ。2029年度の目標の1年前にあたり、計画が達成に向かうかが見えてくる時期になる。
志望動機では、入社後に効率化を進める側と、投下を受ける側のどちらで働きたいかを決めて語る。逆質問では、ABEMAの収益化がどこまで進んでいるかを聞ける。
1-4. 同じグループでも、年収は会社で大きく違う
有報は、従業員数が最も多い会社と、2番目に多い会社の状況を開示している。
㈱テレビ朝日:1,234名、平均年齢44.5歳、平均勤続19.1年、平均年間給与は約1,500万円
㈱トラストネットワーク:985名、平均年齢41.4歳、平均勤続15.9年、平均年間給与は約455万円
人数はほぼ同じなのに、平均年間給与は3.3倍違う。
連結の従業員は5,622名だ。テレビ放送事業の4,268名のうち、㈱テレビ朝日は1,234名で、残りはグループ会社にいる。放送局本体と、技術・設備・管理を支える会社では、給与体系が違うと読める。
持株会社(グループ全体を管理する会社)の従業員は84名だ。全員が㈱テレビ朝日からの兼務出向者で、専任の社員はいない。労働組合については、有報は「特筆すべき事項はありません」とだけ記している。
逆質問では、希望する職種がどの会社の採用になるのかを確認できる。志望動機でも、本体とグループ会社のどちらで働きたいかを明確にしておく。
第2章 放送業の収益構造
2-1. 利益の柱は放送、成長はネットと「連結の外」
事業は4つに分かれる。テレビ放送事業は、売上も利益も約7割を占める最大の柱だ。インターネット事業は、売上の約1割で利益の約2割を稼ぐ。
なぜ差が出るのか。放送は電波送信設備やスタジオなど、大きな設備を必要とする。人手も4,268名かかる。インターネット事業は444名で、設備の負担も小さい。この点は、数字からの読みである。
もう一つ見落としやすい点がある。ABEMAは連結子会社ではなく、持分法で損益に入る。持分法とは、出資先の利益のうち、持ち分に応じた額を取り込む会計だ。
この持分法による投資利益は、経常利益の約23%に当たる。経常利益は、営業利益に配当や出資先の利益を加えたものだ。連結の外にある事業が、利益の4分の1近くを支えている。
課題指摘として、利益が放送に偏っている点を挙げられる。逆質問では、持分法で取り込む事業をグループ内でどう位置づけるかを聞ける。
2-2. 売上は微増でも、営業利益は大きく伸びた
当期は、売上高が4.8%増えた。一方、売上原価の増加は1.1%にとどまった。放送局の売上原価は、番組制作費が中心だ。
販売費及び一般管理費(本業にかかる経費)は、売上より速く増えた。それでも、売上から原価を引いた利益がそれを上回って伸び、営業利益は32.9%増えた。
背景には、コンテンツの多重活用があると読める。同じ番組を地上波、配信、海外などに展開すれば、1つの制作費で複数の収益を得られる。
有報も、経営課題を「放送事業の競争力を強化しながら、“コンテンツ・IP”を核とした収益基盤の多様化を推進すること」と書く。IPは、番組などの知的財産のことだ。
前経営計画では、2024年度と2025年度に年間・年度の個人全体視聴率で3冠を獲得した。業績も過去最高水準になったと書く。
一方で、特別損失(一時的な費用)は前期から大きく増えた。回収できないおそれのある債権に備える貸倒引当金繰入額と、システム開発計画の変更に伴う損失が、どちらも前期ゼロから新たに入った。
志望動機では、視聴率3冠と過去最高水準の業績を根拠にできる。課題指摘では、好決算の裏で特別損失が増えた点を取り上げられる。
テレビ朝日HDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(PBR1倍割れ——放送業が抱える構造的な宿題/テレビ放送事業4,268名の利益率7.54%/特別損失が6.13倍——貸倒引当金17億円/5つのキーストラテジー——そして翌期、セグメントが変わる)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。インターネット事業は444名で利益率14.71%と、テレビ放送事業4,268名の7.54%の約2倍——1人あたりでは2.7倍の効率で稼いでいます。㈱テレビ朝日の平均年収1,500万2,000円と㈱トラストネットワークの454万8,000円が同じグループに併存し、持株会社の全社費用は子会社からの収入でほぼ相殺されている。そしてROEは6.51%と5期で最高ですが、3分解すると動いたのは純利益率だけ——中計の7%台に届かせるには、政策保有株式の縮減と自己株式の取得という分母側の一手が要る。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 放送業の構造的課題——PBR1倍割れ——放送業が抱える構造的な宿題/テレビ放送事業4,268名の利益率7.54%/特別損失が6.13倍——貸倒引当金17億円/5つのキーストラテジー——そして翌期、セグメントが変わる
- 第3.5章 面接前に押さえるテレビ朝日の最新ニュース10本——年収3.3倍格差・ネット事業2.7倍・経営計画2026-2029まで
- 第4章 内定者の正体——「テレビが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収1,500万円と454万円の読み方と、5,622名でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続19.1年、兼務出向者だけの持株会社、組合の記載がない意味
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生