KDDI(9433)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、KDDIを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「自己資本比率が26.6%へ」です。

有報の数字(第42期)

売上高
6兆719億円
純利益
7,071億円
ROE
14.0%
従業員数(連結)
73,198人
従業員数(単体)
9,891人
平均年間給与(単体)
1,051万円
平均年齢
42.3歳
平均勤続年数
16.4年

出典:KDDIの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

KDDIを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、KDDIに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはKDDIの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、KDDI株式会社 有価証券報告書 第42期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

KDDIは、売上がほとんど伸びないまま資産だけが急に膨らんでおり、もはや「通信会社」だけでは説明できない会社になっている。

知っておきたいことは3つある。

会社はAIが当たり前になる社会に賭けている。2026年5月に中期経営戦略「Power-to-Connect 2028」を発表した。対象は2026年度から2028年度だ。

売上収益6兆719億円は5年で11%増にとどまる。だが総資産は19兆634億円で72%増えた。利益は伸びている。

子会社ビッグローブで架空循環取引が確認され、会社は過年度の有価証券報告書を訂正した。面接で語るなら、成長と課題の両方を知っておきたい。

この記事では、会社が何に賭け、数字がどう変わり、どこに課題があるかを確かめる。

第1章 KDDIは何に賭けているのか

1-1. 「AIに壊されにくい価値」に賭ける

有価証券報告書は、会社が投資家向けに出す年次の公式報告書だ。KDDIはここで、AIが広く普及する「AI前提社会」を前提にしている。AI自体は似通っていくので、代替されにくい価値が差別化になると考えている。

その答えとして、3つの「Fusion(融合)」を掲げた。

Real-Tech Fusion:auショップ、Ponta、ローソンなどのリアルな接点に、テクノロジーを掛け合わせる。

Infrastructure Fusion:通信網とAIの計算基盤を一体で整える「デジタルベルト構想」。陸・海・空を網羅する全国低遅延網を目指す。

HR Fusion:既存の技術者や販売人材が新技術を学び、AIも扱える「両利きの人財」になる。

提供する価値は、企業向けの「AI労働力」と個人向けの「AI生活力」の2つに整理されている。

面接での使い方

志望動機で「リアルな接点とAIを掛け合わせる戦略に共感した」と根拠つきで語れる。入社後は通信の技術者でもAIを扱うことが期待されている。

1-2. 目標と報酬を戦略に結びつけた

事業の区分は3つに再定義された。中核の「テレコムコア」が稼いだ利益を、成長領域の「パーソナルグロース」「ビジネスグロース」へ再投資する構図だ。

会社が自分で決めた目標は次の3つである。

グロース領域で2桁成長を実現し、調整後営業利益(本業のもうけ)の年平均成長率5%を目指す。

調整後当期利益に対する配当性向(利益のうち配当に回す割合)は40%超とする。

ROE(株主から預かった資金でどれだけ稼いだかを示す率)と、ROICスプレッド(投じた資金のコストを上回って稼げているかの差)を、役員報酬と連動させる。

28卒の入社は2028年4月で、この中期経営戦略の最終年度の初日にあたる。その2年後の2030年には「KDDI VISION 2030」がある。

面接での使い方

逆質問にできる。「最終年度に、グロース領域の2桁成長はどこまで見えていますか」と聞けば、目標と現状の差を問える。

1-3. 売上は横ばいなのに、資産だけが膨らんだ

5年前と比べる。売上収益は5兆4,467億円から6兆719億円へ、11%増にとどまる。総資産は11兆844億円から19兆634億円へ、72%増えた。

自己資本比率(総資産のうち返済不要の自己資金の割合)は45.0%から26.6%へ、18.4ポイント下がった。

一方で利益は伸びている。当期利益は7,071億円で前期比7.9%増、5期で最高だ。ROEは14.0%で、これも5期で最高である。

資産が約8兆円増えた理由は、通信設備だけでは説明しにくい。注目は金融事業(auじぶん銀行、au PAYなど)だ。銀行は預金を貸し出しに回し、どちらも資産と負債に載る。取引が増えるほど資産は膨らむが、収益は貸出金利と預金金利の差なので売上は同じ割合では増えない。

金融事業を持つ会社は、自己資本比率が低くなりやすい。26.6%を直ちに危険とは言えない。ただ、5年での低下は小さくなく、財務の余裕は減っている。

面接での使い方

課題指摘に使える。「ROEの改善には資産増の影響も含まれる。だから成長の質を見たい」と述べれば、数字の裏を読む学生として話せる。

1-4. 子会社の架空循環取引という課題

当期には問題も起きた。連結子会社ビッグローブと、その子会社ジー・プランの広告代理事業で、実体のない架空循環取引が行われていたと、外部の弁護士・公認会計士による特別調査委員会が認めた。

会社は過年度の有価証券報告書を訂正し、2026年6月2日に東京証券取引所へ改善報告書を提出した。再発防止策として、グループ会社の管理・モニタリング体制の充実と、グループ内部監査機能の高度化を挙げている。

面接での使い方

課題指摘と逆質問に使える。「信頼回復の取り組みで、若手が関われる仕事はありますか」と聞ける。

1-5. 応募するのは連結7万人のうち単体9,891人の枠

従業員数は連結で73,198人だ。このうちKDDI株式会社(提出会社)は9,891人で、連結の13.5%にあたる。

残りは、通信の販売代理、金融、法人ソリューションなどのグループ各社に所属している。auショップやローソンの店員は、この数字に含まれない。

面接での使い方

志望動機で「グループ各社ではなく、KDDI本体で働きたい理由」を語る準備ができる。

第2章 通信業界の収益構造

2-1. 「通信」から「通信+金融」へ

日本の人口は減り、スマートフォンの普及もほぼ一巡した。契約数を大きく伸ばすのは難しい。

そこで通信各社は、通信で獲得した顧客基盤を使って他の事業に広げる。KDDIの場合は、決済・銀行・証券・保険といった金融領域だ。これが「経済圏」と呼ばれる戦略である。

売上は5年で11%しか増えていないのに、総資産が72%増えた。この差が、事業構造の変化を示している。

面接での使い方

志望動機で「なぜ通信の会社に、金融や生活サービスまで含めて魅力を感じるのか」を語る土台になる。

2-2. 人員の半数超は法人向け

セグメント別に見ると、法人向けのビジネスが39,707人で、連結の54.2%を占める。個人向けのパーソナルは29,753人で、40.6%だ。

「KDDI=auショップ=個人向け」という印象は、人員配置の実態とずれている。法人向けには、企業のネットワーク構築、クラウド、DX支援など、SIer(システム開発会社)に近い領域も含まれる。TISや日鉄ソリューションズと競合する部分もある。

面接での使い方

志望動機で「個人向けと法人向けのどちらで働きたいか」を具体的に言える。仕事の性格が違うため、理由を添えたい。

2-3. 安定した収益と、業界のリスク

通信は月額課金のストック型で、解約率も低い。売上収益は5期のあいだ一度も減っていない。この安定が、金融など新しい柱への投資を可能にしている。

一方で、業界には固有のリスクがある。

料金の値下げ圧力:売上に直接響く。

設備投資の負担:通信規格が変わるたびに、全国の基地局を更新する必要がある。

成長の限界:契約数の大幅な伸びは見込みにくい。

金融事業のリスク:信用リスクや市場リスクを負う。自己資本比率の低下は、この変化を映している。

面接での使い方

課題指摘と逆質問に使える。「値下げ圧力が強まる中、金融など新領域でどう収益を補うのか」と問える。

KDDIの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(通信料金は、下がることはあっても上がりにくい/資産が増えるということは、リスクも増えるということ/設備投資は、止められない/人員配置が示す、事業の重心)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上4.1%増・当期利益7.9%増で5期最高、ROE14.0%も5期最高水準。一方で総資産は5年で1.72倍、自己資本比率は45%から26.6%へ低下し、人員の54%は法人向け。通信会社から「通信+金融」への変質が、この数字の並びを説明する。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 通信業界の構造的課題——通信料金は、下がることはあっても上がりにくい/資産が増えるということは、リスクも増えるということ/設備投資は、止められない/人員配置が示す、事業の重心
  • 第3.5章 面接前に押さえるKDDIの最新ニュース10本——総資産5年1.72倍、自己資本比率26.6%、ROE14.0%、法人54%の人員配置まで
  • 第4章 内定者の正体——「通信インフラを支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,051万939円の読み方と、単体9,891人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続16.4年の読み方、女性役員比率17.6%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. KDDIの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第42期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,051万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. KDDIの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第42期)では、提出会社(単体)が9,891人、連結が73,198人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. KDDIが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。