NTT(9432)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、NTTを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「1年で総資産16.7兆円増」です。
有報の数字(第41期)
- 売上高
- 14兆4,091億円
- 純利益
- 1兆370億円
- ROE
- 10.4%
- 従業員数(連結)
- 344,196人
- 従業員数(単体)
- 2,606人
- 平均年間給与(単体)
- 1,056万円
- 平均年齢
- 41.4歳
- 平均勤続年数
- 15.6年
出典:NTTの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
※本記事の決算数字は、NTT株式会社が2026年6月に提出した第41期(2025年4月1日〜2026年3月31日)有価証券報告書に基づきます(2026年7月執筆)。
この記事は、最低3回は読み返してほしい。
自ずと「なぜNTTがこの決算になったのか」を自分の言葉で説明できるようになる。
そこまで来れば、面接で財務の話になったとき、面接官より深く踏み込める。
NTTを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、NTTに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。役員を目指すなら、自社がどの数字で評価されているかを知らないままでは話にならない。
結論:NTTは「安定した通信会社」の姿のまま、1年で銀行とグループ会社に大きく賭けた。
知っておきたいことは3つある。
・総資産が30兆円台から46兆円台へ増えた。住信SBIネット銀行を連結したためで、経営の悪化ではない。
・自己資本比率(総資産のうち返さなくてよいお金の割合)が34.0%から20.8%へ下がった。理由は同じである。
・会社の目標年度は2030年度。28卒が入社する2028年4月は、その途中にあたる。
この記事では、NTTが何に賭けているか、入社先がどこになるか、同業と何が違うかを確かめる。
第1章 NTTは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で掲げた3つの賭け
NTTは2026年5月に中期経営戦略を作り直した。名前は「IOWN」から「AIOWN」へ変わった。IOWNは光を使った次世代の通信基盤で、そこにAIが加わった形だ。目標年は2027年から2030年へ延びた。
2030年度の目標はEBITDA 4兆円である。EBITDAは営業利益に減価償却費を足したもので、設備投資の重い通信業の稼ぐ力を測る。もう一つの目標がROIC(金融事業除き)5.5%だ。ROICは投じたお金に対する利益の割合で、銀行の分は外して測る。
賭けは3つある。1つ目はAIとデータセンター。2つ目は金融で、2026年7月に「NTTドコモ・フィナンシャルグループ」が事業を始める予定だ。3つ目は通信基盤のAIOWN転換である。
データセンターは「第三者資本を活用しつつ」進める。巨額の投資が要るため、自社のお金だけでは賄わないという意味だ。
志望動機では、3つの賭けのどこに関わりたいかを選ぶ根拠になる。逆質問では「2030年度の目標に向けて、私の配属領域は何を担いますか」と聞ける。
1-2. 総資産が16.7兆円増えた理由は、銀行の連結
当期で最大の出来事は、住信SBIネット銀行の連結子会社化だ。総資産は約16.7兆円増えた。銀行を連結すると、預金が負債に、貸出金が資産に載る。そのため貸借対照表(資産と負債の一覧表)が一気に膨らむ。
自己資本比率は、過去4年は33〜35%で安定していた。それが1年で20.8%になったのは、銀行という業態を取り込んだからだ。事業が傷んだわけではない。実際に売上収益は5.1%増えている。
だから会社の目標も「金融事業除き」で測る。銀行を含めると、本業の実力が見えなくなるためだ。
「自己資本比率が下がって大丈夫か」と聞かれたら、「銀行の連結によるもので、事業リスクが増したわけではない」と答えられる。課題指摘では、数字の動きの理由まで読んでいることが伝わる。
1-3. もう一つの買い物:子会社の株式を2.4兆円で買い取った
当期は資金を集めた年でもある。借入で約3.7兆円を調達し、約2.4兆円を子会社の少数株主から株式を買い取るために使った。これはNTTデータグループの完全子会社化にあたる支出だ。
データセンターでは第三者資本を使い、子会社の持分は借入で買い取った。お金の使い方に濃淡がある。
逆質問で「データセンターは外部資本、グループ会社の持分は自社で持つ。その線引きはどう決めていますか」と聞ける。
1-4. 競争は料金から「経済圏」へ移った
有報は環境の厳しさを率直に書いている。光回線の純増は、テレワーク需要の一巡で鈍化した。モバイルの顧客獲得競争は激化している。競争は金融やエンタメを含む経済圏全体へ広がった。
生成AIの普及で通信量は増え、ネットワーク投資の負担も増す。通信料だけでは戦えないから、金融を取り込む。これが金融グループを作る理由だ。
志望動機では、会社自身が通信だけでは戦えないと認めている点を出発点にできる。そのうえで自分が経済圏のどこに貢献するかを語れる。
1-5. 働く側から見るNTT:34万人の会社、本体は2,606人
連結従業員数は344,196人。日本企業で最大級である。最大のセグメントは、NTTドコモを含む総合ICT事業ではない。NTTデータグループ等のグローバル・ソリューション事業で、201,140人(58.4%)を占める。
持株会社のNTT株式会社は2,606人しかいない。新卒が入るのは、ドコモやNTTデータなどの事業会社だ。有報には従業員エンゲージメント調査の課題として、「キャリアに対する不安」も挙がっている。
28卒が入社する2028年4月には、ドコモ・フィナンシャルグループがすでに約2年動いている。入社2年目の2030年度に、EBITDA 4兆円の答えが出る。
志望動機では、目標年度の途中に入る立場として貢献を語れる。逆質問では「キャリアに対する不安に、どんな施策を打っていますか」と聞ける。
第2章 業界比較——KDDI・ソフトバンクとの違い
数値はすべて2026年3月期の各社有価証券報告書(第41期・第42期・第40期)から取っている。
2-1. 組織の大きさと作り方が違う
連結従業員数は、NTTが344,196人、KDDIが73,198人、ソフトバンクが58,432人だ。NTTはKDDIの4.7倍、ソフトバンクの5.9倍にあたる。
提出会社(単体)の人数はNTTが2,606人、KDDIが9,891人、ソフトバンクが19,150人である。NTTは持株会社なので、実際にはグループ会社に入る。ソフトバンクは本体の比重が高い。
「なぜNTTグループのこの会社か」を問われたとき、組織の作りの違いを踏まえて志望先を選んだ理由を語れる。
2-2. 待遇の比較は「どの法人か」に注意
平均年間給与は、NTTが1,056万円、KDDIが1,050万円台でほぼ並ぶ。ソフトバンクは871万円だ。ただしNTTの数字は持株会社2,606人の平均で、グループ各社から選抜された層が中心になる。ソフトバンクは19,150人の平均で、現場社員を広く含む。単純比較はできない。
NTTの平均勤続年数は15.6年、平均年齢は41.4歳である。数字を使うときは、「NTT株式会社(持株会社)の有報では」と、どの法人かを必ず添える。
年収の話をするとき、法人の違いを自分から添えると、数字を正しく読んでいると伝わる。
2-3. 何で稼ぐかの違い
NTTは総合ICT事業とグローバル・ソリューション事業の二本柱に、地域通信という国内インフラを持つ。銀行の連結で金融まで取り込んだ。事業の幅が最も広い。
KDDIは通信を軸に、金融、エネルギー、DXへ広げている。ローソンを持分法から連結対象に加えて、店舗のチャネルも得た。ソフトバンクは、PayPayを中心とした決済とAI領域への投資が特徴だ。3社とも通信料収入だけでは伸びないという認識は同じで、違いは手段にある。
「なぜNTTなのか」は事業の幅から組み立てられる。「通信インフラ、グローバルIT、金融までを1社で持ち、総資産46.7兆円という規模で動かせるのはNTTだけです」と言えれば、比較した跡が見える。
NTTの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(国内通信料収入は伸びない/データセンターとAIという新しい戦場/巨額投資が財務に与える負荷/グループが大きすぎるという課題)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上14兆4,091億円で+5.1%、純利益1兆370億円で+3.7%。しかし総資産は16.7兆円増えて46.7兆円、自己資本比率は34.0%から20.8%へ。ここから先は、この数字を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 通信業界の構造的課題——国内通信料収入は伸びない/データセンターとAIという新しい戦場/巨額投資が財務に与える負荷/グループが大きすぎるという課題
- 第3.5章 面接前に押さえるNTT最新ニュース10本——住信SBIネット銀行の連結、2.4兆円の子会社持分取得、営業CF8,788億円減まで
- 第4章 内定者の正体——「安定した通信インフラ企業だから」で落ちる理由と受ける会社の選び方、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収1,056万円の正しい読み方、セグメント別のキャリア、市場価値
- 第6章 働く環境の現実——勤続15.6年の意味、34万人組織で働くということ
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問4本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生